遅れてきた”ジョーカー”。三重DF黒田響平は多くの感謝を胸に優勝を誓う
[5.29 インターハイ三重県予選準決勝 四日市中央工高 0-2 三重高 鈴鹿]
もしかしたら、この日のピッチにその姿はなかったかもしれない。ただ、苦しい時期を乗り越えてきたからこそ、チームを背負って戦うことの意味は誰よりもよくわかっている。「ホンマに僕は1回落ちる所まで落ちて、それでやるしかないと思って、またAチームに上がらせてもらって、今は試合に出れているので、ホンマにチームのためにやらなあかんと。ピッチ外で見ている子たちの気持ちもわかった上で、プレーしています」。三重高のセンターバックであり、サイドバック。DF黒田響平(3年=サルパFC出身)は周囲への感謝を胸に、全国へと続く道を自分の足で歩んでいる。
その“事件”は1年前に起きた。新しい代になり、Aチームのメンバーに名を連ね、レギュラーポジションも確保。インターハイはなくなったものの、選手権に向けて気持ちも新たにしていた頃のことだ。「校則違反とは知らずに、学校でトランプをやってしまって、『そんなヤツいらんわ』って、1回Cチームまで落ちたんです…」。
「『さあ、頑張るぞ』という時に落ちてしまって、ホンマにショックやったですね」。サッカー自体への情熱を失いかけ、そのまま退部も視野に入っていたタイミングで、ある人から声を掛けられる。佐藤啓介コーチ。周囲からの信頼も厚い熱血コーチだ。
「『ここにおること、どう思う?』って言われて、『悔しいです』って言ったら、『違うやろ。恥ずかしい、やろ。何のために三重高来たんや?』と。2人で話をしてくれて、熱く語ってくれたんです」。黒田の心に佐藤コーチの言葉が響く。改めてサッカーと向き合う覚悟を固め、日々の練習に励むと、再びAチームに返り咲く。「佐藤コーチがいてくれたから、また変わろうという気持ちになれたので、僕は今ここに立っていると思っています」。
徳地俊彦監督への感謝も深い。黒田にとって1年生から今年まで、すべての学年で担任をしているのが“徳地先生”。「アスリートクラスの担任をしてもらっていて、面白くて、みんなから信頼を受けている先生です。ただ、他の部活のヤツらとかは同級生みたいに接してるのを見て、『怒ったら怖いんやぞ』と思ってます(笑) 僕らには無理ですね」と黒田。ただ、この準決勝も指揮官の采配が終盤の追加点を呼び込む。
後半アディショナルタイムの35+2分。チームメイトの負傷もあり、選手交代のタイミングでセンターバックから左サイドバックへとポジションを移していた黒田がサイドを仕掛ける。そのままエリア内へ侵入すると、相手のハンドを誘発してPKを獲得。この流れからチームは2点目を奪い、試合の決着を付ける。「さすが徳地先生の采配だなと思いました。『試合の流れを見て、判断するのはさすがやな』と」。サイドバック起用に応えた結果に、自然と笑顔が浮かぶ。
もう決勝のイメージは万全だ。「どこのポジションになるかわからないですけど、チームに貢献できるように、守備でも攻撃でも、誰よりも走って、誰よりも声を出したいと思っています。絶対全国に出て、徳地先生を胴上げして、チームの目標である全国ベスト4を達成するために頑張るのが今の目標です。メチャメチャ気合入ってます。勝ちたいです」。
遅れてきた三重の“ジョーカー”。どのポジションでも全力を尽くせる黒田の存在が、チームを晴れ舞台へ進ませるためのカギを握っている気がしてならない。
(取材・文 土屋雅史)
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●【特設】高校総体2021
もしかしたら、この日のピッチにその姿はなかったかもしれない。ただ、苦しい時期を乗り越えてきたからこそ、チームを背負って戦うことの意味は誰よりもよくわかっている。「ホンマに僕は1回落ちる所まで落ちて、それでやるしかないと思って、またAチームに上がらせてもらって、今は試合に出れているので、ホンマにチームのためにやらなあかんと。ピッチ外で見ている子たちの気持ちもわかった上で、プレーしています」。三重高のセンターバックであり、サイドバック。DF黒田響平(3年=サルパFC出身)は周囲への感謝を胸に、全国へと続く道を自分の足で歩んでいる。
その“事件”は1年前に起きた。新しい代になり、Aチームのメンバーに名を連ね、レギュラーポジションも確保。インターハイはなくなったものの、選手権に向けて気持ちも新たにしていた頃のことだ。「校則違反とは知らずに、学校でトランプをやってしまって、『そんなヤツいらんわ』って、1回Cチームまで落ちたんです…」。
「『さあ、頑張るぞ』という時に落ちてしまって、ホンマにショックやったですね」。サッカー自体への情熱を失いかけ、そのまま退部も視野に入っていたタイミングで、ある人から声を掛けられる。佐藤啓介コーチ。周囲からの信頼も厚い熱血コーチだ。
「『ここにおること、どう思う?』って言われて、『悔しいです』って言ったら、『違うやろ。恥ずかしい、やろ。何のために三重高来たんや?』と。2人で話をしてくれて、熱く語ってくれたんです」。黒田の心に佐藤コーチの言葉が響く。改めてサッカーと向き合う覚悟を固め、日々の練習に励むと、再びAチームに返り咲く。「佐藤コーチがいてくれたから、また変わろうという気持ちになれたので、僕は今ここに立っていると思っています」。
徳地俊彦監督への感謝も深い。黒田にとって1年生から今年まで、すべての学年で担任をしているのが“徳地先生”。「アスリートクラスの担任をしてもらっていて、面白くて、みんなから信頼を受けている先生です。ただ、他の部活のヤツらとかは同級生みたいに接してるのを見て、『怒ったら怖いんやぞ』と思ってます(笑) 僕らには無理ですね」と黒田。ただ、この準決勝も指揮官の采配が終盤の追加点を呼び込む。
後半アディショナルタイムの35+2分。チームメイトの負傷もあり、選手交代のタイミングでセンターバックから左サイドバックへとポジションを移していた黒田がサイドを仕掛ける。そのままエリア内へ侵入すると、相手のハンドを誘発してPKを獲得。この流れからチームは2点目を奪い、試合の決着を付ける。「さすが徳地先生の采配だなと思いました。『試合の流れを見て、判断するのはさすがやな』と」。サイドバック起用に応えた結果に、自然と笑顔が浮かぶ。
もう決勝のイメージは万全だ。「どこのポジションになるかわからないですけど、チームに貢献できるように、守備でも攻撃でも、誰よりも走って、誰よりも声を出したいと思っています。絶対全国に出て、徳地先生を胴上げして、チームの目標である全国ベスト4を達成するために頑張るのが今の目標です。メチャメチャ気合入ってます。勝ちたいです」。
遅れてきた三重の“ジョーカー”。どのポジションでも全力を尽くせる黒田の存在が、チームを晴れ舞台へ進ませるためのカギを握っている気がしてならない。
(取材・文 土屋雅史)
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