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[MOM3463]海星DF澤田大翔(3年)_”全国のピッチ”の意味を知る男が、得意のヘディングで貴重な先制弾

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先制点を挙げたDF澤田大翔は歓喜の雄叫び

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[5.29 インターハイ三重県予選準決勝 海星高 2-0 四日市工高 鈴鹿]

 あの日、踏みしめた全国のピッチは自分の力で掴んだものではなかった。その悔しさを晴らすには、次の1試合に勝つしかない。「チームとしても自分としても全国で1勝することを掲げている中で、まだそれが海星は成し遂げられていないので、その1勝を目標に頑張りたいです」。海星高のディフェンスラインを任された男。DF澤田大翔(3年=桑名陵成中出身)は、約束のピッチへ立つことを自らに誓っている。

 15番が宙を舞う。決勝進出を懸けた重要な一戦。四日市工高とのゲームは、前半10分にスコアが動く。今年のチームの強みでもあるセットプレーのチャンス。右からFW新田夕晟(3年)が得意の左足で蹴り込んだボールに、ファーから澤田が突っ込んでくる。

「中の選手でニアかファーかを決めていて、それで来たボールを合わせるという感じでしたけど、自分が決めるという想いで打ったシュートだったので、決まって良かったです。もうバッチリでした」。完璧に頭で捉えたボールは、ゴールネットを捕獲する。高々と突き上げた右手の人差し指。「アレは癖ですね。昔から点を決めたら、絶対に1本指を上げて『よっしゃー』みたいな感じです(笑)」。その瞬間を振り返る表情にも笑顔が弾ける。

 守っても相手の攻撃をシャットアウト。「自分は試合ではメチャメチャ喋るので、チームを盛り上げて、雰囲気を悪くしないようにしていける存在になれたらいいなと思っています」。昨年からのレギュラーでもあるGK栗村真尋(3年)とDF伊藤楓人(3年)との呼吸もバッチリ。2-0という結果に攻守で貢献した澤田の働きは、70分間の中でもとりわけ輝いていた。

 忘れられない光景がある。昨年の12月31日。大みそかの浦和駒場スタジアム。選手権の全国大会に挑む海星の選手たちを、澤田はピッチサイドから見つめていた。「自分は担架の所で見ていました。県予選の決勝はギリギリでメンバーに入った感じだったんですけど、全国では入れなかったんです」。

 海星の選手が負傷したタイミングで、主審に担架が呼ばれる。「担架でそのケガ人を運んで行ったんですけど、やっぱりピッチに立った時は『何かが違うな』と思いました」。やけに悔しい想いが湧き上がってくる自分に気付く。“全国のピッチ”は澤田の心の中に、しっかりと刻まれた。

 15番は3年生のレギュラーにしては大きな番号だが、それを背負うのにはもちろん明確な理由がある。「中村藤也くんという、自分の好きな1個上の先輩が付けていた番号で、ここは15番だなと。そういう先輩のためにも、頑張らないといけないという気持ちはあります」。担架の傍らで見つめていた全国の舞台で、80分間フル出場しながら勝利に届かなかった中村の想いも胸に、今度は自分が主役になるための覚悟も整いつつある。

 決勝の舞台。やるべきことはシンプルだ。「自分たちの力をしっかり発揮して、最後まで諦めずに戦い抜きたいと思います」。本当の意味での“全国のピッチ”の重みを知る男。澤田の躍動が、海星の戴冠には絶対に欠かせない。

(取材・文 土屋雅史)
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