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勝負を決めたのは、年々高まっている個の力。神村学園が鹿児島城西の勢いを上回り、“鹿児島4連覇”

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神村学園高はインターハイで日本一に挑戦する

[5.29 インターハイ鹿児島県予選決勝 神村学園高 2-1(延長)鹿児島城西高 OSAKO YUYA stadium]

 年々高まっている個の力で鹿児島“連覇”――。令和3年度全国高校総体(インターハイ)「輝け君の汗と涙 北信越総体2021」サッカー競技(福井)の鹿児島県予選決勝が29日にOSAKO YUYA stadium(南さつま市)で行われ、神村学園高鹿児島城西高が激突。神村学園が延長後半にU-17日本代表候補MF大迫塁(2年)の決めた決勝点によって2-1で勝ち、4大会連続7回目のインターハイ出場を決めた。

 神村学園はインターハイ予選で3連覇、選手権予選は4連覇中。大迫とU-18日本代表候補FW福田師王(2年)の逸材コンビをはじめ、左SB抜水昂太主将(3年)ら年々力のある選手が増えている印象だ。そして、激戦区・鹿児島で頭一つ抜きん出た存在になりつつあるが、この日はライバル・鹿児島城西が自分たちのサッカーを徹底して対抗。0-5で敗れた新人戦後、朝練で週2日の7km走も実施してきたというチームは、その走力を全面に打ち出した戦いを見せる。

 先制したのは神村学園だった。前半8分、CKのこぼれ球に反応した大迫が左足を振り抜く。これがPAのCB比良柊斗(3年)の足元にこぼれ、右足ダイレクトでゴールへ押し込んだ。だが、鹿児島城西はその1分後、DF川原琉翔(3年)の左CKをMF小堀優翔(2年)が頭で合わせて同点に追いつく。

 鹿児島城西は新田祐輔監督の「行け!」「走れ!」の声に呼応するように“オールプレス”。そして、ボールを奪うと間髪入れずに運動量豊富な前線3人へ蹴り込み、相手を押し下げた。神村学園はテクニカルな一方、切り替えの速さも特長とするチームだが、奪い返しに行く前に蹴り返されてしまう。
 
 神村学園はその中でもMF畠中健心(3年)とMF佐藤璃樹(3年)、大迫を中心にボールを繋ぎながら前進。右SB笠置潤(2年)のクロスを福田が頭で合わせ、序盤から積極的にゴールを狙っていた大迫がシュートへ持ち込む。32分には大迫のループパスから福田が右足ボレー。だが、鹿児島城西の守りは堅い。

 鹿児島城西はMF永吉雅弥主将(3年)をはじめ、各選手が後半も運動量を維持。スタンドからの拍手もエネルギーに走り続けていた。神村学園は突破口になっていた左MF篠原駿太(3年)へボールを集め、両サイドからクロスを連発する。だが、鹿児島城西は相手エースの福田を徹底マーク。川原、DF濱崎聡馬(3年)、DF竹下真矢(3年)の3バックを中心に弾き返し、決定打を打たせない。

 逆に後半12分、川原がインターセプトから縦パスを通して決定機。またMF崎野隼人(3年)の突破などで会場を沸かせる。30分には相手のミスパスを奪ったFW前田隼希(2年)がGKと1対1に。新田監督は「(新人戦ではプレスがかからなかったが、)4か月前から鍛えて、そこは成長したと思う。両ワイドはよく抑えていたと思います」。ライバル相手に気持ちの込もった戦いを見せ、飲み込もうとしていた。

 神村学園DF陣も我慢強く相手の攻撃を凌ぎ、試合は1-1で延長戦へ突入。神村学園はその前半5分、左アーリークロスにファーで反応した福田がGKの頭上からヘディングシュートを打ち込む。だが、ゴールライン上でDF川原がカバー。鹿児島城西は集中力も高かった。それでも、抜水が「今年はサイドもですし、中央に代表もいて、個で勝負できる選手が多いですし、そういうところはチームの特長だし、凄く力になっているのかなと思っています」と説明する神村学園は、個の力で勝ち越し点を奪い取る。

 延長後半5分、左サイドでキープした畠中が中央の大迫へパス。ここまで厳しいチェックを続けていた鹿児島城西だが、寄せ切ることができない。注目レフティーはややボールを浮かせるようなボールコントロールから左足一閃。アウトにかけたミドル弾にGKは反応することができず、劇的な決勝点となった。

 神村学園の有村圭一郎監督は「4年間我慢して選手権にも出続けて、やっと選手が揃ってきたというか、勝ち続けたことで分散傾向にあった鹿児島の選手がちょっとずつウチに来てくれるようになってきたと思います。選手が集まって来てくれていることもあって、もっと良いチームが作れるのかなと。今日も最後は個で行くしかないような状況が生まれた中で、個で決め切る選手が増えてきたとは思います。そうなると、バリエーションも増えるし、コンビネーションも増えてくると思うので、この段階でのやっていることに関しての成長を感じます」。勝ち続けていることで神村学園を目指す選手が増え、年々高まっている個。この日は得意とするグループでの崩しが難しい状況だったが、それでも最後に相手を上回った。

 鹿児島実高の選手権初優勝(95年度)メンバーでもある指揮官は「昔は鹿実(鹿児島実)の一強。勝ち続けないとそういうところまではいけない」。鹿児島実は90年~00年代にかけて選手権優勝2回、準優勝3回、3位3回。10年代以降、全国4強から遠ざかっている鹿児島サッカーを自分たちが復活させるという思いも強い。

 抜水は「全国では神村らしい攻撃的なサッカーで見ている人を魅了できるように頑張りたいと思います。もちろん優勝を狙いながら、上に行くことが神村のサッカーを評価される部分になりますし、一人の選手として評価されるためにも上に行かないといけない。一人ひとりが自分のためにやることがチームのためになると思うので、そこは意識してやりたいと思っています」。インターハイでは神村らしいグループでの崩しと個の力で対戦相手を上回り、大暴れする。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2021

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