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“最後の試合”を見ずに引退なんてさせたくない。清水東は会場外の3年生たちに白星届ける

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清水東高MF佐野健友主将は会場外の3年生たちが喜んでくれたことに笑顔。「(勝利よりも)そっちの方が嬉しい」

[5.30 インターハイ静岡県予選準決勝 清水東高 2-1 常葉大橘高 藤枝総合]

「負けたら、自分が見ていない時に引退となっちゃうじゃないですか。そういうのはさせたくないので、絶対に勝とうとなっていました」。清水東高のMF佐野健友主将(3年)は会場に来られなかった仲間たちと一緒に勝ち取った勝利であることを強調し、勝ったこと以上に会場外の仲間が喜んでくれたことについて「嬉しい」と語っていた。

 県下有数の進学校である清水東はインターハイ限りでサッカー部から引退する3年生が少なくない。今年も敗戦と同時に勉強へ専念する3年生たちがいるようだ。だがこの日、普段のインターハイ予選ならばスタンドで一緒に戦っていたはずの登録外メンバーの姿は、会場に無かった。

 新型コロナウイルス感染予防対策のため、登録外の3年生は学校からの応援に。“最後の”試合を見ることもできないまま同級生たちを引退させる訳にはいかなかった。清水東はモットーである「ねばれ はしれ」でプリンスリーグ東海勢の常葉大橘高に対抗し、終了4分前に追いつかれても諦めなかった。

 そして後半アディショナルタイム。この日先制アシストを記録している佐野のスピードのあるクロスからFW野村光(3年)がシュート。最後はFW中山大耀(2年)が執念の決勝点を挙げた。「勝因は最後まで勝てるという思いをみんなが持っていたからだと思います」と佐野。決勝まで進めば3年生が来場できるかもしれないという可能性を信じ、“まだ引退させる訳にはいかない”の思いで諦めずに戦った清水東が白星をもぎ取った。

 昨年、選手権まで活動した清水東の3年生は8人。コロナ禍のため、インターハイ、同予選は開催されず、他の3年生たちは全国への挑戦ができないまま、未練も残したまま高校サッカーから卒業することになったという。「昨日も先輩からメールが来て、『俺らの分まで』と」(佐野)。佐野は2歳年上の兄がインターハイ予選で引退する姿も見ているというが、先輩たちの思いにも応える白星だった。決勝では仲間・先輩の思いも背負って、あと1勝に挑戦する。

(取材・文 吉田太郎)
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