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「兄弟対決と言われるが、弟でもなんでもない」JFA反町技術委員長が見た“ツーカテゴリ”の差

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オンライン取材に応じた反町康治技術委員長

 日本サッカー協会(JFA)の反町康治技術委員長が4日、報道陣のオンライン取材に応じ、前日3日に行われた日本代表対U-24日本代表のチャリティーマッチ(札幌ド)を振り返った。

 A代表のキリンチャレンジカップ・ジャマイカ戦が急遽中止になったのを受け、スクランブルで設定された“兄弟対決”。欧州組と国内組をミックスしたA代表と、オーバーエイジを交えた五輪代表との異例の対決には日本中の注目が集まる中、A代表がU-24代表に対して要所で勝負強さを見せ、3-0で圧勝する結果となった。

 質疑の冒頭では「皆さんが記事にしたいところから考えると、A代表が0-3くらいで負けて待ってましたとばかりに書くのを楽しみにしていたのではないかと思うが……」と報道陣に向けて笑みを見せた反町委員長。結果については「サッカーの試合をする上で勝敗は最優先に考えないといけないが、こうしたゲームは個人のパフォーマンス、チームのパフォーマンスがどうなっているかというのを最優先して見たいと思っていた」と述べつつも、「結果に対してはそんなにこだわりはなかったものの、メディアがどう書くかによってわれわれにとってやりやすくなること、やりづらくなることは十二分にあるので、緊張していた部分はあった」とホッとした様子を見せた。

 また現場トップの立場から見て、この試合で目を引いたのはA代表チームの「ガツガツ」感だったという。

「馴れ馴れしくやるのか、キリッとした状況でやるのか、いろんな考え方があると思うが、試合を見ていただいてわかるように橋本拳人も室屋成も足をつっているんですよ。足をつるのはいけないんだけど、エンジン全開でひたむきにやっていたということ。それは代表に選ばれることの一つのステータスであり、U-24の選手にもやってほしいと思っている」。

「どっちがガツガツしていたか、どっちが飢えていたかというと、サムライブルー(A代表)のほうがあったと思っている。僕はそういうふうに感じた。もちろんU-24とサムライブルーの立場は違うが、当然ながら手を抜くことなく、それ以前の(カタールW杯2次予選の)モンゴル戦やミャンマー戦から追い求めてやってきたことが、昨日の試合でも具現化したのではないかと思っている」。

 そうA代表の戦いぶりを称えた一方、U-24代表にはさらなる高い基準を求めた。

「言わせてもらうと、U-23対サムライブルーではなく、U-24対サムライブルーなんですよ。で、この1年はでかい。たとえば他の代表チームの平均年齢を見てもだいたい24〜25歳くらい。そう考えると、兄弟対決と言われているが、もう弟でもなんでもない。もしサムライブルーが苦戦した場合は同等のチームと捉えてもらってもいいと言おうと思っていたが、逆に言えば弟と言われているU-24が少しだらしなかったという言い方になるかもしれない」。

「僕がU-23をやっていたときは海外組は森本(貴幸)と(本田)圭佑くらいかな。でもいまは多くなっているわけじゃないですか。そう考えると、いまは五輪があるから一応ワンチームツーカテゴリとカテゴリを分けているが、本来であればワンチーム。U-24だってもし(吉田)麻也と(酒井)宏樹が出ていれば平均年齢が上がる。そうするとチーム平均年齢では同じくらいかもしれない」。

 そうしたロジックでA代表とU-24代表を同一視する姿勢を示した反町委員長は、大差がついた試合結果の裏に「国際舞台の経験値というものの差があったと思う」と指摘。「経験値というのは、一泡吹かせてやろうといううわずったものではなく、しっかり黙らせてやるぞというメンタル的な強さがサムライブルーにはあった」と振り返り、U-24代表にはこの試合の経験を今後に活かしていくよう求めた。

 U-24代表にとって、今回の活動は試合以外でも異例の経験となった。

 当初は2試合のはずがチャリティーマッチの緊急開催で試合数が3試合に増え、予定になかった札幌への移動を挟んで初戦のU-22ガーナ戦(5日・ベススタ)を中1日で迎える形に。また試合翌日の4日午前には札幌からのチャーター便が悪天候のため運航できず、急きょ札幌でトレーニングを行った後、同日夜に福岡へと移動するというスケジュール変更も強いられた。

 それでも反町委員長は「心配はしている」としながらも「そういうのでもしっかり対応できるメンタリティーとかを養っていかないといけない」と指摘。「無理だというのではなく、経験値を積んだ中でたくましくなることも必要。もちろん彼らには迷惑をかけたという言い方にもなるかもしれないが、そうした中でも前日遅くに着いたから次の日のパフォーマンスが悪かったという理由には絶対にならないと思う」と厳しい視線を送る。

「世界の舞台に出た場合、本当にそういうこともあるかもしれない。移動しようと思ったら、ホスト国が邪魔をしてそういうことになるかもしれない。昔はそういうこともあった。すごく汚いホテルに泊まったり、すごいまずい飯を食わされたりとか。いまはそういうことは少ないかもしれないが、そういうのを理由にして試合に勝てなかったとしてほしくはない」。

 そう力を込めた反町委員長は「これがいい経験だったという言い方は変かもしれないが、なにくそと思ってやるのがサッカー選手に与えられた使命だと思う」と発破をかけ、5日のU-22ガーナ戦、12日のジャマイカ戦での奮闘に期待を寄せた。

(取材・文 竹内達也)
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