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相馬のゴールに結実…上田綺世が語った“動き出し”への矜持「それがある限りやり続けられる」

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チームの4点目を奪ったFW上田綺世(鹿島、写真右)

[6.5 国際親善試合 U-24日本 6-0 U-24ガーナ ベススタ]

 U-24日本代表のFW上田綺世(鹿島)は4-0で迎えた後半11分、DF中山雄太のクロスから強烈なヘディングシュートを突き刺し、五輪世代では2019年3月のU-23アジア選手権・東ティモール戦以来となる待望のゴールを奪った。「どちらかというとホッとしたというか、やっと取れたなという実感」。またチームを支えてきたエースはこの一戦で、みずからの得点以上に大きな手応えを感じていたという。

 試合後のオンライン取材、上田はある得点シーンを重ね重ね振り返った。

 それは「ニアに入っていく意識はあったけど、深い位置からのクロスだったので、マイナスも行けるようにしていた。(マイナスに流れたけど)身体能力を活かしてニアに打てたのでよかった」とあっさり語った自身のゴールではなく、DF吉田麻也の縦パスをMF堂安律がつなぎ、MF相馬勇紀がフィニッシュしたチームの4点目だった。

 このシーンで上田は、右サイドから中央に絞りながらパスを受けようとした堂安の逆を取るように、右サイドに流れていく動き出しをスタート。その結果、この動きにつられた相手ボランチは堂安にアプローチするのが遅れ、上田を追走したセンターバックも中央を空けたことで、ゴール正面に走った相馬へのパスコースが一気に開けていた。

「いくら良い動き出しをしてもボールが来ないことがある。動き出しはあくまでも他力で、ボールを持っている人が絶対なので、僕を囮にしてゴールが生まれれば良い。出てくることが全てではないことは分かっている」。

 自身の動き出しについてそう振り返った上田は「自分の動き出しが間接的にでもゴールに関われればいい」としつつ、「そうやってゴールが決まれば、自分の動き出しが多少生きたかなという実感もある。それがある限りはやり続けられる」と矜持をのぞかせた。

 ボックス内で勝負するストライカーの上田にとって、一瞬の動き出しは「自分の武器」。それでも、ともにトレーニングを行う時間が短い代表チームにおいて、その武器を発揮するのはクラブチームより困難になる。とりわけMF久保建英、MF堂安律らA代表でプレーする欧州組をはじめ、オーバーエイジ選手まで合流した現時点の急造チームにおいてはなおさらだ。

 それでも上田は「建英も律も久々にやるし、あまり一緒に練習もできていないので、どういうところで動いて、どういうところでターンするのかは分からなかった」という中、「彼らのスピードに自分の動き出しを合わせるようにやっていた」というトライを継続。そして「引きつけながらスペースを作り続けるのが僕の仕事。彼らをなるべくフリーにして前を向かせることが自分の武器にもつながる。彼らのやりたいことを汲み取って、逆の動きができればいい」と黒子役を引き受け、ゴールラッシュにつなげてみせた。

 そうした働きは鹿島の先輩であり、いまではA代表のエースを担うFW大迫勇也(ブレーメン)にも重なるものだ。上田は「日本のトップクラスのFWなので、僕もいずれは大迫くんみたいな存在になりたい。この前の試合でもじーっと見ていたし、盗めるところは思考もメンタリティも含めて見ている」と素直な憧れも口にした。

 もっともストライカーたるもの、自らが大事なゴールを奪う道を諦めたわけではない。

「一つのゴールはすごく重みがあるので、貪欲さは失いたくない。4-0でも5-0でも点を取りたい」とゴールへの熱意を語った上田は、これからの練習期間で自らが得点を取るための連係面の向上にも取り組む構え。「今日も前半の頭に比べたら後半は距離感もよく、背後も取れるようになったので、次は前半から背後の動き出しや距離感、ワンツーなどを出せるようにしていきたい」と力を込めた。

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