beacon

[MOM3478]開志学園JSC DF長谷川基尊(3年) _応援団の前を駆け続けた左WBが、得意のスプリントから決勝弾

このエントリーをはてなブックマークに追加

DF長谷川基尊(左端)のヘディング弾で開志学園JSC高は決勝へ進出!

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[6.5 インターハイ新潟県準決勝 帝京長岡高 0-1 開志学園JSC高]

 クロスが上がった瞬間。左サイドから弾丸のように5番が突っ込んでくる。スタメンで一番小さなウイングバックが、完璧な打点で叩いたヘディングは、ゴールネットを激しく揺らす。「スプリントは得意な方なので、というか、スプリントしか取り柄がないので(笑)、あそこまで行くしかないと思っていました。本当に気持ち良くて嬉しかったです」。DF長谷川基尊(3年=坂戸ディプロマッツ出身)がずっと磨いてきた“スプリント”が、開志学園JSC高をファイナルへ導いた。

 予兆はあった。左サイドバックでスタートし、システム変更後は左ウイングバックを務めた長谷川だが、そのアップダウンはピッチの中でも際立っていた。自陣で守っていたかと思えば、相手ゴール前のチャンスにも顔を出す。とにかく走ることをやめる気配がない。

 0-0で迎えた後半21分。ジョーカー的に起用されたMFモーリス・ケンヤ(3年)が右サイドで粘り強くクロスを上げると、長谷川はもうゴール前に走り込んでいた。「モーリスがあそこでクロスを上げると思って入っていきましたし、練習でもやっていたので、予想通りに来たという感じです」。頭で合わせたボールが、帝京長岡ゴールを打ち破る。その瞬間。気付けば仲間たちが待つ応援席の方に、駆け出していた。

「もう背中を押された感じですね。声を出されていたらプレッシャーを感じていたと思いますけど(笑)、いてくれるだけで感謝しかないので」。後半はスタンドで応援するベンチ外メンバーたちの目の前で、上下動を繰り返す。以前のように声こそ聞こえてこないものの、その想いは十分に背中に感じていた。だからこそ、ゴールを決めた瞬間、走っていく方向はおのずと決まっていたのだろう。

 得意のスプリントは、より自身の強みにしようとずっと練習に励んできた。「1年生の頃から結構スプリント的な走りをしてきていたので、それがタメになったかなと思っています。大林夏樹コーチには、1年生から本当にお世話になっています」。本当に大事な場面では、積み重ねてきたモノしか出ない。この日の決勝点も、この2年半で大事に磨いてきたストロングが輝いた。

 もともとは埼玉出身。中学時代は坂戸ディプロマッツでプレーしていたが、開志学園JSCの環境に惹かれて、新潟の地に乗り込んできた。「寮を出たらすぐグラウンドがあるというのが良いなと思いましたし、グラウンドが最高なので、そこも良いですね。寮なので、みんなと関われるのも本当に楽しいです」。その後に続けた言葉へ、さらに気持ちがこもる。「やっぱり親にも恩返ししたいので、全国に行きたいと思っています」。

 決勝でやるべきこともハッキリしている。「自分の得意なスプリントを生かして、どんどん前に行って、アシストとかチャンスメイクをしていきたいと思っています。本当にやるしかないので、頑張りたいですね」。

 応援してくれるチームメイトの、そして快く新潟へ送り出してくれた親の、あらゆる人の想いを追い風に、全国の懸かった舞台でも長谷川はサイドを軽やかに駆け抜けていくはずだ。

(取材・文 土屋雅史)
▼関連リンク

●【特設】高校総体2021

TOP