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一度は「諦めた」プロへの道。這い上がってきたMF塩田航輝が“静学仕込み”の技巧で中京の優勝に貢献:岐阜

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中京高MF塩田航輝は狭いスペースで技巧を発揮

[6.5 インターハイ岐阜県予選決勝 中京高 3-0 県岐阜商高 長良川球技メドウ]

 一度は目標とする道を諦めながらも、もう一度エネルギーを持って努力してきたMFが岐阜決勝で存在感を示した。中京高MF塩田航輝(3年=南ヶ丘中出身)はこの日、福留直人総監督から“二人のマン・オブ・ザ・マッチ”の一人に挙げられるほど高評価を得たパフォーマンス。身長160cmと小柄だが、技術力と体力を特長とする塩田は、ポジション取りの巧さと正確なタッチで中京のパスワークを好転させていた。

 準決勝の宿敵・帝京大可児高戦ではチームの3点目となるゴール。後半終了間際に追いつかれ、決勝点とはならなかったものの、今回のインターハイ予選では決定的な仕事もしてきている。

 その塩田は、中学2年生の終わり頃まで名門・静岡学園中でプレー。その後、地元の公立中学校へ転校し、中京へ進学した選手だ。静岡学園中で学んだことは今も活きているという。「毎日意識高く練習するというのが静岡学園で力のついたところなので、そこは中京来ても変わらずにできていると思います」。努力してきたことが今のベースになっている。

 静岡学園中から静岡学園高へ進学し、活躍する選手がいる一方、名門高には毎年県外から有力選手が入学してくる。静岡学園中の同級生にもMF清水和馬やMF菊池柊哉という現在年代別日本代表や静岡学園高の主力になっている選手がいた。

「(当時、高校の出場選手は県外選手が多く、)自分は彼ら(清水や菊池)よりも劣っていたのでこのままではプロは難しいんじゃないか」と不安になったという塩田は「プロの道を諦めて……」地元の岐阜へ。それでも、中学3年時の秋に福留総監督の「全国を目指す」という言葉に惹かれ、中京へ進学することを決断した。

 小柄なMFは高校進学後、「全国は難しいんじゃないか」と思うこともあったという。それでも周囲の励ましもあり、這い上がってきた。「コーチの(熊谷)大樹さんからも『オマエがやっぱり必要だ』と言われて、自分の力を信じて、周りへの感謝を忘れないようにして、全国目指すようにして、ここまで来れて良かったです」。這い上がるためには、相当なエネルギーが必要だったはずだ。それでも、静岡学園中時代に磨いた技巧や持ち前の体力を信じて努力を継続。県準決勝や決勝の舞台で輝いた。

 掴み取った全国への切符。「静学らしさという訳じゃないんですけれども、中京高校は2タッチで丁寧に運ぶので、自分はいつも通り体力と動き出しもやっていけたら。ゴール前ではドリブルも。そして、1点でも決めたいなというのがあります」。塩田は静岡学園中時代に仲が良かったというFW持山匡佑(当時清水Jrユース所属)らと戦うことも目指して、全国大会に挑む。

(取材・文 吉田太郎)
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