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一体感が増した「二上山の鐘つき」。高岡一FW高畑優輝が放つ圧倒的なエネルギー

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高岡一高の10番でキャプテン、FW高畑優輝

[6.6 インターハイ富山県決勝 高岡一高 2-1(延長) 水橋高 高岡スポーツコア]

 躍動感あふれるプレースタイルは、左腕に巻いたキャプテンマークと、託された10番というエースナンバーを差し引いても、フィールドの中で一際目立っている。「自分たちはたぶん県で一番キツい練習をしている自信はあるので、『もう絶対に走り勝つぞ』と。ベンチメンバーも、応援してくれたスタンドのみんなも一緒に戦ってくれたので、絶対に勝てると思いました」。全員で戦い抜く高岡一高の象徴的な存在、FW高畑優輝(3年=高岡芳野中出身)が発するエネルギーは、常に周囲をポジティブなオーラで包み込んでいく。

 新チーム結成当初、個性派集団はなかなかまとまる様子を見せなかった。「最初にチームが立ち上がった時は、ホンマに1つも話を聞かずに、ふざけたりとか空気を読まないヤツとかいっぱいおったんですよね」。

 ただ、3年生になると各々の自覚も芽生えてくる。「目標を決めたんです、リーグ戦、インターハイ、選手権と全部タイトルを獲ることを決めてからは、『自分たちが下級生の時から、先輩方にやってもらったようなことをやろう』ということで、3年生1人1人がしっかり自覚を持って、1年生や2年生をしっかりまとめてくれましたね」。

 さらにチームの一体感を醸成したのは、『二上山の鐘つき』だ。高岡一はリーグ戦の開幕前、インターハイの前、選手権の前と、1年に3回は標高274メートルの二上山にチーム全員で出向き、急な傾斜の坂を登り切ると、誰でもつける鐘としては国内最大級の大きさを誇る“平和の鐘”をついて、また山を走って下りるという恒例行事がある。

「相当キツいです。後ろから軽トラで追われて、タイムも決まっていて、地獄です(笑) でも、その鐘まで部員全員で行って、鐘を囲んで『インターハイ絶対優勝するぞ』ということを言って、鐘をついて、しっかり帰ってきたら、次の練習からみんな気合が入っているんですよね」と高畑。この“鐘つき”を全員で乗り越えたからこそ、苦しい時にも彼らの中には確かな依り所が存在している。

 さらに、高畑には絶対に負けられない理由があった。去年からチームの中盤を支えてきたMF佐藤大吾(3年)が、準決勝で大会2枚目のイエローカードをもらってしまい、大事な決勝は累積で出場停止に。「昨日は試合が終わった後もずっと泣いていたので、みんなで『何があっても全国に行くから』という約束をして、全員戦っていました」。仲間の想いを背負って、ピッチで90分間走り切り、延長戦の末に水橋高を2-1で撃破。見事に約束を果たしてみせた。

 小学生の頃からずっとポジションはフォワードだったという、生粋のストライカー。高岡一に入学して3年目で、とうとう辿り着いた全国の舞台に立つ自分の姿も、既にイメージはできあがっている。

「自分たち高岡第一サッカー部は、全国大会に出たことはあるんですけど、1勝もしたことがないので、まずは1勝を目指しつつ、目の前の試合を1つずつ勝って、上まで行きたいですし、個人としてはもしチームが1点獲られても、2点獲れるフォワードになって、どんどんチームを助けていきたいです」。

 中体連から全国へはばたく高岡の星。圧倒的なパワーを放ち続ける高畑の躍動が、きっと福井の夏を熱くする。

(取材・文 土屋雅史)
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