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U-20W杯中止で失われた飛躍のチャンス。MF山本理仁らU-20日本代表候補は「そこに向かって」パリ五輪で舞う

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01年生まれ世代の中心プレーヤー、U-20日本代表候補MF山本理仁(東京V)

 24年パリ五輪世代のU-20日本代表候補が、7日から千葉県内で強化合宿を行っている。合宿2日目の8日午前練習では、6対6プラス2フリーマンや、4分の3コートでの11対11のメニュー。内田篤人ロールモデルコーチも左SBとして出場した11対11では、局面局面で激しい攻防戦も行われていた。

 テンポ速くサイドを変える攻撃や、FW櫻川ソロモン(千葉)らの切り替えの速い守備に対してスタッフから称賛の声が上がっていたほか、U-18組も奮闘を見せていた。CB吉田温紀(名古屋U-18)が絶妙なインターセプトでボールを奪い取り、GKをかわしたMF松村優太(鹿島)の決定的なシュートをCB田中隼人(柏U-18)がブロックするシーンも。そして、後半にMF山本理仁(東京V)の右クロスから追加招集組のFW藤尾翔太(C大阪)が唯一のゴールを決めてトレーニングを終えた。

 U-20日本代表候補は5月31日から6月3日まで開催されたキャンプからメンバーを全て入れ替えて2週連続の活動。前回は大学生15人が大量招集(1名辞退)されたが、今回は17人のJリーガーが招集されている(山口トップチーム登録の18歳、FW河野孝汰を含む)。

 合宿開始時に影山雅永監督からは、「自分の力をここで証明しろ」「(なかなかクラブで出られない選手もいる中、)ここで自分の力を証明して自信を持って帰って欲しい」というメッセージを受けたという。Jリーガー中心のメンバーは自分の力、競争相手である先週の合宿メンバー以上の力を示す構えだ。

 10日には全日本大学選抜と練習試合で対戦。山本は「そこはプロとしてのプライドというか、大学生に絶対に負けちゃいけないと思うし、いくら年上であろうがそこはプロとして絶対に負けられないプライドがあるんで、それは全員が持っていると思いますし、もちろん大学生にも勝ちますし、先週のキャンプのメンバー以上の力を見せたいなと思います」と宣言した。

 この日、山本は一段階余裕のあるゲームコントロール。「Jリーグのトップトップのプレスのスピードに比べると、やっぱり(U-20の)プレススピードは一つ下がっていると自分は感じますし、その中で自分がどう違いを出せるか。それは背後へのパスだったり、ゲームを落ち着かせるところだと思うので、それは誰にも負けられないと思うし、このキャンプで自分の力を見せたいなと思います」。素晴らしいクロスでゴールを演出するなど違いを示した。

 高校時代にもJ2で力を示していた逸材レフティー・山本は、U-15時代から年代別日本代表の常連。2世代上の代表チームへの飛び級招集などを経験してきた01年生まれ世代の中心選手だ。年代別日本代表では、自分が中心選手としてゲームを作ることを意識。その一方、リーダーの一人として合宿に臨み、初招集や年下の選手が力を発揮できるような働きかけも心がけているという。

 その山本は、ワールドカップと“縁がない”。17年のU-17ワールドカップは1歳年上のU-17日本代表のトレーニングパートナーに。ワールドカップメンバーに十分食い込む力も示していたが、わずかに及ばなかった。

 そして、本来ならば今年開催されていたはずのU-20ワールドカップも中止。山本は「特に今回のU-20に関しては、自分の中でも楽しみにしていた大会だったし、一つ自分のサッカー人生の中でターニングポイントになるところだと思っていたので、なくなって凄く残念ではありますけれども、パリオリンピックがあるので、もうそこに向かって行くしか無い」。

 現在、21年東京五輪日本代表候補に同世代のMF久保建英(ヘタフェ)や1歳年下のGK鈴木彩艶(浦和)がメンバー入り。「もちろん、それは悔しいというか、ただ、自分の今の実力では難しいと思うので、そこはしっかりと受け止めて、ここから最後にA代表になれた方が勝ちだと思うので、そこは自分の力を認めて努力していくだけだと思っています」。U-20日本代表の中心選手として世界で舞うチャンスはコロナによって潰え、同世代の活躍など悔しい思いもしているが、それをJでの活躍やパリ五輪へのエネルギーにしている。

 今季、東京Vでは開幕から先発出場を続けていたが、最近はベンチを温める試合も。それを受け止めてトレーニング、それ以外の時間でレベルアップを目指してきた。ヘディングなどの課題について、「スタンダードなレベルまで上げないといけないと思っているし、そういう苦手なところも克服しつつ自分のストロングも伸ばせるように。人と同じ練習をしていたらダメだと思うので、チームの練習プラスアルファのところで、しっかり今はやっています」。今年掲げている目標は10得点10アシスト、そしてJ1昇格。スタートしている中心選手としてのパリ五輪への挑戦と、クラブでの挑戦の両方で目標を達成するために、一日も無駄にするつもりはない。

(取材・文 吉田太郎)

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