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“飛び級”CBチェイス・アンリはより上手くなるため、先輩FW染野唯月に質問も。練習は「びっくり」の出来で自信に

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U-20日本代表候補チェイス・アンリ(尚志高)が得意のヘッドを見せる

 U-20日本代表候補合宿(7~10日、千葉県内)合流直前、「嬉しい」「楽しみ」と語った一方で「ちょっと、怖いです」と不安そうな表情を浮かべていた。だが、合宿2日目の8日、CBチェイス・アンリ(尚志高)は随所で笑顔を見せながらのトレーニング。「最初のパス練とかパススピードとかめっちゃ速くてびっくりしました」と振り返るが、その後6対6プラス2フリーマンや、4分の3コートでの11対11のメニューでは強みであるヘッドや縦パスを通すなど、本人も自信をつける内容だったようだ。

「結構、自分も縦に入れるパスとか入れられたので、自分でも結構びっくりしているんですけれども。(一方で)やっぱり、その前のポゼッションとかもっと判断速くしなければいけないなと思って練習していました」

 充実したトレーニングになった理由は、彼の積極的な行動にあったようだ。アメリカ人の父と日本人の母を持つアンリは、違和感なく日本語を話すが、より得意なのは英語の方。新しいところへ飛び込み、コミュニケーションを取って行くことが得意な選手ではない。

 それでも、高校サッカーの“怪物”CBは2歳年上の選手たちから良い意味で可愛がってもらっている。この日はトレーニングの合間にFW櫻川ソロモン(千葉)と会話し、ハイタッチして次のメニューへ。また、先輩たちのアドバイスを受けることで「守備面も結構良くなりました。(藤田)譲瑠チマ君とか、(野澤)大志(ブランドン)君が結構試合中に教えてくれたので理解できるようになりました。結構、みんな教えてくれますんで、経験値高いので、(当初の不安は)もう大丈夫かなと思いますね」

 守備時の間の閉め方やボランチを活用して守ることなど、先輩たちから声がけされながらレベルアップ。また、11対11の前後半の間には、尚志高(福島)の2学年上の先輩であるFW染野唯月(鹿島)の下へ自分から歩み寄り、質問をぶつけていた。

「CKのマークの外し方とか、ヘディングとか聞きました。自分から。小さい人がマークとか来たら、人とか使ってブロックして、自分をフリーにした方が良いとか、自分今までマーク付きながらでもヘディングしていたので、ブロックの使い方とかしっかりやった方が良いと思います」。

 高校1年時、2学年上の「高校No.1ストライカー」染野には自分から話に行くことができなかったというが、「結局何も言わずに合宿終わったら意味無いので、自分から質問したり、自分からコミュニケーション取らないと上手くならないと思ったので」思い切って染野に質問。成長したいという思いが自分の背中を押した。そして、先輩は丁寧にアドバイス。2年前の“怖かった”オーラ、イメージはあっという間に払拭されたようで、「良い先輩です」と微笑んでいた。

 上の世代のU-20日本代表候補に生き残りたい、という思いも強くなったようだ。「自分も上の人と絶対にやりたいので、頑張ります」。この日は手応えを得た部分も多かったが、U-18世代の逸材ストッパーもU-20世代屈指のFW櫻川とマッチアップではボールを奪い取れなかった。

「(櫻川は)結構強いです。上手いし、ビビりました。全然獲れません。体デカイし、前に入らないと獲れないと思います。結構難しいです」。同じく対峙したFW藤尾翔太(C大阪)含めて、2歳年上の選手たちからボールを奪うためには当たり方、タイミングなどの工夫がより必要だということを実感した。まだまだ全てが思い通りに行っている訳ではない。だが、成長を求めてこの合宿に参加しているアンリは4日間の合宿で少しでも進化し、将来の24年パリオリンピックやA代表入りに繋げたい考えだ。

「自分もオリンピックのメンバーとか(気にして)見ているんですけれども、冨安(健洋)選手とか好きなんで。若いし、あの人も前は下手だったのが、どんどん上手くなったというのを聞いたら、自分もそういう感じになれるんじゃないかと。自分も、(五輪世代ながらA代表で主力の冨安のように)もっと上の方でやりたいと思っていて、自分の代とか、一個上とか、二個上関係なく自分もやんなきゃいけないと思っています」。

 10日に開催される全日本大学選抜との練習試合は一つのアピールチャンス。「一回はヘディングを決めたいです。あとは体負けとかしないように」と意気込みを語った。大学生相手に違いを見せつけること。そして、この合宿で自分から質問し、学んだことを尚志に持ち帰り、高校サッカーで対戦相手を圧倒しながら日本一を獲得してまたチャンスを得る。

U-20日本代表候補合宿2日目、U-18世代から“飛び級”のCBチェイス・アンリ(左)は尚志高の先輩FW染野唯月(鹿島)に質問も

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2021

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