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U-20日本代表候補は全日本大学選抜に3-6で逆転負け。パリ五輪世代は自チームで藻掻き、「本当の100%」でハードル超えへ

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2本目終了間際、U-20日本代表候補はFW藤尾翔太(C大阪)のゴールで3-3としたが……

[6.10 練習試合 U-20日本代表候補 3-6 全日本大学選抜]

 24年パリ五輪世代のU-20日本代表候補は千葉合宿最終日の10日、全日本大学選抜と練習試合(45分×3本)を行い、3-6で敗れた。

 ちょうど一週間前の6月3日、U-20日本代表候補は全日本大学選抜と練習試合を行い、4-5で敗戦。互いにメンバーを全て入れ替えた今回の再戦で、再び全日本大学選抜が勝利した。

 1本目、U-20日本代表候補はJリーガー10名にCBチェイス・アンリ(尚志高)を加えたメンバーで戦った。この日球際のバトルで存在感を見せていたアンリが大学生との1対1を制し、MF山本理仁(東京V)がMF光田脩人(早稲田大1年)と激しくボールを奪い合う。

 序盤こそ、なかなかリズムを掴めなかったU-20代表候補だが、攻守における距離感が改善されると20分に先制点を挙げる。左サイドを抜け出したMF小田裕太郎(神戸)のラストパスのこぼれを、MF鮎川峻(広島)が左足ダイレクトで決めて先制した。

 だが、直後の22分、大学選抜に中盤の網をあっさりと破られると、左の光田からのラストパスをFW小森飛絢(新潟医療福祉大3年)に決められて同点に追いつかれてしまう。その後、山本のクロスをFW櫻川ソロモン(千葉)が頭で合わせ、ソロモンとのワンツーで右サイドを突破した鮎川のラストパスにFW染野唯月(鹿島)が飛び込むシーンもあったが、2点目を奪うことができない。

 1本目終了後、U-20日本代表の影山雅永監督は、ややバックパスの増えていたチームに対して「ブレーキを踏むのではなく、アクセルを踏むサッカーをしよう」と背中を押し、シンプルに「戦うこと、ボールを奪うこと、ゴールへねじ込むこと」を求めた。

 メンバー3人を入れ替えた2本目、U-20代表候補は開始直後、ソロモンの展開からMF松村優太(鹿島)が縦へ仕掛けてクロス。これをソロモンが頭で合わせる。ゲームキャプテンのMF藤田譲瑠チマ(徳島)が声でチームを鼓舞する中、前向きな戦いを見せていたが、10分に失点。大学選抜はMF山内翔(筑波大2年)のスルーパスから光田が右足で決めて逆転した。

 U-20代表候補もアンリのロングスルーパスでFW藤尾翔太(C大阪)が抜け出したが、大学選抜GK杉本光希(立正大2年)がストップ。U-20代表候補はその後、守備と攻撃の質が向上する。特に、メンバーがさらに6人入れ替わったあとの2本目終盤は、攻守にアクションが増えて流れの良い時間帯が続いた。

 39分にMF松橋優安(東京V)の右足コントロールショットで同点。41分には、FW山田新(桐蔭横浜大3年)のラストパスからMF藤井海和(流通経済大1年)に勝ち越し点を許したが、U-20代表候補はアディショナルタイムにMF成岡輝瑠(清水)のループパスから藤尾が右足を振り切って再び同点に追いつく。

 ただし、藤田が「やっぱり1個1個のプレーの軽さや質の部分が足りなくて、簡単に失点してしまったり、決められるところで決められなかったり、最後のラストパスで相手に寄せられなくて獲られたりしたことが、この3-6という結果になってしまったのかなと思います」と指摘したように、細かな部分の積み重ねで差をつけられてしまう。

 この日、U-20日本代表候補は怪我もあってSBで起用できた選手が先発両SB、大嶽拓馬(柏)と三原秀真(愛媛)の2人だけ。チーム事情もあって3本目は3バックを採用する。だが2分、FW森海渡(筑波大3年)のラストパスから山田に勝ち越し点を許すと、13分にはサイドを崩されて森にゴールを破られた。

 U-20代表候補は相手の背後を突いてチャンスを作るも、決定機を活かせず。今回選出されているメンバーは所属チームで十分なプレー機会を掴めていない選手が多く、90分間プレーしたのは数か月ぶりという選手もいた。暑さもあり、質、運動量の低下したチームは終盤にも大学選抜FW山田に決められて3-6で敗戦。何とかしようと藻掻くも、体が動かなかったり、ミスが出てしまうなど“もどかしい黒星”だった。

 年上の選手も多かったとは言え、大学生に連敗。試合後、チームの空気は重かった。合宿初日、選手たちにここで自分の力を証明することを求めていた影山監督は試合後、所属チームでより藻掻いて、自分の力を証明し、出場機会を勝ち取ることを期待した。

「自分を証明するための奮闘、踏ん張りをどれだけチームでできるかだと思うんですよ。空回りもするでしょうからね。昨日、内田(篤人ロールモデル)コーチのミーティングでもありましたけれども、自分の思っている100%ではなくて、もっともっと出せるんだというところに、踏ん張って欲しい。毎日100%出すために、自分の力をチーム内で確立するために、そういう努力は誰もあるハードルだと思いますので、越えて欲しいですね」。

 合宿中の練習で、選手たちは求められたことへの対応力の高さを発揮。練習試合でも呼吸を合わせて距離感を掴み、個性を発揮するなどタレントたちが力を示していたことも確かだ。だが、チームでのハードルを乗り越えなければ、彼らが目標とするような成長を遂げることや、24年パリ五輪のピッチに立つことはできない。そのことを再確認した選手たちは、まず練習で現時点での100%を超えるような努力を続け、チャンスを掴む。

(取材・文 吉田太郎)

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