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國學院久我山を後半AT弾で撃破!初めての全国まであと1勝の駿台学園は、いつでも自然体を貫く

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難敵を下して笑顔がこぼれる駿台学園高の選手たち

[6.12 インターハイ東京都予選準々決勝 國學院久我山高 1-2 駿台学園高]

 もう時計の針は所定の80分を回っていた。後半は一転して守勢に回っていた中で、何とか手にしたCK。左からFW鶴岡飛嘉(3年)が丁寧にボールを蹴り込むと、「キッカーの鶴岡と、ニアとファーどっちに蹴るかのサインを打ち合わせしていたんです」というDF竹富皓大郎(3年)がニアに飛び込む…… 12日、インターハイ東京都予選二次トーナメント準々決勝、國學院久我山高駿台学園高が激突したゲームは、駿台学園が後半アディショナルタイムの決勝弾で2-1と勝ち切り、初めての全国大会出場へまた一歩前進した。

 前半は完全に駿台学園ペース。5分にFW大熊悠希(3年)と鶴岡が連続シュートを放ち、どちらも國學院久我山のGK村田新直(3年)のファインセーブに阻まれたものの、この2トップの推進力は可能性十分。とりわけ中学時代はフットサルで全国大会出場経験もあるという大熊が、抜群のキープ力で基点を作り、SBも含めたサイドアタックからチャンスを量産していく。

 対する國學院久我山は、なかなかテンポが上がらない中で、13分にMF森次結哉(3年)のパスから、FW塩貝健人(2年)がゴールネットを揺らすも、ここはオフサイドの判定。FW安田修都(3年)のドリブルは脅威となっていたが、周囲との連携がなかなか重ならない。

 すると、先制点が記録されたのは33分。右サイドでの崩しから、ラインを割りそうなボールへ懸命に走った大熊が「追い付かないかなと思ったんですけど、気持ちで上げました」というクロスを中央に送ると、MF梅原壮太(3年)のヘディングがゴールへ飛び込む。「ハーフタイムに帰ってきた時にはアイツらは『やれる』と。『結構自分たちがボール持てるじゃん』みたいな。ちょっと自信を持って帰ってきた感じはありました」とは大森一仁監督。攻勢そのままに駿台学園が1点をリードして、最初の40分間は経過した。

 一瞬で牙を剥いたディフェンディングチャンピオン。後半4分。右サイドでの連携から、FW高橋作和(2年)がクロスを上げ切り、いったんは駿台学園ディフェンスもかき出したものの、いち早くボールを収めた安田は右足一閃。GKも動けないコースを突いた軌道が、ゴールネットへ突き刺さる。10番が見せた意地の同点弾。國學院久我山がワンチャンスで追い付いてみせた。

 一気に突き放したい國學院久我山は交代カードが躍動。6分にはここも高橋の右クロスから、途中出場のFW山脇舞斗(1年)のシュートは、駿台学園のGK内堀詩音(3年)がファインセーブで回避。20分にもやはり途中出場のFW小松譲治(3年)が直接狙ったFKは、わずかにゴール右へ逸れたものの、際どいシーンを作り出す。

 苦しい時間の続く駿台学園だったが、「『久我山さんはオマエらの想像の3倍上手いぞ』ってずっと言ってきましたし、ああいう失点は絶対あるかなと思っていたので、アレでまたアイツらが締まったのは良かったかなと」とは大森監督。CBの竹富も「『久我山の方が上手い』とは最初から言われていて、そこで絶対走り負けちゃいけないということで、練習でも走ってきたので、それが少しは出たのかなと思います」と話したように、最後の局面ではよく走り、身体を投げ出し、決定的なシュートは打たせない。

 延長突入濃厚の後半アディショナルタイム。「実はずっとレギュラーで出ていた子なんですけど、なんと体育のリレーの授業で足首を捻挫しまして。何とか復帰させて、彼はウチの武器だったので、後半に苦しくなったら行くというのは言っていて、『もうオマエの足がちぎれようが、折れようが、行ってこい』という形だったんですけど。訳わからないですよね(笑)」と大森監督が期待を持って途中投入したMF小林嘉生(3年)がドリブルで仕掛け、CKを獲得する。

 キッカーの鶴岡が送ったサインは“ニア”。「あの場面で決めなきゃヤバいという所でしたね」と笑った竹富がそのニアで軌道を変えたヘディングは、ゴールネットへゆっくりと吸い込まれる。「僕は完全に延長のことを、『あと3分か。次はどうしようかな』と考えちゃっていたので、子供たちに感謝ですね。ビックリ。凄いわ。あそこでコーナーを獲ってくるとは思わなかったし」と指揮官も驚く決勝弾は40+2分。駿台学園が前回大会の東京王者を劇的に振り切り、準決勝へと駒を進める結果となった。

 大森監督が就任した2013年以降、7試合目にして初めて國學院久我山のトップチームに、公式戦で勝利を収めた駿台学園。ただ、特に前半の40分間は明らかに彼らの時間帯であり、しっかり2得点を奪って勝ち切ったことからも、この1勝が決してフロックではないことは証明されている。

 やはり、駿台学園にとって1つの転機は3年前の代。関東大会予選でファイナリストまで上り詰め、選手権予選でも西が丘で行われた準決勝まで進出した。当時は駿台学園中の3年生だった竹富も、「西が丘には練習試合で行けなかったんですけど、どうしても見たかったのでYouTubeで後から見ました(笑) そこから駿台が全国にも名を知られたという感じで、先輩たちが勢いを付けてくれたのかなと思います」と言及。その2年後に当たる昨年の選手権予選でも、再び西が丘のピッチを踏んでおり、チームとしての目線が確実に上がっていることが窺える。
 
 全国大会が懸かるゲームは、同校にとっても未知の世界。「想像ができないというか、3年前に関東大会に行った時も、想像なんてしていなかったので。でも、皆さんが『1回行くと世界が変わるよ』と言うので、それは行ってみたいとは思いますけど、次の準決勝がまたありますから。選手はよく頑張ってくれているので、全国ねえ。もうあと1個ですもんね。いやあ、1週間で冷静になって考えていきたいと思います」といつも通りの“大森節”で、意気込みとも付かないような意気込みを語ってくれた指揮官だが、その雰囲気に騙されてはいけない。試合中にピッチへ送る指示を見れば、携えている野心ははっきりと滲み出ている。

「入学当初から絶対に全国に出たいと思っていて、それが本当にあと一歩という所に来て、ちょっと興奮状態ですね。次の相手も倒して、全国に行きたいです」と言い切ったのはキャプテンの大熊。未知のゾーンを一気に突き抜け、全国大会という新たなステージへと飛び出す駿台学園の準備は、整った。

(取材・文 土屋雅史)
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