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森保J鎌田大地が明かす戦略的“移籍プラン”「目先ではなく将来」

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日本代表MF鎌田大地(フランクフルト)

 11日のキリンチャレンジカップ・セルビア戦(○1-0)後、停滞感のあった前半を振り返りつつ“縦への速さ”の重要性を力説していた日本代表MF鎌田大地(フランクフルト)。カタールW杯アジア2次予選・キルギス戦を翌日に控えた14日の取材対応でも、あらためてこの話題に言及し、森保ジャパンでのプレービジョンを説明した。

 セルビア戦後のオンライン取材で「前半からもっとしっかりプレーするべきだったと思う」と指摘した鎌田。その際には「前からプレスをかけてボールを取った瞬間、ファーストボールを前に付けられればビッグチャンスになるシーンもあった。取って落ち着いちゃうと、スピーディーな攻撃ができなくなる」と振り返った上で「現代フットボールは前から良いプレスをかけて、できるだけ時間をかけずにゴールを奪うチームが多い。良い奪い方から良い攻撃につなげたいから、前から守備に行っている。前から行って、ボールを奪って、そこで落ち着いちゃったら、何のために前からプレスに行っているのか分からない」と課題を挙げていた。

 14日の取材対応では、この発言の意図は「僕が前に速くしたいというより、森保さんがやって欲しいことの一つ」であり、「僕の意見というより日本代表としてどうしたいか」を考えてのものだったと説明。加えて「全てが全て速いサッカーだと選手もしんどいし、ゆっくりする部分と速くする場面は見極めないとダメ。前半にあれだけ引かれた相手に常に前にというのは難しいので、時と場合で使い分けは大事だと思うけど、カウンターできるタイミングで前に当てるのは大事」とプレービジョンを語った。

 こうした点については、チーム内でもコミュニケーションが進んでいる様子。13日の取材対応ではMF守田英正(サンタクララ)が最終ラインからの球出しに言及すれば、MF原口元気(ハノーファー)がバランスの取り方にフォーカスを当て、活発な意見交換が行われていることをうかがわせた。また森保一監督も14日のオンライン会見で「なんとなくうやむやにしながらうまくいかない状況があったりするより、どんどん意見をぶつけ合ってチームとしての戦い方の最善を見つけるのは非常にいいことだと思う」と歓迎していた。

 議論の中心の一人となっている鎌田が“縦への速さ”を強調するのは、最終予選の先にあるカタールW杯本戦を意識しているからだ。「まだW杯の出場権を取れていないので最終予選も考えないといけないけど、さらに上を見ていくなら、ボールを持てない時間が続くこともあると思う」と力関係を冷静に見つめた鎌田は「良い守備をしていいカウンターをすることが上のチームに勝つために大事になってくる」と力を込めた。

 そんな鎌田はこの日、自身のキャリアプランについても戦略的な一面を披露した。

「W杯で優勝できるチームの選手を見たら、4大リーグでスタメンを張っていても試合に出られない選手がいる国がいっぱいある。代表の選手がみんなそういったところでプレーしていたら、W杯で優勝を目指していけるし、僕たちはそういうチームを目指していかないとダメ」。

 個人個人のステップアップの必要性を説いたうえで、すでに日本代表に欠かせない存在となっている24歳は「自分が目指しているチームに辿り着けるように」という理念で行ってきたというキャリア選択を次のように振り返った。

「サガン鳥栖に入った時も1年目から試合に出て、違うチームに行ける可能性もあったし、自分自身もっといいチームでやりたい思いがあったので、移籍を望めばできていたと思うけど、そこで移籍して1年で出してくれないと思っていて、2〜3年プレーして外に出ると年的に若くないと思っていた。鳥栖でプレーして直接海外がいいと思った。ステップアップはできていたけど、夢のためにステップアップはしなかった」

「フランクフルトでも昨年もステップアップはできたけど、ちょっとのステップアップになると、そのチームで2〜3年プレーしたら僕の年齢的に27〜28になると思った。ちょっと我慢してフランクフルトでプレーして、そのまま上に行けたら一番早いと思って残った。目先のお金だったり、ちょっと格上のクラブに行くのもいいとは思うけど、僕の目指すところはそこじゃなかった。目先ではなく将来的なことを考えながらという感じだった」

「もちろん選手というのはサッカー界は流れが早いので、試合に出られないとすぐ評価も落ちるし、ある意味ギャンブルみたいなものだと思う。でも小さい頃からサッカーを続けている理由は自分の夢を追いかけてというものなので、。移籍に関してはそこの夢に向かって何が一番正しいのかなというのを考えるということが大事かなと思っている」。

 G大阪ジュニアユースからユースチームへの昇格を逃したが、東山高での活躍を経て、サガン鳥栖でプロキャリアをスタートした鎌田。シントトロイデンでの武者修行を経て、ドイツの強豪クラブで輝きを放っている背景には、そうした戦略的なキャリア選択があったようだ。

(取材・文 竹内達也)
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