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期待を裏切らない男。実践学園DF狩野希匠の重ねた努力が、苦しい時こそチームを助ける

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実践学園高が誇る努力家、DF狩野希匠

[6.13 インターハイ東京都予選準々決勝 早稲田実高 0-1 実践学園高]

 かつて、あるJリーグの監督経験者がこう語っていた。「一番使いたくなる選手は、努力を続けられる選手なんです。なぜなら、そういう選手は絶対に裏切らないから」。今年の実践学園高にも努力を続けられる男が、最終ラインにそびえている。「声をしっかり出して、集中力を切らさないということと、実践は1点を守り切るチームなので、そういう所をしっかり意識してプレーしました」。DF狩野希匠(3年=AZ‘86東京青梅出身)は、チームの期待を絶対に裏切らないセンターバックだ。

 2年生まではAチームとBチームを行き来するような状況だったが、3月のチーム振り分けでAチームのメンバーに指名され、意気込んでいた矢先にアクシデントに見舞われる。「3月終わりの最初の練習試合で、ケガをしてしまったんです」。

 目の前にあったチャンスを逃す格好に。しかも、チームは関東大会予選で東京制覇。「自分がケガをしている時に、どんどん関東で勝ち進んでいたのを見て、それは結構ツラかったですね」。その心中は察して余りある。

 ただ、それをただの悔しい経験で終わらせるような男ではない。「1か月半ぐらいケガが長引いてしまったので、そこでしっかり筋トレをしました。確かに悔しかったですけど、あまりショックで立ち直れないという訳ではなく、ヘディングの強化もしましたし、右足のジャンプが苦手なので、そこを強化したりしました。後悔はしていないですね」。パワーアップして戦列に復帰することを自身に誓いながら、ひたすら努力を積み上げる。

 復帰戦は関東大会の前橋育英高(群馬)戦。後半から投入された狩野は、1-4での敗戦の中にも、確かな光を見出していた。「全国レベルは甘くないなと思いました。僕自身のストロングポイントの1対1は負けなかったんですけど、ヘディングも相手は大きく返してくるんですよ。だから、僕たちはあまり返せなくて、手前に落ちちゃったりして、そこを拾われたりしたので、全体で言うとセカンドボールの処理、個人で言うとヘディングの迫力が足りないなと思いました」。強豪との対戦から、さらに多くのものを吸収し、それを練習に還元していく。

 今大会初戦となった準々決勝の早稲田実高戦。狩野は3バックの右CBとして、スタメンに指名される。「昨日の夜とか、ちょっとドキドキしていました(笑)」。念願のAチームで臨む公式戦のスタメン。最終ラインには小学生時代から選抜でチームメイトだったDF土方飛人(3年)が、右サイドのWBには「小中高と学校が一緒で、もう何も話さなくてもわかりますし、お互い良い所も悪い所もわかっているので、やりやすいです」というDF長友星澄(3年)が揃い、心強い仲間とともにピッチへ向かう。

 前半に先制点こそ奪ったものの、なかなか追加点は奪えず、相手の鋭い攻撃を受ける場面も。ただ、「誰がカバーをしっかりするとかを話し合って対応しましたし、1対1は得意なので、そこでは負けなかったです」と口にした狩野、DF雨宮竜也(3年)、土方で組んだ3バックとGK齊藤陸(3年)を中心に、最後まで堅陣は崩れず、無失点で80分間を終え、1-0で完封勝利。きっちり準決勝進出に貢献してみせた。

 どうしても全国大会で“再会”したい仲間がいる。「中学のチームが一緒だった人たちが、全国出場をもう決めていたりして、『全国で会いたいな』と思っています。立正大淞南の谷野峻と開志学園JSCの須崎健太には『おめでとう』は言いました」。AZ‘86東京青梅時代のチームメイトで、それぞれの道を選んでいった仲間と、晴れ舞台で対戦できれば、それ以上のことはないだろう。

「やっぱり試合に出るためには安定感が絶対に必要だと思うので、今日の試合をしっかり振り返って、前橋育英戦の負けもしっかり胸に刻んで、全国に行きたいです」。

 全国の懸かった大事な準決勝。きっとそのピッチには、狩野の姿があるはずだ。周囲の期待を裏切らない男。重ねてきた努力の全てをぶつけ、仲間と歓喜を共有するイメージは、もう出来上がっているに違いない。

(取材・文 土屋雅史)
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