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GK住友がPK戦で2本ストップ!粘り強さを武器に初芝橋本が和歌山4連覇!

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和歌山4連覇を果たした初芝橋本高

[6.13 インターハイ和歌山県予選決勝 和歌山北高 2-2(PK1-3)初芝橋本高]

 6月13日、令和3年度和歌山高等学校総合体育大会サッカー競技の部の決勝が行われた。決勝の舞台に立ったのは、和歌山北高初芝橋本高。両校のAチーム同士が対戦するのは、令和元年度の総体和歌山大会決勝以来。2年ぶりの顔合わせとなった。

 立ち上がりから積極的に攻め上がったのは、初芝橋本。7分には前線でうまくボールをキープしたMF荻野悟(3年)が逆サイドにクロスを出すと、MF坂口歩夢(3年)が頭を合わせて先制ゴールを奪った。

 その後も攻撃の手を緩めることなく相手ゴールに差し迫るも、バーを叩くなどして追加点を奪えない。流れが変わったのは、一度目の飲水後。押される一方だった和歌山北が落ち着きを取り戻し、21分に右サイドからMF豊川晋ノ介(3年)がボールを持ち上がると、最後はFW畠山大空(3年)がゴールに流し込む。和歌山北が追いつき、1-1で試合を折り返した。

 後半は、互いに一歩も譲らない激しい攻防を見せ、ゲームは拮抗。70分で勝敗がつかず、10分ハーフの延長戦にもつれ込んだ。

 延長前半5分、拮抗を崩したのは和歌山北。途中出場のMF森井保貴(2年)が右サイドから突破し、ゴール前でパスを受けた豊川が力強くゴールに蹴り込み、逆転に成功。しかし、わずか2分後、初芝橋本がFKのチャンスを得る。MF飯野朝陽(2年)が蹴ったボールをDF小野功真(3年)が折り返し、FW廣崎優輝(3年)が同点弾。再び試合を振り出しに引き戻し、勝敗はPK戦で決することとなった。

 PK戦では、和歌山北GK山下恭之(3年)が1本目を止めたものの、初芝橋本GK住友蓮(3年)が1本目と2本目を止め、勝負あり。初芝橋本が4連覇を果たした。

 PKを2本止めた住友は、「PKに対する苦手意識もないので、落ち着いて相手が蹴る方向を見ることができた」という。全国大会に出たい想いから徳島県から海を渡って初芝橋本に入学し、以前から「送り出してくれた両親には、全国大会に出て恩返ししたい」と語っていた通り、有言実行。自らの手で全国への切符を掴み取り、「父が泣きながら喜んでくれていたことが何よりもうれしい」と頬を緩ませた。

「僕たちは高さがあるわけではないし、高い能力があるわけではない。だからこそ、みんなで一丸となって戦えるチームになることができ、苦しい中でも勝利できることができた」と語ったキャプテンのDF岡本直大(3年)は、PKの最後の1本が蹴られるよりも先に、涙ぐむ様子を見せていた。

 そのとき涙ぐんでいたのは、「今日はキャプテンとして示すべき良いプレーができなかったけれど、自分がベンチに下がったあとも、みんなががんばってくれていた。改めて素晴らしい仲間に恵まれたと強く感じていた」からだという。「みんなに出会えたことが本当に幸せ」だと話すと、再び涙をこぼした。

 一方、非常に悔しい惜敗となった和歌山北の選手たちは気丈に表彰式に臨み、自ら初芝橋本の選手に歩み寄って健闘を称える姿も見られた。中村大吾監督は、「選手たちはとても粘り強く戦ってくれた」と称え、あと一歩及ばなかったことを受け「丁寧にボールを繋いだり、集中を切らさずに素早く反応したり、少しずつ足りなかった部分を拾い集めながら、選手権予選に向かってまた一から積み重ねていきたい」と語っている。

 これまで初芝橋本は、総体和歌山大会を4連覇したことが2度あったが、阪中義博監督自身は、冬も含めて4連覇するのは初めて。大会がなかった昨年も含めてしまえば、5年間に渡って夏の優勝トロフィーを守り続けていることになる。

「1つ壁を超えられた」としながらも、浮き足立つことはない。「勝ったから言えることなのかもしれないけれど」と前置きした上で、「和歌山北も近大和歌山も素晴らしいチームだった」と振り返った阪中監督。準決勝では近大和歌山のカウンターに圧倒されながら辛勝し、決勝ではすぐに同点に追いついたとはいえ和歌山北に逆転を喫した。

「すぐに冬がやってくる。いずれの学校もさらにレベルアップしてくるだろうから、どんな風に戦うことになるか。自分たちも気を引き締め、再び戦える日を楽しみにしている」と、さらに高いレベルで選手権予選を繰り広げることを誓った。

 初芝橋本は、前回大会で全国ベスト8となったことから、今年の総体ではシードがついて2回戦からの登場となる。県大会の準決勝・決勝の接戦でさらに磨き上げられた粘り強さを武器に「どんな相手であろうとも、自分たちらしく全力で走り、戦う」(岡本)。

(取材・文 前田カオリ)
●【特設】高校総体2021

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