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全員で考えながら戦い、強度高い守備貫徹。興國封じた大阪桐蔭がインハイ切符獲得!

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大阪桐蔭高が15年以来、5大会ぶりにインターハイへ

[6.12 インターハイ大阪府予選準決勝 興國高 0-1 大阪桐蔭高]

 令和3年度全国高校総体(インターハイ)「輝け君の汗と涙 北信越総体2021」サッカー競技(福井)大阪府代表の座を懸けた同予選準決勝が12日に行われ、興國高大阪桐蔭高が激突。大阪桐蔭が1-0で勝ち、5大会ぶり8回目のインターハイ出場を決めた。

 J注目のエースFW永長鷹虎(3年)とU-16日本代表候補FW宮原勇太(1年)の両翼、GK岩瀬陽(3年)らタレントたちを擁してインターハイ初出場を目指した興國の前に、“みんなで戦う”大阪桐蔭が立ちはだかった。

 前半から終始ボールを握っていたのは興國の方。5分には右サイドからカットインした永長が2人、3人とかわして左足を振り抜く。シュートはゴールを捉えたが大阪桐蔭GK薮中優希(3年)が反応し、クロスバーをヒット。前半の興國のシュートはこの1本だけだった。

 試合を通して印象的だったのが、大阪桐蔭の強度高いディフェンス。「足先だけで行かなくて、しっかり相手に対して体を預けていくことを常にやらせている」と永野悦次郎監督が説明したように、厳しく体ごと相手に寄せてボールを狩りに行く。一方、ミスもあってリズムを欠いた興國は、横パスやバックパスが増えてしまう。

 どこか重心の重い興國に対し、大阪桐蔭はゴールへの意識が高かった。10分には右クロスからMF溝口響(3年)が決定的なヘッドを放ち、20分にも右クロスをから溝口が決定機を迎える。興國はGK岩瀬のファインセーブで失点を免れていたものの、大阪桐蔭はボールを奪い取る回数を増やし、鋭い動きを連発していたFW室勇志(3年)中心のショートカウンターで相手ゴールへ向かい続けていた。

 迎えた31分、大阪桐蔭が先制する。右スローイン後の混戦で前を向いたMF大倉凜也(3年)がDFラインの背後へラストパスを通す。これに走り込んだFW高垣佑椰(3年)が距離を詰めてきたGKよりも一瞬速く右足で合わせて先制点。前半を1-0で折り返した。

 狙い通りの戦いを見せた大阪桐蔭だが、ハーフタイムには冷静さを欠いていた選手もいたという。永野監督はその点を厳しく指摘し、サッカー面での特別な指示は無し。「オマエらでどれだけ考えてプレーできるかや、と。その35分大事に戦えと挑ませました」。結果、後半は選手たちにより緊張感と集中力が生まれ、声がけが増えたことも勝因となった。

「マジメな子が多い。サッカーも勉強も頑張りたいという子が選んで来てくれる」(永野監督)という大阪桐蔭は、終始運動量の多かったMF五嶋亮太(3年)と大倉のダブルボランチやともに対人守備の強さを見せた朝山大輝(3年)と丹羽希(3年)の両SBら各選手が自分の役割を徹底。後半は興國がロングボールを増やしたことで奪い取る回数が減ってしまい、セカンドボールも回収されていたが、大きな隙を見せない。そしてゴール前へのボールは、ハードマーカーのCB小林柾輝主将(3年)やCB平田大翔(3年)が懸命に跳ね返していく。

 興國は後半、右SB武本射雅(3年)が攻撃の起点となって楔の本数を増やし、永長がワンツーからのシュートやPAへドリブルで切れ込むシーンもあった。だが、この試合のシュート数はわずか3本。大阪桐蔭MF柳秀聖(2年)の決定的なヘッドをGK岩瀬がビッグセーブするなど2点目を与えなかったが、パワープレーに出た終盤含めて最後まで1点を奪えなかった。

 学校近隣に位置している生駒山の中腹にサッカーグラウンドを持つ大阪桐蔭の選手たちは、コロナ禍でも“山ラン”の設定タイムを維持。また、ボールトレーニングの中でも体力強化を図ってきた成果を発揮した。

 今大会は、エースFW大野陽平(3年)と技巧派MF奥野龍登(3年)という攻撃のキーマン2人を怪我で欠いていたが、「誰かに頼らず、一人ひとりが自覚を持ってチームのために戦うということが少しできたかなと思います」(小林主将)。全員で自覚を持って戦い、勝ち取った全国切符だった。

 決勝で阪南大高に1-2で敗れ、大阪2位で出場するインターハイ。小林は「自分たちの特長である全員守備・全員攻撃にもう一度磨きをかけて、個ではなくチームでということをもう一度認識した上で、自分たちの賢く組み立てて、賢く守るというチームプレーを全国舞台でもできると証明したいです」と力を込めた。見事な戦いで“タレント軍団”を沈めた大阪桐蔭が、インターハイでもチームで強敵を上回る。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2021

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