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「『勝てたら良いね』じゃなくて、『絶対に勝つ』」。前回日本一撃破の相洋が神奈川準決勝も突破し、インハイ初出場!

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「絶対に勝つ」の思いを持って神奈川予選に臨んだ相洋高が全国初出場

[6.19 インターハイ神奈川県予選準決勝 湘南工科大附高 1-2 相洋高]
 
 相洋、悲願の全国初出場――。令和3年度全国高校総体(インターハイ)「輝け君の汗と涙 北信越総体2021」サッカー競技(福井)への出場権(2枠)を懸けた神奈川県予選は19日に4強が激突。湘南工科大附高相洋高との準決勝は相洋が2-1で勝ち、インターハイ初出場を決めた。

 神奈川県西部の小田原市に位置する私立校、相洋が歴史を塗り替えた。相模工大附高時代の87年以来となるインターハイ出場を目指した古豪・湘南工科大附の反撃を振り切って全国切符獲得。前回大会日本一の桐光学園高や日大藤沢高、桐蔭学園高など強豪ひしめく激戦区・神奈川に風穴を開けた。

 神奈川突破の最大の要因は、「絶対に勝つ」という思いの強さだった。相洋はこれまで桐光学園など全国区のチームに行く手を阻まれ続けてきたチームの一つだ。だが、今大会は準々決勝で前回日本一の桐光学園にPK戦で勝ち切った。

 綱島陽介監督は言う。「いつも惜しかったね、しょうがないよね、っていう、それはもういらないと。『勝てたら良いね』じゃなくて、『絶対に勝つ』という気持ちがないといけないよと。『絶対に勝つぞ』という思って、あの雰囲気を持ってやっているので、それがきょうも粘り強くやれた要因だったと思います」。この日は雨中の激闘。注目FW松森堅誠主将(3年)を筆頭に個々の技術力高い湘南工科大附に攻められる時間が長かったが、「絶対に勝つ」の強い気持ちで上回った。

 相洋はこの日、最高の形で大一番のスタートを切った。開始1分、攻守に渡って存在感を放った左SB後藤康介主将(3年)のFKからCB岩野拳士(3年)が先制ヘッド。さらに7分にも後藤のCKをファーサイドの185cmCB山口聡三(3年)が合わせて2-0と突き放した。

 入りで差をつけられた湘南工科大附も反撃。25分には相手GKの位置をよく見た松森がミドルレンジから右足ループシュートを決めて1点を返す。スーパーゴールで勢いづいた湘南工科大附は、さらに攻撃を加速。PAでもテクニックを発揮していた松森や技巧派のボランチコンビ、MF村岡遊(2年)とMF三觜真生(2年)を中心に連動した崩しでゴールに迫る。

 だが、相洋の守りは堅い。特に左SB後藤は抜群のスピードを活かして相手のサイド攻撃に蓋をし、CB山口は相手の仕掛けを封じるたびに雄叫びを上げていた。逆にオープン攻撃から、攻守に利いていたMF松澤好輝(2年)のテクニックやMF高橋雷(3年)のスピード、後藤のスプリント力を活かして攻め返して見せる。

 後半立ち上がりのピンチをGK関野海斗(3年)の好守によって凌いだ相洋だが、その後も我慢の時間帯が続いた。湘南工科大附は各選手がポジションを取りながら、パスワークでの崩しに繰り返しチャレンジ。それでも相洋は各選手のスライドへの意識高く、サイドへ追い詰めて相手ボールを引っ掛けていく。

 時間が経過するに連れて、湘南工科大附の攻撃がやや一発狙いに。前へ急ぎすぎるあまり、効果的な攻撃の回数が減少してしまう。対して相洋は冷静に対応。奪ったボールを正確に1タッチで繋ぐなど、相手に連続攻撃を許さなかった。

 湘南工科大附は、DF小湊隆太郎(3年)やDF三浦翔遼人(2年)に支えられて反撃を続けるもゴールが遠い。気持ちの強さだけでなく、選手交代しながら最後まで走り切る体力と堅守を見せつけた相洋が2-1で勝利。湘南工科大附の室井雅志監督が「7分間で2失点が全て。(経験の無さや)不安定さがモロに出てしまった」と残念がった一方、歴史を塗り替えた相洋の後藤は「ずっと目標にしていたところだったので、全員で気持ちを一つにして勝ち取れたので良かったです」と喜んだ。

 相洋に赴任して18年目という綱島監督は、「嬉しいの一言です。素直に嬉しいです。頑張ってくれた選手に感謝したいですし、主力選手が出ていない中でも代わりに出た選手たちが本当に頑張ってくれた。インターハイ前から一体感というテーマでやっていたので、スタンドの選手も含めてチーム全体で一体感を出せて、チーム全体で勝てたと思います」と選手たちに感謝した。

 メンバーの半数近くは湘南ベルマーレの育成組織出身。桐光学園クラスの強敵に勝つための基準を持って、アグレッシブな守備からゴールに向かう“湘南スタイル”を磨く一方、バス移動を含めた土日の連戦を重ねるなど「絶対に勝つ」ために施してきた準備も大きかった。

 そして、悔しい経験もしながら意識を変え、ピッチ内外で自立してきた選手たち。綱島監督は「桐光さんにも延長で追いつかれて、持って行かれるかと思ったんですけれども、自分たちでしっかりと集まって話をして、そこから立て直してPKで勝ってと、人間的な部分で自立が凄く大きかったと思います」と頷く。例年と大きく変わらないという戦力だが、積み上げてきたものや思いの強さ、選手の心の成長もあって掴み取った全国切符だった。

 チームは、怪我明けで出場時間が限られたFW山崎大翔(3年)ら復帰する主力級を加え、再び競争。よりボールを握ることにもチャレンジするなど貪欲にチーム力を高め、「絶対に勝つ」の思いを持って初の全国に挑む。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2021

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