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とうとう獲得した“全国ベスト4”への挑戦権。実践学園が一体感で目指す新たな歴史の幕開け

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実践学園高は3大会ぶり4回目の全国へ!

[6.19 インターハイ東京都予選準決勝 駿台学園高 1-3 実践学園高]

 勝利の瞬間。大はしゃぎするというよりも、各々が静かに喜びを噛み締めるような姿が印象的だった。絶対的なキャプテンを務めるDF土方飛人(3年)は、その理由をこう分析する。「全国出場は自分としてもマストというか、1年の頃から全国ベスト4を目指していましたし、やっぱり『ここで負けていられないな』という気持ちは試合前からあったので、噛み締める感じで喜んだという感じですね。実際はメチャメチャ嬉しいですけど(笑)」。19日、インターハイ東京都予選二次トーナメント準決勝、駿台学園高実践学園高が激突した一戦は、先制しながらも一度は追い付かれた実践学園が、3-1と駿台学園を突き放して、3大会ぶり4回目のインターハイ出場を勝ち獲った。

 前半は拮抗した展開に。駿台学園も、実践学園も、比較的慎重にゲームへ入る。「ちょっとこの1週間は横綱相撲じゃないんだけれども、受け身になってしまうような感じで、積極性が欠けていると。彼らの良さはもっと積極的にゴール前に出ていくとか、縦に速い攻撃をするとか、そういう所なんですけど、それが表現し切れていなかったかなと思います」と深町公一監督も話したように、実践学園は準々決勝で負傷したFW清水大輔(3年)の欠場を受けて、最前線にFW川上宗一郎(3年)を送り込むも、なかなかいい形のアタックが繰り出せない。

 ただ、先制点は意外な形で転がり込む。前半28分。実践学園はMF渡辺創太(3年)が、高い位置で相手DFに素早いプレスを仕掛けると、戻したバックパスをGKは処理し切れずに後逸。ボールはゴールネットへゆっくりと収まる。にわかには信じ難いようなオウンゴールで、実践学園が1点のリードを手にして、最初の40分間は終了した。

 ハーフタイム。大森一仁監督の強烈な檄が、駿台学園の選手たちに飛ぶ。ここまで勝ち上がってきた意味を、この舞台に立つことの意味を、激しく、感情的に、選手たちへ問い掛ける。これが結果的に奏功。後半10分。左サイドでボールを持ったFW鶴岡飛嘉(3年)が、右足の正確なクロスをファーへ送り届けると、飛び込んだMF村上豪(3年)のヘディングは、逆サイドのゴールネットを捉える。1-1。たちまちスコアは振り出しに引き戻される。

 決してうまく行っていない流れの中で、追い付かれてしまった実践学園。だが、土方は冷静に戦況を見つめていた。「自分としては焦らずに、『1-1になっただけだ』という考え方で、追い付かれたんですけど、今までの経験上もそこを跳ね返してきた試合もあったので、『冷静にやろう』と」。ベンチも相次いで交代カードを切りつつ、次の1点への道筋を見極めていく。

 28分。準々決勝は出場機会を得られず、「(渡辺)創太が試合を決めて、マン・オブ・ザ・マッチに選ばれていたんですけど、創太は同じ養和出身同士ですし、自分もチームの信頼を勝ち取るために『負けてられないな』と思いました」という右ウイングが魅せる。渡辺のパスを引き出したMF入江友規(3年)は、右からカットインしながら「左足のシュートやロングキックは結構練習しているので、シュートは良い弾道で行きましたね」と振り返ったように左足一閃。強烈な弾道のボールは、右のポストを叩きながら、ゴールへ飛び込む。当初はセンターバックとして入学してきたFWが、得意の形から貴重な勝ち越し弾。実践学園がまた一歩前に出る。

 再び追い掛ける展開を強いられた駿台学園は、攻撃的なカードを次々に投入するも、頼みのFW大熊悠希(3年)にボールが入らず、フィニッシュまで取り切れない。すると、80分には実践学園に追加点。この日の登録メンバー23人の中で唯一の2年生、FW牧山翔汰(2年)は入江のパスでラインブレイクすると、「トラップはミスしてしまったんですけど、冷静に1枚かわして、左足で打つことができました」と振り返るファインゴールを叩き込む。

「2年生で伸びてきている子がいるので、先週と今回少しずつチャンスを与えた中で、基本的にはウチは3年生のチームなんですけど、フレッシュな子が結果を出してくれたので、これからまた楽しみだなと思っています」と深町監督も相好を崩した、2年生ストライカーの牧山が挙げた追加点で勝負あり。実践学園が3-1で勝利を収め、関東大会予選に続いて、東京都の代表権を手に入れた。

 全国出場の懸かったこの大事な試合を前に、指揮官はチームの雰囲気に緩みを感じていたという。「ちょっと2、3日前にチームの雰囲気が良くなかったので、キャプテンの土方を呼んで話をして、『インターハイの大きさというものを、もう一回再確認しようね』という所で、投げ掛けるような形で、チームを締める所を任せて、アドバイスをしたんです」。

 土方を中心に、チームは改めて決戦へ向かう気持ちを整え直し、自分たちが掲げてきた目標を確認し合い、この日のキックオフを迎えていた。「高校生なのでそれが良いプレーに繋がるかどうかは別としても、とりあえず今日のキックオフの時間には、みんなが心と身体の良い準備はできたと思います」と深町監督も雰囲気の改善を評価。グループの一体感と、志す目標を達成したいと強く願う想いは、今年の実践学園の大きな武器と言って差し支えないだろう。

 前述したように、準々決勝はベンチで過ごし、この日は決勝ゴールを記録した入江が「まだ自分は全然スタメンとかという感じじゃないんですけど、ここからまたメンバー争いがどんどん激しくなっていくと思います」と話したように、同じ東京の代表権を勝ち獲った関東大会予選の準決勝と、この日の試合だけでもスタメンは4人が入れ替わっており、牧山のような下級生もきっちり結果を残すなど、全国大会に向けた熾烈なメンバー選考は、既に始まっていると言っていい。

「関東大会で味わったような悔しさを今度は跳ね返せるように、練習の中から集中して、みんなでレベルアップして、全国ベスト4を叶えられるようにしたいですね」(土方)。3年生が全員で共有してきた目標への挑戦権を得た実践学園が、真剣に“全国ベスト4”を狙って、福井の地に乗り込む。

(取材・文 土屋雅史)
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