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[MOM3502]実践学園MF入江友規(3年)_ここ一番は絶対に逃さないアタッカーが、磨いてきた形から全国決定弾!

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殊勲の決勝弾を叩き込んだMF入江友規(12番)にチームメイトが駆け寄る

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[6.19 インターハイ東京都予選準決勝 駿台学園高 1-3 実践学園高]

 この男、秘かに大事な試合での主役を虎視眈々と狙っていたようだ。「準々決勝は(渡辺)創太が試合を決めて、マン・オブ・ザ・マッチに選ばれていたんですけど、創太は同じ養和出身同士ですし、自分もチームの信頼を勝ち取るために『負けてられないな』と思っていました」。文句なしのマン・オブ・ザ・マッチ。実践学園高の話術巧みなアタッカー、MF入江友規(3年=三菱養和SC調布ジュニアユース出身)のゴラッソが、チームを全国の舞台に導いた。

 歓喜に沸くチームの中で、人知れず失望を味わっていたという。今大会の準々決勝、早稲田実高戦。1-0でチームは勝利を収め、大きな目標だった全国大会出場に王手を懸ける。だが、ベンチに入っていた入江に、出場機会は最後まで訪れなかった。

「メチャクチャ悔しかったです。フォーメーションも3バックだったんですけど、シャドーの位置で前日にフォーメーション練習で代わって入ったりしていたのに、結局出られなかったので、そこは自分の力不足だということで…… 自分としては終わったかなと思ったんですよね。『もう出られないのかな』と思って、結構そういうことを考えちゃうタイプなんですけど」。

 もちろん指揮官にも、明確な意図があったことは言うまでもない。「入江はもちろん先発で行く子なんですけど、ちょっと関東大会で不甲斐ない結果が出たので、先週は外したんです。ただ、彼は高さもあるので、今日は真ん中と右に競り合いのポイントを作って、入江が落としてそこに抜けていくイメージと、入江は守備の意識があるので、相手のサイドの選手に対してあの子が下がって、右は長友(星澄)と2人で守備的にやってもらって、笹原(勘太郎)を左サイドの2トップみたいな形で、左上がりみたいな形でやろうかなと」(深町公一監督)。

 大事な準決勝でのスタメン復帰。燃えない訳がない。「自分としては、今日の試合は『自分が決めてやる』という強い気持ちで戦うことができました」。その想いを証明する格好の場面が、1-1の同点で迎えた後半28分に到来する。

 中学時代からの盟友、MF渡辺創太(3年)のパスを右サイドで引き出すと、頭の中にハッキリとした道筋が浮かび上がる。イメージはマンチェスター・ユナイテッドのFWメイソン・グリーンウッド。右利きでも、左足を巧みに使う世界的な若きアタッカーの姿を自らに重ね合わせ、中央へ切れ込んでく。

「左足のシュートやロングキックは結構練習しているので、シュートは良い弾道で行きましたね」。思い切り良く左足で蹴り込んだボールは、右ポストの内側を叩いて、ゴールネットへ吸い込まれる。「シュートは得意なんですよね。右でも左でも蹴れるので、アレは得意な形です」と指揮官も評価を口にした重要な勝ち越し弾は、そのまま決勝ゴール。悔しさを味わった1週間前から一転、磨いてきた形でゴールを射止め、鮮やかにヒーローの座をさらってみせた。

 中学校3年生から始めたセンターバックで実践学園の門を叩いたが、「同じポジションにヒジ(土方飛人)とか凄いヤツばっかりいるので、『これはオレが出ても無理だな』と」、自らポジション変更を決意。2年生のある日の練習で、突如としてフォワードのポジションに入ってしまう。

「監督に『オマエ、前やるのか?』と言われて、『やります』って。そこからスタートしました(笑)」。明確に覚えているという練習試合で、いきなりハットトリックの大活躍。「その時から『アレ、フォワードで行けんじゃね?』となって、T3(東京都3部)リーグも最初の方は全然試合に関われなかったんですけど、初めて使われた試合で1点獲れたんです」。父親からも自身の強みとして指摘されていた大事な所でゴールを奪える能力を遺憾なく発揮し、攻撃的な選手という立ち位置を確立していった。

 気の置けないチームメイトとの連携も熟成されつつある中で、周囲への感謝も携えて、いつもピッチに立っているという。「(関東大会予選決勝の)國學院久我山戦は前半から全然動けなかったんですけど、後半に小学校がバディーSCで一緒だった稲場(雄斗)からパスをもらって、アシストできましたし、自分は結構仲間に助けられている部分が多いので、しっかり全国でも仲間のパスを生かしていけるように、頑張っていきたいと思います」。

 周囲を生かし、自分が生かされる中で、自分も輝き、周囲を輝かせることもできる男。待ちに待った全国のステージでも、ここ一番は絶対に逃さない入江が何か大きなことをしでかす可能性は、決して低くなさそうだ。

(取材・文 土屋雅史)
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