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メンバー唯一の2年生が大仕事。実践学園FW牧山翔汰は自身も驚くゴラッソで確かな存在感

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メンバー唯一の2年生、FW牧山翔汰(23番)が3点目を決めて満面の笑顔

[6.19 インターハイ東京都予選準決勝 駿台学園高 1-3 実践学園高]

 あるいは、そのパーフェクトに近いドリブルから決め切ったゴールに、一番驚いていたのは本人かもしれない。「自分の中でも結構良いゴールだったと思います。いつもあんな冷静にできないんですけど。ちょっと運が味方してくれたかなと。今日はシュート練習から入る気が全然しなくて。ゴールが入った時には、もう鳥肌が立ちました」。実践学園高の準決勝に臨んだメンバーの中で、唯一の2年生。FW牧山翔汰(2年=国分寺第五中出身)が、同級生の分も準決勝のピッチで躍動してみせた。

 そもそも、この春までは先輩たちと練習したこともほとんどない状況だった。「コロナの関係で、去年からずっと3年生だけというカテゴリーでやっていて、何かが2年生で起こっても、3年生は動けるという形で、トップチームは3年生だけで組んでいたんです」(深町公一監督)。牧山も同級生たちだけで、日々の練習に取り組んでいた。

 トップチームへの“昇格”が決まったのは、関東大会予選で東京制覇を達成した直後ぐらいのこと。そのレベルの差もよくわからないままに合流すると、すぐに3年生の凄さを突き付けられる。「3年生が強いというのは聞いていたんですけど、関東も獲って、『やっぱり強いのかな』という感じで入ってみたら、もう練習から全然違って、衝撃を受けました。プレスのスピードとか、パス1本の精度とかも全然違って、自分たちは甘いなと思いましたね」。

 少しずつ自信を失いつつあった牧山。「メンタル的にグッと来て、1つ引き気味になっちゃって、最初の方はメンバーを外れていましたし、練習試合とか何回かやったんですけど、得点がなかなか獲れなくて……」と振り返りながら、それでも懸命に食らい付いていく姿勢が評価され、まずは準々決勝のメンバー入りを果たすと、最後の5分間で公式戦のピッチを踏みしめる。

 迎えた準決勝。全国出場を巡るこの重要な一戦でも、アップエリアの牧山にベンチから声が掛かる。後半18分。1-1という同点の局面で、前線へと送り込まれる。自分にできることはわかっている。不思議と腹は据わっていた。「自分はもともと中体連出身で上手くないので、前からアグレッシブにプレスに行って、相手の背後を取って、相手に身体をぶつけて、と、相手からしたら“うざい”ような所で評価してもらっているので」。

 28分にMF入江友規(3年)の勝ち越し弾で1点のリードを奪ったものの、わずか1点差という展開の中で、2年生ストライカーに千載一遇のチャンスがやってくる。アディショナルタイム突入目前の40分。右サイドで入江からボールを受けた牧山に、一瞬でスイッチが入る。

「自分の良さの背後への動きというのが効いて、相手の背後でボールを受けることができて、トラップはミスしてしまったんですけど、冷静に1枚かわして、左足で打つことができました」。力強く中央へ切れ込みながら、華麗なステップでマーカーを剥がすと左足一閃。ボールはゴールネットをきっちり揺らす。試合を決定付けるゴラッソ。「ちゃんと落ち着いて、かわしてシュートを打って、まあ楽しみな選手が出てきたかなと思っています」と深町監督も高評価を口に。限られた時間で結果を出す“星”を、チームメイトにもしっかりと印象付けることにも成功した。

 牧山には意識せざるを得ない、同い年のフォワードがいる。「自分の代にジェフユナイテッド千葉に行ったアジズブライアン瑛汰がいて、東京の中体連選抜で一緒にフォワードをやっていて、結構仲が良いんですけど、この間はU-17の代表キャンプに行っていて、結構刺激を受けていますし、意識はしています。一緒にやっていた人が、気付いたらあんな選手になっているので、負けたくないですね」。そのためにも、まずはこのチームで立ち位置を確立することは、大きな目標になっている。

「先輩はみんな上手くて、ここで点を決めたからといって、確実に全国のメンバーに入れるわけではないので、全国まで結構期間がありますし、また練習から頑張って、もっと自分の良いプレーを出したいなと思います」。

 3年生の中に混じった、シンプルな光を帯びる原石のような2年生ストライカー。牧山のさらなる成長が、そのまま“全国ベスト4”を真剣に狙う実践学園の、大きな力になることに疑いの余地はない。

(取材・文 土屋雅史)
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