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帝京三が延長V!出られなかったライバルたちの思いも背負って全国へ:山梨

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帝京三高が3大会ぶり11回目のインターハイへ

[6.20 インターハイ山梨県予選決勝 帝京三高 2-1(延長)韮崎高]

 出られなかったライバルたちの思いも背負って全国に臨む――。令和3年度全国高校総体(インターハイ)「輝け君の汗と涙 北信越総体2021」サッカー競技(福井)山梨県予選決勝が20日に開催され、3大会ぶりの優勝を狙う帝京三高と連覇を目指す韮崎高が激突。延長後半アディショナルタイムにFW細田皐太(3年)が決勝点を決め、帝京三が2-1で勝った。帝京三は11回目のインターハイ出場。全国大会は8月14日に開幕する。

「やりたくてもできないチームもあるんだから、その分の責任も負わないと。やれるだけありがたいと思って、死ぬ気でやりなさい」。帝京三の相良和弘監督は決勝の試合前、選手たちにそうメッセージを送ったという。

 山梨県予選は、準々決勝で帝京三と対戦予定だった昨年度選手権優勝校・山梨学院高、準決勝で韮崎と対戦する予定だった強豪・日本航空高がいずれも出場を辞退。誰かに責任があった訳ではない。だが、彼らは戦うことができないままインターハイ出場への道を閉ざされている。

 そのような状況を目の当たりにし、人の気持ちをより考えたり、自発的に準備したりするなど「大人になった」(相良監督)という帝京三。この日、一週間ぶりの試合だった韮崎に対し、帝京三は前日に続く2連戦だったが、責任感を持ってピッチに立ち、最後まで走り抜いて全国切符を勝ち取った。

 前半、韮崎は注目エースFW鈴木斗真(3年)とFW坂本陸仁(3年)のスピードを活かしてDF背後を狙う攻撃。高い位置でスローインを獲得し、CB岡田聖亜(3年)のロングスローでゴール前のシーンを作り出す。17分にはロングスローから坂本、19分には鈴木の仕掛けからMF赤池駿(2年)があわやのシュートを打ち込んだ。

 一方、帝京三はDFラインでのビルドアップから制空権を握っていた細田を起点とした攻撃。高い位置でボールを拾い、FW趙浚杓(3年)の仕掛けやコンビネーションなどからゴールを目指した。拮抗した展開が続く中、帝京三が34分に先制点を奪う。CB白鳥稜汰主将(3年)のロングフィードに趙が競ると、そのこぼれを拾ったMF小林凜太郎(3年)がドリブルから左足ミドル。ファインショットをゴール右隅へ突き刺し、1-0とした。

 先制した帝京三は、後半立ち上がりもシンプルな攻撃からチャンスを作る。7分に小林の左クロスから細田が頭でゴールを破ったシーンは紙一重の差でオフサイド。だが、白鳥とCB岩川アレクシス駿(3年)ら守備陣が手堅い守りを続け、ロングスローも投じる小林や前線で身体を張る細田を中心に2点目を目指した。

 一方の韮崎もMF佐藤寧峰主将(3年)や岡田を中心に集中力を切らさずに守り、反撃を続ける。21分には、3連続ロングスローから鈴木が左足シュート。また交代出場のMF外川翔瑛(2年)のドリブル突破からチャンスを作った。ゴール前で隙を見せない帝京三に跳ね返されていたものの、諦めずに攻め続けた韮崎は40+1分に意地の1点を奪う。左サイドから鈴木が鋭いドリブルで仕掛け、こぼれ球を交代出場FW熊谷顕士(3年)が右足でゴールを破った。

 土壇場で追いついた韮崎が勢いそのままに前へ。後半終了間際、延長戦と相手を押し込み、岡田のロングスローやカウンターから相手ゴールを脅かす。帝京三も延長後半2分、交代出場の1年生MF辻友翔の右クロスから小林が決定的なヘッド。ともに体力的にキツい中で走り、戦い続けた好勝負は延長後半ラストプレーの劇的な決勝点によって決着がついた。

 10+2分、帝京三は右サイドで辻がFKを獲得。これを左SB安原太洋(3年)が右足で蹴り込むと、ファーサイドで構えていた細田が頭で合わせる。ボールは韮崎DF、GKの間を抜けてそのままゴールネットへ吸い込まれた。「みんなの得点だと思った」という細田を先頭に、帝京三イレブンが仲間たちのいるベンチ方向へ向かって歓喜のダッシュ。その最中に試合終了の笛が鳴った。

 帝京三は過去2年の選手権予選準々決勝でいずれも山梨学院に敗戦。今年も新人戦、関東大会予選で宿敵に連敗している。打倒・山梨学院を目指してきたが、直接対決は叶わず。それでも、ライバルや支えてくれた仲間、家族のために「『自分たちは勝たないといけない』、とノートに書いていたヤツは結構いました」(相良監督)。入学後、勝ち抜く経験が少なかった帝京三の選手たちは決勝で試合をコントロールできた訳ではない。課題もあった。それでも、前を向いて自分たちの全力を100分間出し切った。

 その選手たちへ向けて、指揮官は「良く頑張った」。また白鳥は「この2、3年、ベスト8の壁が大きくて、越えられなくて、(今回は)納得する形ではなかったんですけれども、ベスト8を越えて、(山梨)学院がいないならば、ウチが優勝しなければダメだと思っていたのでここで一個まず取れたことは本当に嬉しいです」と頷いた。

 全国大会では、山梨県代表としての責任感を持って戦う。白鳥は「出られないチームだったり、応援してくれるメンバー、親、コーチの気持ちも表現できたらと思います」と全力で戦い抜くことを誓い、細田は「優勝はめちゃくちゃ嬉しいんですけれども、(打倒・山梨学院の思いがあったので)ちょっと心残りのある全国出場かなという気持ちがあります。(ただし) 出たくて出れないチームがいるので、山梨県代表として、そこを背負って出場して、全国優勝したいと思います」と力を込めた。この日、一つ自信となる白星も得た帝京三が、開幕までに少しでもレベルアップしてインターハイに臨む。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2021

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