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[MOM3505]前橋育英GK渡部堅蔵(3年)_“堅牢”な鉄のカーテンを担う守護神が、苦手のPK戦で勝利の立役者に!

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前橋育英高の守護神、GK渡部堅蔵はPK戦で桐生一高4人目のキックをストップ!

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[6.20 インターハイ群馬県予選決勝 前橋育英高 0-0(PK3-1) 桐生一高]

 決してPKが得意ではないことは、自分が一番よくわかっている。だが、チームの命運が懸かったこの日の“11メートル”の果たし合いに向かう時には、不思議と自信がみなぎっていた。「もう『チームのためにやろう』という感じでした。自信はありましたね」。上州のタイガー軍団、前橋育英高の守護神を任されたGK渡部堅蔵(3年=前橋FCジュニアユース出身)の心は、PK戦を前にしっかり整っていた。

 お互いが県内最大のライバルと認め合う桐生一高と対峙した、インターハイ予選決勝。100分間を終えた時点で、相手のシュートは7本。2度のクロスバー直撃こそあったものの、際どいボールが枠へ飛んでくることはほとんどない中で、「ディフェンスラインと自分で集中して、1本をやられないというのは意識していました」と渡部。中学時代からの盟友でもあるキャプテンのDF桑子流空(3年)とともに、ゴールへ鍵を掛ける。

 全国切符の行方はPK戦に委ねられたが、渡部には少し嫌な記憶があった。新チームが始動して、今年の1月に臨んだ『NEW BALANCE CUP 2021』では、準決勝で帝京高(東京)にPK戦で敗退。3月の『第2回J-VILLAGE CUP(Jヴィレッジカップ)U18 2021』でも、準々決勝で関東一高(東京)にやはりPK戦で敗れてしまう。この2試合でのPKストップはゼロ。敗戦に強い責任を感じていたであろうことは、想像に難くない。

 だからこそ、同じ想いを二度としたくない一心で、日頃からトレーニングを積み重ねる。「練習から頑張って、PKに自信を付けることをやりました。練習量を多くして、集中力を高めて、とにかく一生懸命やりました」。蓄積された努力は、嘘をつかない。苦手意識を上回る自信を、懸命に纏ってきた。

 桐生一は1人目のキックが枠を外れ、2人目のキックもポストを直撃。3人目が終わった時点で、2-1と前橋育英が一歩リードする。迎えた桐生一の4人目。渡部はフラットな心で、キッカーを見つめる。「雰囲気とセットの仕方で、右だと思いました」。確信を持って伸ばした手に、ボールが弾かれる。

「思い切りの良さが出ましたね。『もう勝った』と思いました」。守護神、吠える。その思惑通りに、最後は桑子がきっちりキックをゴールネットへ収め、熱戦に終止符。苦手のPK戦を払拭するような活躍を見せた渡部を中心に、タイガー軍団の歓喜の輪が広がった。

 自己分析では、シュートストップとキックが長所。どちらも世界最高峰のGKに憧れているという。「シュートストップはテア・シュテーゲンで、キックはエデルソンです。その2人は世界でも飛び抜けているので、動画を見たりして、参考にしています」。最強の“いいとこどり”をイメージしながら、日々のトレーニングに励んでいる。

 同じ群馬県出身でもある“盟友”への信頼は厚い。「クワリク(桑子)のことは一番信頼していて、彼がチームをリーダーとして引っ張っていくので、自分も少しでもみんなを引っ張っていけるように、ここから頑張っていきたいです」。群馬のチームで、地元出身者が活躍することの意味も、十分に理解している。

 全国での目標を問われると、それまで以上に口調が強くなった。「結果にはこだわって、日本一を獲ります」。前橋育英がゴール前に築く“堅牢”な鉄のカーテンを中心で担う、最後の砦。重要な局面で飛び出す渡部のファインセーブがチームを救う日は、必ずまたやってくるはずだ。

(取材・文 土屋雅史)
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