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先輩FW上田綺世の東京五輪メンバー入りも刺激に。鹿島学園が0-2から延長逆転勝ちで全国へ!:茨城

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鹿島学園高が延長戦の末に全国切符獲得

[6.23 インターハイ茨城県予選決勝 明秀日立高 3-4(延長)鹿島学園高]

 鹿島学園、先輩の吉報に続く茨城制覇! 令和3年度全国高校総体(インターハイ)「輝け君の汗と涙 北信越総体2021」サッカー競技(福井)茨城県予選決勝が23日に行われ、関東大会予選優勝校の明秀日立高と昨年度選手権予選優勝の鹿島学園高が激突。鹿島学園が延長戦の熱戦を4-3で制し、3大会ぶり8回目のインターハイ出場を決めた。

 鹿島学園は前日22日にOBのFW上田綺世(鹿島)が東京五輪代表18名に選出。鈴木雅人監督は教え子の五輪代表入りを「本当に嬉しいです。頑張ってもらいたいです」と喜ぶ。その上田から「頑張って下さい」とエールを受けて臨んだ決勝。鹿島学園が大逆転で全国切符を勝ち取った。

 試合は序盤から明秀日立がロングボールとサイド攻撃で押し込む。そして、11分には左SB岩崎柊太(3年)がダイレクトのアーリークロス。これがGKの頭上を越える形で逆サイドのゴールネットに吸い込まれた。

 幸運な形で先制した明秀日立は、競り合いの強さと切り替えの速さでペースを維持。21分には鹿島学園のMF林結人(2年)がDF2人をかわして左足を振り抜くが、DFに当たってコースの変わった一撃を195cmGK谷口璃成(3年)がファインセーブで阻止する。

 明秀日立は、ドリブルで鋭く斜めに入ってくる相手の高速SB櫻井稜(2年)や技術力で違いを示す林、前線で健闘するFW松村尚樹(3年)にチャンスメークされていたものの、抜群の高さを発揮していたCB長谷川皓哉(3年)と的確なカバーリングを見せるCB木村海斗(3年)中心に対応。逆に28分、相手のミスを逃さずに2点目を奪った。右サイド後方からのロングボールにFW角遥夢が競る。こぼれ球の対応が遅れた鹿島学園の隙を逃さず、FW根本琳生(3年)が右足でゴールを破った。

 さらにセットプレーなどから3点目を狙う明秀日立に対し、鹿島学園はDFラインの押し上げを徹底。MF鈴木仁也(3年)らが献身的にセカンドボールを拾い、相手を見てボールを動かすなど、流れを引き寄せようとする。そして、後半17分に3人替えを敢行。すると23分、右ロングスロー後の混戦から林が巧みにDFを外し、左足で追撃ゴールを決めた。

 さらに32分、鹿島学園は鈴木が右オープンスペースへ展開。選手交代に伴い、SBから右SHへポジションを変えていた櫻井が絶妙なトラップからゴール方向へドリブルで持ち込む。そのまま右足で豪快にゴールを破った。

 明秀日立は1点差となった後、受け身の時間帯が続いて痛恨の失点。萬場努監督は「(全体的に良いパフォーマンスではなく、)ちょっと歯車が噛み合いそうで噛み合わずにリズムを徐々に失っていって、取り返せなかったという印象ですね」と首を振る。

 34分にはロングカウンターからMF村田楓太(2年)がミドルシュートを狙うもわずかに枠外へ。ただし、意図していた以上にロングボールが増えていた攻撃から、同点後は村田らが時間を作り、サイドを活用して攻める回数を増やす。だが、次の1点を奪ったのは、鹿島学園の方だった。

 2-2で突入した延長戦の前半1分、鹿島学園は右サイドでボールを繋ぐと、交代出場MF熊倉優希(2年)がロングパス。これを左サイドからのダイアゴナルランで飛び出した林が左足でコントロールし、間髪入れずに右足を振り抜く。鋭い一撃がニアを破り、3-2。2年生MFのスーパーゴールで逆転した鹿島学園に対し、明秀日立は延長後半開始から長谷川を前線へ上げて同点ゴールをもぎ取りに行く。

 だが、その開始直後、鹿島学園は交代出場FW西川竜瑛(3年)が右ハイサイドでボールを収め、パス交換から林がクロス。これに交代出場FW上野光永(3年)が頭から飛び込んで4-2とした。

 鹿島学園の鈴木監督は「代えた子も頑張ってくれましたね」と感謝。ただし、2-4とされた明秀日立も諦めない。失点の2分後、根本の右クロスから長谷川が右足で決めて1点差。さらに長谷川のシュートなどで同点を目指した。だが、鹿島学園DF陣は決定打を打たせず、そのまま4-3で試合終了。鹿島学園がライバル対決を制し、頂点に立った。

 鹿島学園は20-21年シーズンのUEFAヨーロッパリーグ覇者・ビジャレアル(スペイン)と業務提携中。左SB渕伸平主将(3年)が「自分たちがやりたいことはパスで前に行くことですけれども、それを含めて相手の状況見て良い判断できるようにというのは意識しています」と語るように、相手の状況を見ながら繋いで前に行くこと、またボールに近い選手、遠い選手も切り替え速く動いてチャレンジアンドカバーすることは身につけてきた武器だ。この日は後半のセカンドボール回収、切り替え速い攻守から流れを変え、ボールを前に繋ぎ続けて逆転勝ち。学んできたことを表現して勝利した。

 加えて、先輩の東京五輪メンバー入りは選手たちに大きな刺激をもたらしているようだ。渕は「刺激になりますね。リーグ戦でいうと歴代トップの成績(16年の県1部リーグで33得点。歴代2位と12点差)を残していて、『自分たちもやればできる』というふうに感じさせてくれる良い先輩かなと思います」。鈴木監督は東京五輪を戦う上田に「怪我しないで、(多くの仲間達が待つ)カシマスタジアムに帰って来い」とメッセージを送ったという。東京五輪でまずは激戦区のグループリーグで首位突破し、カシマスタジアムで開催される準々決勝進出を期待。後輩たちは世界と戦う先輩の姿からまたエネルギーを得て、インターハイ日本一へ向かう。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2021

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