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5試合連続シャットアウトの守護神。正智深谷GK小櫃政儀の牙城は、揺るがず、堅い

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5試合連続シャットアウトの正智深谷高が誇る守護神、GK小櫃政儀

[6.23 インターハイ埼玉県予選決勝 正智深谷高 1-0 武南高]

 仮にディフェンスラインが破られたとしても、今年の正智深谷高は、さらにこの男が待ち受けている。「去年は先輩たちがいて、少しコーチングとか声を出す部分が少なかったですけど、最後の学年ですし、一番上の代で、しっかり一番後ろから声を出さないといけないなと思って、鼓舞するコーチングだけじゃなくて、しっかり具体的なコーチングを心掛けるようになりました」。5試合連続シャットアウトの立役者。GK小櫃政儀(3年=FC深谷出身)の牙城は、揺るがず、堅い。

 1つの転機は“大敗”だった。4月の関東大会予選準決勝。結果的に優勝をさらう西武台高と対峙した正智深谷は、4点を奪われての敗戦。守備陣は自らの現在地を痛いほど思い知らされる。「彼らの力が全く出ていなかったんです。緊張してオドオドして、『それはないだろう』と。『やられても力を出し切っているならいいけど、あそこまで勝ち上がったのにもったいないだろう。もう二度としないようにしような』と話しました」と小島時和監督もその時を振り返る。

「新チームの立ち上げから、守備は結構課題だと言われたんですけど、まさに西武台に負けてからみんなの意識が変わって、練習も一段階ギアが上がって、そのあとの練習試合でも失点が少なくなっていったんです」(小櫃)。あんな負け方はしたくない。チームの意識に変化が加わっていくと、インターハイ予選でも初戦の成徳深谷高戦で1-0と完封勝利。ここで一気に手応えを掴む。

 準決勝では優勝候補大本命の昌平高を、やはり1-0で撃破。4試合連続で“ウノゼロ勝利”という、守護神としては痺れるシチュエーションを経て、決勝戦へ挑む。相手は武南高。高い技術を誇る相手に序盤から攻め込まれたものの、前半10分には相手の決定的なシュートを、小櫃が気合のファインセーブ。失点を許さない。

「守備では『点を決められないようにするぞ』と。『ゼロで行けば、自然と良いチャンスは来るぞ』という雰囲気はありました」。小櫃の言葉通り、正智深谷は前半24分にFW山口陽生(3年)が40mロングで先制弾。1点のアドバンテージを手にする。ただ、大会5試合目にして、前半での得点も、前半でのリードも初めてのこと。「自分たちも初めて早く先制して、みんなちょっとウキウキしちゃって、自分たちがやりたいサッカーは難しかったんですけど、しっかりハーフタイムに監督やコーチから指示がありました」(小櫃)。もう一度想いを合わせて、後半のピッチへ向かう。

 1-0のままで突入した終盤。武南も猛攻を仕掛ける。後半40分。右サイドから、飛び出すのも、待つのも、どちらも正解で、正解ではないような、際どいクロスが入ってくる。「去年の選手権予選の昌平戦で、2失点目は上がってきたクロスに自分が曖昧になってしまって、こぼれ球を決められたんですけど、自分でもあそこは課題だなと思っていた中で、しっかりチャレンジできたので良かったです」。絶妙の距離感で飛び出し、相手のシュートを体でブロック。その流れのCKから迎えた決定的なピンチも、完璧なセーブで弾き出す。

「ああいう練習は結構やっていたので、一応魅せる感じになっちゃったんですけど(笑)」。この日もファイナルスコアは1-0。驚愕の5試合連続でウノゼロ勝利という凄まじい記録を打ち立て、小櫃も守護神の名に恥じないパフォーマンスで優勝に貢献。チームメイトみんなで歓喜に酔いしれた。

 参考にしているGKは日本代表の中村航輔と、イングランド代表のジョーダン・ピックフォード。「ピックフォードさんはシュートセーブとシュートの準備に少し独特な部分があるんですけど、その独特な部分が自分は好きで、キックもフォームを少し意識したりしています」。名手のイメージを取り込みつつ、自分の考えるGK像を追求していく。

「昌平もそうですし、全チームがインターハイ出場を目指してやってきたと思うので、自分たちが勝ったチームのためにも、埼玉代表の名前に恥じないように、しっかり全国大会で結果を残していきたいと思います」。正智深谷の守護神から、埼玉を代表する守護神へ。小櫃の冷静沈着なセーブが、チームの無失点記録をまだまだ伸ばしていくならば、自ずと全国での躍進も付いてくるはずだ。

(取材・文 土屋雅史)
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