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ライバルはチーム内にいる日本高校選抜GK。諦めず、マジメに準備続けてきた矢板中央GK羽渕莉人が好守で勝利に貢献

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矢板中央高GK羽渕莉人は先発器用に応えて勝利に貢献

[6.26 高円宮杯プリンスリーグ関東第7節 矢板中央高 3-1 帝京高 矢板中央高東泉G]

 サブの立ち場である自分にとっては、数少ないチャンス。絶対に結果を残さなければならない試合と理解して試合に臨んだ3年生GKが、勝利に貢献した。

 矢板中央高(栃木)はインターハイ栃木県予選決勝から中2日で迎えたこの日、日本高校選抜GK藤井陽登主将(3年)に代えて、181cmの左利きGK羽渕莉人(3年)を先発起用した。プレミアリーグ昇格を狙うチームにとっては、重要な一戦。羽渕は勝つこと、無失点に抑えること、そして自分のアピールも求めてピッチに立った。

「試合前にGKコーチの木村(大地)さんに、『ここでのオマエのパフォーマンスで選手権で出られるかどうかも変わってくるから今日の試合は大事だぞ』と言われたので、強気で行きました」。プリンスリーグでの先発は昨年9月以来。負けられないという緊張もあった前半は硬さもあったが、前半はPKによる1失点のみで安定した対応を続けた。

 3-1としてリードして迎えた後半は、帝京高(東京)が一方的に攻める展開に。我慢の時間帯が続く中、羽渕はクロスに出る判断を躊躇してしまったシーンもあった。だが、守備範囲広く守り、クロスを弾く部分やキャッチングも安定。後半45+6分には決定的なヘッドをビッグセーブし、帝京に追撃ゴールを許さなかった。

 木村GKコーチは羽渕のプレーについて、「セカンドGKはいきなりチャンスが来る。でも、その準備ができていたと思います」と評価。普段から実直にトレーニングしてきた羽渕を高橋健二監督や金子文三コーチが信頼して先発起用に踏み切ったが、それに応えるパフォーマンスと勝利だった。

 羽渕は1年時の関東Rookie Leagueでも活躍していたGK。だが、当時から争っていたライバル・藤井が先にトップチームでのチャンスを掴み、レギュラーとして臨んだ選手権予選、全国大会でも活躍し、高校年代を代表するGKになった。

 挫けそうになる気持ちになったこともあるという。特に1年時の選手権は「ウワッと思っていました」と素直な心境を明かす。今でも藤井の活躍を喜ぶ反面、悔しい感情も持っていることを否定しない。ただし、引いた気持ちでいてもポジションを掴めないことを羽渕は理解している。

「そこでちゃんとやるというか、そういう(無理だ、勝てない、という気持ち)のを出してしまったら勝てる相手ではないと分かっているので、そこに食らいつくために少しでもマジメにやっています」。

 ライバルの「守備範囲の広さは凄いなと思います」と認める一方、「止めれるの?っていうシュートを止める部分は自分も負けていないと思います」。この日はその強みを大事な局面で発揮し、勝利に貢献。普段、羽渕の存在に危機感を持っているという藤井もライバルのプレーを讃えていた。

「いつも一緒に練習していて、セービングの部分とかは自分よりも良いなと思うところがある。自分が出ても、莉人が出ても一緒だと思うところがあって、きょうもPKで失点はしてしまいましたけれど、他のプレーは良かったと思うし、自分ができない時があっても心強いなというのがある」。高校世代屈指のGKはライバルの活躍からまた刺激を受けていた。

 先発GKとして“やり切った”羽渕は、「次の試合もまた出たいです」ときっぱり。藤井の凄さは誰よりも理解しているが、全力でポジションを奪いに行く。そのために必要なことについて、「安定感というところが一番だと思います。イージーなミスとか、『ここミスしてほしくない』というところでキャッチミスしない。ミスを減らして信頼を得ることが大事だと思います」。そして、「どんなスーパーなシュートが来ても止められる。シュートに関しては絶対に入らないというGKになりたいです」と力を込めた。

 強大なライバルに挑む3年生GKは、普段のトレーニング、フェスティバルの試合であっても一つも緩めるつもりはない。この日、自身の力を一つ証明した羽渕は、常にマジメに、全力でプレーし続けて再びチャンスを掴む。

(取材・文 吉田太郎)
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