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水橋の仲間の活躍も刺激に、浦和ユースGK川崎淳は目の前のフィールドで高いポテンシャルを解き放つ

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193センチの長身を誇る浦和レッズユースの大型守護神、GK川崎淳

[6.26 プレミアリーグEAST第8節 FC東京U-18 1-0 浦和ユース 武蔵野苑]

 193センチの長身に、スラリと伸びた長い手足は、間違いなく“世界基準”を感じさせるサイズ感。あとは絶対的な自信を纏えば、既にトップチームで定位置を掴みかけている1つ年上の“先輩”にも肩を並べ得るだけのポテンシャルは、秘めている。「やっぱり(鈴木)彩艶くんの近くで凄い部分を見てきたので、できるだけそういう所を吸収して、自分の中にも取り入れてやっていきたいと思います」。浦和レッズユース(埼玉)の正守護神、GK川崎淳(3年=水橋FC U-15出身)の羽ばたく世界は、果たしてどこまで。

 プレミアリーグEASTも第7節を終えて、いまだ白星に恵まれていなかった浦和ユース。リーグの中断期間にも練習試合を組みながら、まずは1勝を手にすべく、様々なトレーニングを重ねてきた。一定の手応えを携えて挑んだ、第8節のFC東京U-18(東京)戦。チームは前半の飲水タイム以降から、少しずつゲームのリズムを手繰り寄せる。

 後半もペースは浦和だったが、「前半はお互いにそんなに決定機はなかったですけど、後半の立ち上がりで自分たちのチャンスが増えてきて、そこで決められなかったのが大きかったですね」と川崎。決定機を掴むものの、なかなか先制点を奪えない。

 後半20分。クロスから相手フォワードに潜り込まれ、失点。「そこまではうまく守れていましたし、相手がクロスを狙ってくるとわかっていて、それでやられてしまったのはまだ甘い所かなと思います」。ワンチャンスを決められ、1点を返せないままにタイムアップ。リーグ戦初勝利は、またもおあずけに。「決め切る所とか、際の部分が足りなかったかなと思います」。川崎も悔しさを隠せなかった。

 ユースに入団した時から、1学年上の先輩に当たるGK鈴木彩艶(浦和レッズ)とともにトレーニングに励み、その才能を誰よりも間近で感じてきた。「ユースに入る前から名前は知っていましたけど、実際に自分の目で見てみたら、プレーがダイナミックで凄かったですね。ユースの頃から意識も凄く高くて、トップチームのキャンプに行かせてもらった時も、プレーの質が凄く上がっていたのを感じたので、今ああやって活躍しているのは当然というか、自分の中ではそう思っている部分もあります」。一緒に汗を流した期間はそう長くなかったものの、プロで活躍する選手のレベルを肌で感じたことで、自分の中でも確かな基準を得たことは言うまでもない。

 中学時代は富山の水橋FC U-15でプレー。浦和に来た当初は「細かい戦術的なことは、中学の時はそこまでやっていなかったので、そういう所に慣れるのが難しかったです」とのことだが、今ではビルドアップ時には起点となり、ディフェンスラインの後ろをカバーする能力も向上。「あまり通る声じゃないので、できるだけ大きく出していますし、練習から盛り上げる声とか雰囲気を良くする声を出せるようにやっています」と自ら語ったように、課題に挙げられていたコーチングも含めた“声を出す量”も、昨年までに比べれば飛躍的に増えている。

 先日はインターハイ富山県予選決勝で惜しくも敗れ、全国出場には届かなかったものの、中学時代のチームメイトも多数在籍している水橋高の活躍を知り、「やっぱり富山では富一(富山一高)が強い中でも、今年は高一(高岡一高)がそこを倒してきましたし、水橋高校も今年が最後の年なので、その中で頑張っている姿を見て、自分も刺激を受けました」と嬉しそうに言葉を紡ぐ。

「自分はたまたま声を掛けてもらってこのチームに来たんですけど、“水橋”の名前を背負ってきているので、その名前に恥じないように頑張っていきたいです」。今は違う場所で戦うかつての仲間の奮闘に、改めて自分の今いる舞台でより成長したいという想いも募っている。

 ここからの目標を問われると、静かな口調に少しだけ力がこもる。「まずは1勝して、降格圏内を抜けることが大事だと思います。個人としては失点が続いている状況なので、チームと自分のプレーでしっかり失点をしないというのは目標にしていますし、去年は3年生に引っ張ってもらっていたんですけど、今年は自分が3年生で中心になって引っ張っていけるように声を出していきたいです」。

 富山で育ち、浦和でさらなる成長を遂げつつある、心優しき守護神。川崎の秘めたる闘志が今以上にフィールドで解き放たれた時、彼もチームももう一段階上のステージへと階段を登るに違いない。

(取材・文 土屋雅史)
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