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[プレミアリーグEAST]「失点ゼロ」から「被シュートゼロ」へ。新たなフェーズに突入した流経大柏が4発快勝!

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試合前に全員でピッチに一礼をする流通経済大柏高イレブン

[6.27 プレミアリーグEAST第8節 流通経済大柏高 4-1 横浜FCユース 流経柏G]

 日本一を真剣に目指す上で、彼らは新たなフェーズに入ったと言っていいだろう。掲げているのは“ゼロ”への挑戦。『失点ゼロ』。いや、そんな普通の数字で満足するような集団ではない。『被シュートゼロ』。これが今、彼らが真面目に取り組み、実現させようとしている“ゼロ”への挑戦の全貌だ。「今日もさっき公式記録を見たら、シュート数が18対1で、コーナーキックが16本と。この試合をプレミアでできるというのは、『コイツら成長してるな』と思いますよね。この内容はインターハイの県決勝と一緒で、つまり相手のレベルに関係なくこのゲームができるというのは強みだと思います」(榎本雅大監督)。27日、高円宮杯 JFA U-18 サッカープレミアリーグEAST第8節、流通経済大柏高(千葉)と横浜FCユース(神奈川)が激突した一戦は、4-1で流経大柏が快勝。第2節以来となる白星を手に入れた。

 いきなりの決定機は流経大柏。前半5分。キャプテンのMF渋谷諒太(3年)を起点に、MF都築駿太(2年)が繋ぎ、FW川畑優翔(3年)が枠へ収めたシュートは、横浜FCユースのGK西方優太郎(1年)がファインセーブで回避。10分にも渋谷の右CKを川畑が頭で叩き、ここも西方が好守を見せたものの、「今日がターニングポイントになるとわかっていたので、もう前半の最初からガンガン言いましたよ。『オッケー!オッケー!行こう!行こう!』って。要するにオレも“12番目”で圧倒しようと思って」と榎本監督。立ち上がりからホームチームの勢いが鋭い。

 21分にもMF松本洋汰(3年)の落としから、川畑のシュートは西方がキャッチ。26分にも左サイドを運んだDF大川佳風(2年)のクロスに、「相手が古巣の横浜FCなので、最近は『試合に出て活躍したい』ということばっかり思っていました」というDF橋本清太郎(3年)のシュートは枠を外れるも、両サイドバックが絡んだフィニッシュで攻勢を強めると、30分には相手のハンドで得たPKを、「キーパーを最後まで見て、逆は取れました」と振り返る川畑が冷静に沈め、ゲームリズムのままに流経大柏が先制する。

 ところが、一瞬のエアポケットを突いた同点弾は37分。横浜FCユースはカウンター気味の流れの中、右サイドで前を向いたMF永田滉太朗(1年)が、得意の左足で中央へ絶妙のラストパス。走ったMF山崎太新(3年)はGKの動きを完璧に見極め、ゴール右スミへボールを流し込む。ファーストシュートできっちり成果。スコアは振り出しに戻って、前半の45分間は終了した。

 後半は横浜FCユースも両ウイングバック、右のMF本木紀慶(3年)、左のDF土屋海人(3年)にボールを付けつつ、徐々に攻撃の芽が。14分にはここも永田が右からラストパスを送り、MF清川遥(2年)のシュートは橋本が執念でブロックしたが、あわやというシーンを作り出す。

 18分。古巣対決に燃える男が魅せた。橋本は「ちょっと取られそうになったんですけど、フィジカルを生かして、前にゴリッと入って」、右サイドをぶち抜きながら中へ。MF小林恭太(3年)のシュートは西方に弾かれるも、再び自らプッシュしたボールがゴールネットを揺らす。「今日のハシは前半からイケイケだったので、絶対抜いてくるなというのは信じていました」という“コバキョー”のプレミア初ゴール。流経大柏が再び1点のアドバンテージを得る。

 28分には思わぬアクシデントで退場者を出してしまうが、10人になってもピッチの選手たちは渋谷を中心に、自分の為すべきプレーを忠実にこなし続ける。33分には左サイドを凄まじいボールコントロールから、単騎で50メートル近く運んだ川畑のシュートは西方に阻まれるも、35分には渋谷が素晴らしい出足でのボールカットを敢行すると、小林の右クロスに川畑がボレーで合わせ、3点目をゲット。9番のドッピエッタで点差が開く。

 大トリは途中出場のスピードスター。45分。川畑のスルーパスから、MF石川裕雅(3年)はラインブレイク。GKとの1対1を泥臭く制し、チーム4点目を奪って勝負あり。「1人退場してからは『ブラボー』の一言。全然1人少ないって感じなかったし、一皮剥けるにはメチャメチャ良いゲームになったなと思います」と指揮官も評価を口にした流経大柏が、リーグ戦では実に2か月半ぶりとなる勝利を力強く手繰り寄せた。

 今年の流経大柏が誇る実力を考えれば、7試合を消化して勝ち点11という数字は、いかにも少なく見える。「エスパルス戦(1-2で敗戦)もサッカーの内容では、十分勝つことのできるゲームだったのに、『オレたちもトップクラスとやれるじゃん』みたいにメンタルを持たないから、次のレイソル戦(1-1のドロー)も何となくフワッと入っちゃって、点を獲ったのに、しびれを切らして1点取られると。市船戦(1-1のドロー)もそうで、点を獲り切れない」と榎本監督。言及した柏レイソルU-18戦と市立船橋高戦の間には、青森山田高に0-3で敗れており、この日は実に5試合ぶりの勝ち点3だった。

 とりわけ今年の高校年代最高峰のビッグマッチと注目を集めた青森山田戦に、ホームで完敗を喫したことで、チームは改めて今の立ち位置をシビアに見つめ直したという。「何かを成し遂げるチームや、何かを成し遂げる人間って、結局信念みたいなものがあって、それでプライドや自信を持って、命を懸けてやるということだと思うんです。青森山田とやった時に、彼らには覚悟とかプライドがあって、ウチにはなかった。『どうだろう?』『できるかなあ?』『やってみようか』と。その段階で0-0だった前半は『結構やれたじゃん』というぐらいのメンタリティだったんですよ」(榎本監督)。

 迎えたインターハイ予選。チームは『被シュートゼロ』を掲げて、大会に入る。実際に全4試合のうち、2試合で『被シュートゼロ』を記録。決勝の暁星国際高戦も、公式記録にきっちりブロックしていたはずの相手のシュートが1本記載されていたことに、選手たちは納得の行かない表情を浮かべていたとのこと。『失点をしなければ負けることはない』から、『シュートを打たれなければ負けることはない』というフェーズの進化を真剣に追い求める中で、19対1というシュート数だった暁星国際戦の直後に、横浜FCユース相手でも18対1という“数字”を実現するあたりに、今年の流経大柏の持つポテンシャルが如実に現れている。

 ここから2試合のプレミアを経て、真夏のインターハイへと乗り込んでいく。「青森山田が今は1強みたいになっちゃっているんですけど、そこに食い込まないと自分たちも日本一は難しいので、まずは1人1人が意識の所から変えていければなと思っています」と口にしたのは小林。選手の意識は徐々に変化し始めている。覚悟はできているか。プライドは持っているか。自信は携えているか。その問いへの答えを証明する場所は、いつでもピッチという戦場の上しかない。

(取材・文 土屋雅史)
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