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[MOM3511]流通経済大柏FW川畑優翔(3年)_ 苦手な形からの“バティゴール”!この男が瞬時に放つ煌めきを見逃してはいけない

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FW川畑優翔(9番)は自身2点目のゴールにキャプテンの渋谷諒太と歓喜の抱擁

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[6.27 プレミアリーグEAST第8節 流通経済大柏高 4-1 横浜FCユース 流経柏G]

 一度この男の間合いに入ったら最後、それがどんな局面であっても、斬られてしまうことを覚悟しないといけない。とりわけ良い形でボールを持たれたら、それを奪い返すのはなかなか困難なミッションと言っていいだろう。「ペナ内での余裕は課題だと感じているんですけど、それ以外だったら何でもできると思っているので、そこは自信があります」。流通経済大柏高(千葉)のストライカーであり、チャンスメイカーであり、ドリブラー。FW川畑優翔(3年=大豆戸FCジュニアユース出身)が纏うスケール感は、群を抜いている。

 久々のリーグ戦となった横浜FCユース(神奈川)戦。「リーグ戦でも、インターハイ予選でも点が全然獲れていないので、今日は切り替えてというか、『またイチからスタートしよう』と考えていた」川畑は、前半5分にMF都築駿太(2年)からのパスを受けて、枠内へシュートを飛ばすと、10分にはキャプテンのMF渋谷諒太(3年)が蹴った右CKをヘディングで枠内へ。どちらも相手GKのファインセーブに阻まれたものの、「今日はアップから調子が良かったんです」という好調ぶりをいきなり見せ付ける。

 すると、30分。相手のハンドで得たPKのキッカーを任され、スポットへ向かう。「インターハイ予選でも、チーム練習の最後にPKを蹴っても外していないので、キーパーを最後まで見て、逆は取れました」。きっちり成功させてクールな笑顔。まずはチームへ先制点をもたらしてみせる。

 後半35分。1点をリードしながら、退場者を出して10人での戦いを余儀なくされていた時間帯で、エースに絶好の得点機が巡ってきた。渋谷のインターセプトから、右サイドのMF小林恭太(3年)は丁寧なピンポイントクロス。ニアサイドに飛び込んだ川畑が叩いたボレーは、豪快にゴールネットへ突き刺さる。

「自分もクロスからのゴールは下手なので、小林と2人で一緒に練習してきた、そのままの形が出たのだと思います。信じて入り込めば練習通り来るとは思っていましたけど、小林もクロスはあまり得意じゃないので、ビックリしました。いつもあんなの来ないのに(笑)」。さらに、45分にはMF石川裕雅(3年)のチーム4点目もスルーパスでアシスト。終わってみれば2ゴール1アシストの活躍で、4-1の勝利に貢献。エースの仕事を完遂した。

 この日もチームが10人になったことで左サイドハーフに入ったが、前線に位置している時と同等か、それ以上に怖さを発揮するのがこのポジション。後半33分には凄まじいボールコントロールで前を向くと、50メートル近くを単騎で運び、そのままフィニッシュ。ゴールには至らなかったが、「前向きでボールを受けられるので、左だったら何でもできるなという印象はあるんですけど、ゴールまで行けないというか、そこが課題で、フォワードだったらゴールも近いので、シュートも意識できるんですけど、左だったらゴールを意識してドリブルできるかとか、そういうのを今は意識してやっています」とのこと。明らかにまだまだ底を見せていないようなポテンシャルも末恐ろしい。

 年代別代表にも選出され、プレミアの舞台でも数々の強敵と対峙してきた中で、意識する同世代の選手はチーム内にいるという。「まっちゃん(松本洋汰)ですね。まっちゃんよりは点を獲りたいと思いますし、自分が今日で4点になって、あっちが3点なので、今は自分が勝ってます(笑)。最初は得点王を目指してやるって言っていたんですけど、得点ランクでもトップに今は離されているので、追い付けるように、追い越せるように、また来週も頑張りたいと思います」。まっちゃんを超えて、その上にいる選手たちも超えていく。野心は十分に携えている。

 プロからの注目も集まる中で、地に足の着いた考え方も川畑らしい。「高卒プロというのは目指してやっているんですけど、まずは練習に参加して、自分の立ち位置を感じてみたいなと思いますし、プロの世界に“飛び込む”というよりは、慎重に考えています。でも、プロでやるベースづくりはプロに行ってからでは遅いので、高校でまず作るためにも、インハイぐらいまでにプロの内定をもらえればいいと思っていますし、選手権までの期間はアピールというよりは、自分のプロに行くための準備期間にしたいとは考えています」。

 1試合に何度も見せる只者ではないプレーは、間違いなく上のステージで見てみたい才能の煌めき。その輝く瞬間を目撃するためには、川畑の一挙手一投足から片時も目を離してはいけない。

(取材・文 土屋雅史)
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