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涙のインハイ予選出場辞退から2週間…切り替えて再スタートした山梨学院は次に繋がる戦い

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山梨学院高はインターハイへの思いを断ち切り、切り替えて再スタートを切った。

[6.27 高円宮杯プリンスリーグ関東第7節 山梨学院高 2-5 東京Vユース 山梨学院和戸G]

 涙のインターハイ予選出場辞退から2週間。山梨学院高は敗れたものの、前向きな戦いで新たなスタートを切った。

 1月の全国高校選手権を制した山梨学院の新チームは新人戦、関東大会予選で県内2冠を果たした。一方でプリンスリーグ関東は開幕5試合未勝利(2分3敗)。6月5日の関東大会初戦で西武台高(埼玉)に敗れたことから、「『このままじゃ、ヤバいぞ。もう一回イチから』という話をして」(MF谷口航大主将、3年)12日のインターハイ予選初戦(準々決勝、対帝京三高戦)を目指していたという。

 だが、その前日の11日夕方、山梨学院は山梨県の新型コロナウイルスにおける厳格なルールに抵触したことが判明。保健所の指示に従って検査を行ったが、試合までの時間がなく、予備日の設定もされていなかったため、出場を辞退することになった(サッカー部員は陰性)。準々決勝へ向けて会場入りしていた選手たちは試合を行うことなく、涙の敗退。大きな目標が失われた。

 その後、コーチ陣から「コロナ禍でこういうことは起きる。選手権へ向けてここで切り替えるしか無い」「もう一回歯を食いしばって行こう」という言葉が選手たちに伝えられたという。冬夏全国連覇を目指し、またインターハイで進路を切り開くことを考えていた選手たちのショックが大きかったことは確か。それでも、彼らは前を向いた。

 主将の谷口は「誰も責めれないような終わり方なので。でも、自分たちはプリンスもあるので、ズルズル行ってしまったら今年上手く行かなくなってしまう。これを大きなバネにして、また自分たちがさらに成長できるようにやっていくしかない。自分が引っ張っていかないとチームが落ちていくのは分かっていることなので、自分が率先的にという自覚があります」というように、率先して心を切り替えた。

 また、エースFW茂木秀人イファイン(3年)は「自分たちのサッカー人生はここで終わるわけじゃないので。自分は切り替えて、今日のプリンスリーグに向けて準備してきました」と説明する。他の選手たちもまず目の前の試合に勝つことを目指して取り組んできた。谷口は、その仲間たちに感謝する。「正直、納得がいかない人もたくさんいたと思いますけれども、サッカーになったら集中してみんなで向かって行けたことは良いところかなと思っています」。スコアだけ見ると完敗の再開初戦だったが、今後に繋がる試合でもあった。

 山梨学院は前半から個々の技術力高い東京Vユースにボールを握られていたものの、組織的な守備で主導権を渡さない。サイドの攻防で常に2対2の状況を作り出して蓋をし、相手CBからの縦パスに狙いを定めて谷口やMF石川隼大(3年)がインターセプトした。

 そして、素早いサイド攻撃で右SH崎山亮(3年)が相手を押し下げ、クロスやロングスロー、CKから先制点を目指した。GK吉久隆宏(3年)のファーンセーブや各選手の守備意識の高さもあって0-0の時間を続けた山梨学院は、前半44分に茂木が左中間から対角へのファインショットを突き刺して先制。この試合に懸けていた選手たちは歓喜を爆発させた。

 さらに後半10分、谷口のラストパスから茂木が強引に右足を振り切り、2-0。気持ちの込もった戦いを見せる山梨学院が、白星へ大きく近づいた。だが、サイドで相手を押し下げていた崎山が交代し、15分にCBが入れ替わられる形から失点。「立て直せる力が正直、まだない」(谷口)チームはここから崩れてしまう。

 19分、30分には対策を練ってきたセットプレーから連続失点。その後も背後を突かれる形で失点を重ね、2-5で敗れた。懸けてきた一戦での敗戦。選手たちの落胆は大きかった。それでも、長谷川大監督は「これで負けたから全部ダメだではなく、5点入れられる前までの展開を継続してやれればやれると思う」と頷く。

 この日、自分たちのサッカーを表現できたのは60分間だったが、強豪相手でも十分に渡り合えることを示した。長谷川監督が「攻撃の終わり方、守備の締め方が足りなかった。個々の守備の構築、察知力が足りない」と指摘したように、ここから細部を突き詰めながら、プリンスリーグ関東残留、そして選手権を目指していく。

 茂木は「選手権に、という思いが、全員が強くなってきていると思う。あの決勝に戻れるかはみんなの気持ち次第だと思います」と語り、谷口は「選手権こそはというのがありますし、プリンスリーグも大事なので次の試合勝ってこの悪循環を断ち切りたいと思っています。(まずは)ひたすら練習から取り組んで、次のプリンスで1勝できるように頑張りたい」と意気込んだ。

 この日の敗戦を引きずるのではなく、また切り替えてプリンスリーグで白星を勝ち取ること。そしてこの夏、インターハイ同等の経験ができるように取り組み、成長し、支えてくれている人たちのためにも必ず選手権に出場する。

(取材・文 吉田太郎)
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