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FC東京育ち3選手が先発した順天堂大…その一人、寺山翼が振り返る“古巣撃破”「成長を見せたかった」

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FC東京戦に臨んだMF寺山翼(3年=FC東京U-18)

 順天堂大は6月、怒涛の7連戦を戦い終えた。週中にも試合を行ったのは、5月末に関係者に新型コロナウイルス感染症の陽性者が出たことによる延期分を消化しなければいけなかったためだ。

 だがこの7連戦中の1試合で、順大イレブンは日本中を驚かせた。6月9日の天皇杯2回戦、J1のFC東京と対戦した順大は、1点をリードされて迎えた後半43分にMF白井海斗(4年=清水桜ケ丘高)が起死回生の同点弾。延長戦に持ち込むと、FW小林里駆(2年=FC東京U-18)が逆転弾となるPKを沈めて、名門・順大サッカー部の歴史の1ページを記す大番狂わせを演じた。

 そしてこの試合、特別な思いを持ってピッチに立った選手がいた。高校時代までをFC東京の下部組織で過ごしたDF長谷川光基(4年=FC東京U-18)、MF寺山翼(3年=FC東京U-18)、決勝点を奪った小林里の3選手だ。ピッチは慣れ親しんだ西が丘だったが、対面には憧れ続けた青赤の戦士たちが立っていた。

 寺山は前日からワクワクする気持ちを抑えることができなかったという。「中学からお世話になっているクラブ。大学での成長を見せたかった」。失うものはない。常にチャレンジしよう。「自分の持っているものを全部出そうと思いました」。

 しかし序盤は緊張からか、思うように足が動かなかった。ただそれを察してかFC東京の選手が声をかけてくれたという。「永井(謙佑)選手や東(慶悟)選手に、プレーが切れたときにもう少しアグレッシブにできるといいね、とアドバイスをもらいました」。

 我に返ったという後半、得点するという目的をより明確にした順大は自分たちらしいボールを動かすサッカーを取り戻す。「自分は113分に交代してベンチから見ていたんですが、ずっとベンチから鼓舞しましたし、ピッチ上でも選手全員が戦っていた。シーズンが始まってなかった一体感があの試合ですごく感じました」。無我夢中で戦い終えた120分。試合終了と同時に感じた充実感、達成感はこれまで味わったことのない、人生最高のものだった。

 寺山は入学直後から堀池巧監督の信頼を得て、ボランチのレギュラーを獲得。FW旗手怜央(現川崎F)やDF村松航太(現北九州)らと一緒にプレーすることで、「サッカー選手としての考え方」を教わったという。2年目以降も試合に出続け、普段辛口の堀池監督も事あるごとに高評価するほど、今の順大に欠かせない選手になっている。

 目標はFC東京の大先輩で、日本代表でも活躍するMF橋本拳人のような選手になること。「運動量やボールを奪う力、奪われない力を見て学んでいます」。自身は今冬のFC東京のキャンプにも参加。「正直何も出来なかった」と振り返るが、「長谷川健太監督には上下の運動は出来るけど、もっと左右の動きが出来ればいいね、とアドバイスをもらいました。今はそういう部分を意識してやっています」と更なる高みを目指すためのきっかけにしたい考えだ。

 大学リーグは26日に前期日程を終了。7連戦を戦い終えた順大の次戦は、7月7日の天皇杯3回戦のザスパクサツ群馬戦となる。「監督も言っていたけど、FC東京さんの思いを考えたときに負けられない。あとは唯一残っている大学生なので、そういう責任感じながら力を証明していければいいかなと思います」。気合は十分。リーグ最終節で負傷交代したFW大森真吾(3年=東福岡高)やMF樋口堅大(2年=大津高)の状態は心配だが、FC東京戦で身に付けた「一体感」で、快進撃を続けるつもりだ。

(取材・文 児玉幸洋)
●第95回関東大学L特集

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