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左サイドを切り裂く疾風。実戦経験を重ねる履正社DF西坂斗和は絶賛進化中

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履正社高で台頭してきた左サイドバック、DF西坂斗和

[7.4 高円宮杯プリンスリーグ関西第8節 履正社 2-1 興國 J-GREEN堺]

 左サイドを切り裂く姿は疾風そのもの。気持ち良いぐらいに仕掛ける姿勢は、チームに大きなパワーをもたらしていく。「縦への推進力というのが一番の武器で、そこからクロスを上げたりして、ゴールに関われるのが特徴だと思います」。履正社高で台頭してきた左の突貫小僧。DF西坂斗和(2年=STFC.Partida出身)は躍動感を前面に、定位置確保へ余念がない。

 興國高と激突したプリンスリーグ関西第8節。3バックでスタートした履正社の中で、左WBを任された西坂の対面には、川崎フロンターレへの入団が内定しているMF永長鷹虎が構えていた。「タッチが細かくて、ボディフェイントとかを使ってきて、上手かったです」。何度か迎えたマッチアップで抜かれたシーンもあり、ギアの上がらないチームとともに劣勢を強いられる。

 だが、後半から4バックへの布陣変更に伴い、左SBへとポジションが変わると、自身のやるべきことがより明確になる。「後半はバックパスをさせたり、取れた場面もあったので良かったかなと思いますし、11番の選手(永長)がそこまで守備をしなくて、前にポジションを取れたので、うまくスペースを使えたかなと思います」。

 圧巻のプレーは後半15分。単騎で左サイドをグングン運びながら、ニアへグラウンダーで絶妙のクロスを届ける。飛び込んだFW廣野大河(3年)がコースを変えたシュートは、相手GKのファインセーブに阻まれるも、「ちょっと芝生がスリッピーだったので、そこは狙っていました」という頭脳的な一面も覗かせる。

 終盤までスプリントできる“足”の残り方も魅力的。タイムアップの瞬間は、足を攣らせていた履正社の選手も多く、彼らがピッチに崩れ落ちる光景が見られたが、西坂は淡々と、冷静に勝利を噛み締めるような雰囲気で、整列に向かう姿も逞しい。

 中学時代までは前目のポジションを務めていたものの、履正社に入ってから本格的に左サイドバックへチャレンジ。1年生の頃はなかなか出場機会を得られなかった中で、2年生に進級する直前の今年3月に開催された『第2回J-VILLAGE CUP(Jヴィレッジカップ)U18 2021』に参加すると、ここで確かな自信を掴む。

「Jヴィレッジの大会で結構活躍できた時に手応えがあって、その合宿から試合に出る機会が多くなっていって、そこからは自分のプレーができる試合が多くなりましたし、自分のプレーがはっきりし出しました」。チームを率いる平野直樹監督も「あの選手は面白いですよ」と高評価。右でやはりWBとSBをこなすMF川端元(2年)とのバランスも良く、2年生コンビがチームに新しい風を吹き込んでいる。

 憧れている選手は、ドイツの名門の左サイドを担う弱冠20歳の若武者だ。「バイエルンのアルフォンソ・デイビスは参考にしています。ボディフェイントもスピードがあって、相手をかわしたりしていますし、『上手いなあ』と思います」。同じ左足が利き足であり、世界屈指のタレントへと成長しつつあるサイドバックを参考に、攻守に走り続けられる選手を目指している。

 ここからの目標を問われると、すぐに言葉が返ってくる。「世代別の代表には入りたいです」。この日はU-16日本代表の森山佳郎監督も視察に訪れていた。代表指揮官の目にもおそらくは留まったはずの左サイドバックが描く成長曲線には、今後も注視していく必要がありそうだ。

(取材・文 土屋雅史)
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