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JFA審判委がVAR現況説明…教訓とすべき“不適切な介入”例も「悩むなら変えないほうがよかった」

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柏レイソル戦のPK献上に抗議する北海道コンサドーレ札幌の選手たち

 日本サッカー協会(JFA)は9日、今年度の第3回レフェリーブリーフィングをオンラインで開催した。審判委員会の扇谷健司Jリーグ審判デベロプメントシニアマネジャーが出席し、J1リーグで再導入されているビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)の現況を説明した。

 ゲキサカ集計ではJ1第21節(7月4日時点)までのレビュー回数は45回。そのうちピッチ脇のモニターで主審が映像を確認するオンフィールドレビューは31回、VARのみで事実確認を行うオンリーレビューは14回だった。レビューによって判定が覆ったのは40回。5回は主審の原判定が支持されており、適切ではない介入だった。

 審判委員会によると、VARの手続きに費やされた時間は1試合平均で68.6秒。レビューに費やされた時間は160秒となっている。扇谷氏は「時間がかかる場面もあった」「(時間がかかることに)課題感はある」としつつ、審判員には「慌ててジャッジをして重大な見落としをするほうが怖い」と正確な判定を求めた。

 加えて扇谷氏は以下の3事例を詳しく紹介した。

▼事例1 7月3日 J1第21節 ベガルタ仙台vs浦和レッズ @ユアスタ

 まずは正しい判定ではあったものの、最終決定までに時間のかかった事例だ。後半8分、浦和のDFトーマス・デンがボールを持ち上がろうとした際、仙台FW赤崎秀平のプレッシングを受け、後ろ向きに転倒した場面。T・デンはボールを抱え込むような形で相手のカウンターを防いでおり、今村義朗主審はT・デンがハンドによって大きなチャンスを妨害したとして、イエローカードを提示した。

 ところが、ここでVARが介入。T・デンのハンドはイエローカード相当ではなく、DOGSO(決定的な得点機会の阻止)によるレッドカード相当だとして、主審にオンフィールドレビューを勧めた。

 今村主審はオンフィールドレビューを実施。今回のブリーフィングではビデオ・オペレーション・ルームの映像と音声が報道陣に公開されたが、「ハンドのシーンで止めてください」「ハンドのシーンはこの状態です」とカードの色を決める際に重要となる周辺状況を確認する様子が伝えられた。

 その時点では、T・デンにレッドカードが出されるべきディスカッションがなされていた。だが、そこで新たな論点が登場。赤崎がプレッシングをかけてボールを奪おうとした際、その行為がT・デンへのファウルにあたるのではないかということだ。

 その後、映像でハンドに続いて接触の場面を確認し、音声には「蹴ってるなあ」「ファウルやな」という声。その結果、今村主審はVARに「その前のプレーをファウルと見ます」と報告し、最終的には赤崎のファウルが認定され、T・デンのイエローカードは取り消された。

 通常、VARは①得点②PK③一発退場④人違いの4事象のみに介入するため、今回のようにPKに関わらないファウルやイエローカードが覆ることはないのが原則。ブリーフィングでも報道陣からは「不適切な介入ではないか」という疑問が寄せられていた。

 ただ、今回のように③一発退場かどうかを確認した結果、異なる判定が導き出されるという運用はルール上もあり得る。扇谷氏は「映像を見た場合は(対象プレーを)すべてを確認しなければならない」というルールを強調しつつ、「浦和FKで再開して、警告を取り消した判断が正しかった」と総括した。

 その一方で、今回のレビューでは約4分間を要しており、コミュニケーションの迅速さには課題が残ったと言える。扇谷氏によると、主審はファウルの可能性に気付いていたが、VARはレビュー手続きに入ってからファウルの可能性を認識した様子。そのため扇谷氏は「主審がまずどういう部分を発信するか。そこをよりスムーズにやるということで解消することができる」と教訓を語った。

 加えて扇谷氏はDAZNの公式放送にも言及。解説を務めていた田村直也氏が「何も接触がなければボールに対して体を入れていたと思いますし、赤崎選手のプレスに対して足の接触は明らかにあったので正当な判定だったと思います」と語ったことを受けて、「ありがたかったのは、コメンタリーの方から正しいジャッジになってよかったですねと言っていただけたこと。理解が進んでいると感じた」と感謝を語った。

▼事例2 6月19日 J1第18節 アビスパ福岡vsヴィッセル神戸 @ベススタ

 次は正しい手続きを経た結果、不必要な介入を避けられたという事例だ。後半37分、ドリブルで駆け上がった福岡のMF杉本太郎が神戸のMF山口蛍との接触を受け、ペナルティエリア内で転倒した場面。今村義朗主審はプレーを流し、杉本は激しいジェスチャーで今村主審に抗議していた。

 ボールはそのままラインを割ったが、ここで試合が中断。今村主審が耳に装着した機器に手を当て、VARチェックの手続きに入った。公開された音声によると、今村主審の判断は「両足で飛んでいる」というもの。VARも映像を見ながらこの判定を支持し、「チェックコンプリート」としてファウルなしで再開となった。

 扇谷氏は「映像を見ていると、たしかに福岡の8番(杉本)が神戸の5番(山口)の前に入って接触が起きている事実はある。ただ神戸の5番が何かをしたかというと、ファウルをしていないようにも見える。福岡8番の選手はたしかに両足をそろえて飛んでいるようにも見える。こういった場面ではVARが介入すべきではないと判断するし、正しい適用だったと判断している」と説明。現場のレフェリングどおりに「明白かつはっきりとした誤審」にはあたらないという見解を示した。

▼事例3 5月29日 J1第17節 柏レイソルvs北海道コンサドーレ札幌

 最後は不適切な介入が行われた事例だ。前半30分、浮き球パスに反応した柏のDF高橋峻希が敵陣ペナルティエリア内に侵入し、札幌MF青木亮太と入れ替わる際に接触して転倒した場面。上田益也主審はファウルを告げるホイッスルを吹かず、右コーナーキックからの再開を指示した。

 ところがそこでVARが介入。青木のファウルで柏にPKを与えるべきだとしてレビューを勧めた。その結果、上田主審はオンフィールドレビューを行い、当初の判定を変更。柏にPKを与えた。そしてこのPKをFWクリスティアーノが決め、柏が同点に追いついた。

 音声では、上田主審が「僕はお互いがショルダートゥショルダーで行っているように見えた」と説明。これを受けてVARが「オンフィールドレビューを勧めます」と助言し、レビューがスタートした。モニター確認中の上田主審は「うーん、他の角度はないですよね」と迷った様子。それでも「これでPKを取ります」とし、判定を覆した。

 会場でこの判定を見ていたという扇谷氏は「われわれの見解ではオンフィールドすべきではなかった事象」と述べ、不適切な運用だったという見解を示した。

「私たちもいろいろと検証しなければならないことがあって、あのコンタクトが実際にはっきりとした明白な間違いなのかを考えないといけない」と説明した扇谷氏は「柏の選手はボールに向かうことなく、相手選手に向かって右足を出している事実があり、ノーファウルとした最初の主審の判断は理解ができるものだったと捉えている」と述べ、上田主審の原判定を指示した。

 「審判員の批判をしているわけではない」と前置きした扇谷氏によると、VARの運用法を解釈する上での「行き違いがあった」という。

「主審は選手に『ショルダートゥショルダーで行っている』と説明していたが、その音声を聞いたVARにとっては映像から『ショルダートゥショルダーに見えない』というギャップが生まれた。ただ、そもそも映像から明らかなエラーがあったかを考える必要がある。レフェリーの言葉から『映像とコメントが違う』という形で進んでしまった」。

 VARは本来「明白かつはっきりとした誤審」に介入するもの。しかし、主審とVARが交信するにあたって「主審が見えていたものと、VARが見た映像にギャップがあるかどうか」が問われてしまうという問題が発生。その結果、主審に「明白かつはっきりとした誤審」がなかったにもかかわらず、オンフィールドレビューが行われ、判定が覆される形となったのだ。

 扇谷氏は「主審がレフェリーレビューエリアですごく悩んでいるんですね。すごく悩んでいるという場合は“明白ではない”と考えられる。主審にも伝えたが、悩むくらいなら変えないほうがよかったんじゃないかと思う」としつつ、「VARは非常に難しいものだと思う。言葉の行き違い、確認がうまくいかないことでこういうことが起こりうる。多くの皆さんから(海外に比べて)日本のVARは大きなトラブルなく進んでいると理解していただいているかもしれないが、何も問題がないとは思っていない。こういうことはしっかり伝えて、VARのさらなる理解をしていただきたい」と教訓を語った。

 なお、この場面は審判員に対する研修会でも共有されている様子。その後、適切な運用に至った▼事例2の事象が起きており、教訓はピッチ上にも活かされているようだ。

■ゲキサカ集計の2021年VAR統計(第21節まで)
レビューで判定が修正された回数:40
レビューしたが原判定が支持された回数:5

オンフィールドレビュー:31
VARオンリーレビュー:14

①得点に関わる事象
ゴールが認められた回数:7
ゴールが取り消された回数:17

オフサイド(ゴール/ノーゴール):7/7
ハンド(ゴール/ノーゴール):0/5
その他ファウル(ゴール/ノーゴール):0/4
ラインアウト(ゴール/ノーゴール):0/1

②PKに関する事象
PKが与えられた回数:6(成功4、失敗2)
PKが取り消された回数:4
PKが蹴り直しとなった回数:0

エリア内外(PK/取り消し):1/2
ハンド(PK/取り消し):3/1
その他ファウル(PK/取り消し):1/1

③レッドカードに関する事象
カードなし→レッドカード:2
イエローカード→レッドカード:1
レッドカード→イエローカード:0
カードなし→イエローカード:1
レッドカード→カードなし:0
イエローカード→カードなし:1

④人違いに関する事象
人違いでカードの対象が変わった回数:0

(取材・文 竹内達也)
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