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【クラセンの思い出 vol.3 蓮川壮大(FC東京)】「『日本一になるべきチームだ』と思っていたので、それをしっかり証明できた」

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 ゲキサカでは7月25日に開幕する、第45回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会に向けて、過去の大会で日本一を経験した選手たちにインタビューを敢行!『クラセンの思い出』と題し、当時の大会にまつわるさまざまな思い出を語っていただきます。第3回はFC東京のDF蓮川壮大選手。2016年大会でFC東京U-18のキャプテンを務め、ディフェンスラインの中心としてチームをまとめた蓮川選手に、お話を伺いました。

――まずクラブユース選手権と聞いて、何をイメージしますか?

「夏の全国大会というイメージで、もちろん優勝を目標にしていましたし、僕たちは三冠を掲げていたので、その1つ目の重要な大会でした。このタイトルを逃すと、その時点で三冠の目標が終了してしまうので、そういう意味でも“三冠への第一歩”として、大会に臨んでいたことを思い出します」

――夏休みに東京から離れたところで戦うという、特別感みたいなものはありましたか?

「そうですね。あの暑さが『夏の全国大会』という感覚でしたし、みんなの今後の進路にも影響が大きかったので、僕らも一番気合を入れて臨んだ特別な大会でした」

――改めて日本一になった2016年の大会の印象はいかがですか?

「チームとしての強さもそうですが、個人で剥がせたり、個人で守れたりするチームでもありましたね。僕は後ろから見ていて、本当に安心して守備もできましたし、『点を獲ってくれるだろう』というお互いの信頼感もあったので、1点差の試合も多かった中で、基本的には安定した試合ができました」

――最も印象に残っている試合はどの試合ですか?

「準決勝の川崎フロンターレU-18戦ですね。前半は0-1で負けていて、後半に(久保)建英が入ってきてFKを決めて同点になるという展開で、その試合は『建英、凄いなあ』と思ったこともあって(笑)、印象に残っています」

――グループステージの大分トリニータU-18戦では、貴重な先制ゴールも決めていましたが、覚えていますか?

「覚えています。U-18の時はなかなか試合で点を決めるシーンが少なかったですから。あの試合は大量得点で勝ったので、自分のゴールが薄れてしまいましたが(笑)、凄く嬉しかったですね」

――決勝戦の清水エスパルスユース戦は観客も多くて、会場も西が丘で、雰囲気も凄く良かったと思いますが、今から振り返るとどういう試合でしたか?

「西が丘は特別な舞台で、ナイターということもあって凄く雰囲気も良かったですし、本当に東京のファン・サポーターの方の応援が凄かったですよね。あそこまでアカデミーを応援してくれるサポーターは多くないと思いますし、そういうところでも『ああ、東京って本当に良いチームだな』と感じられました。チームメイトのレベルの高さを知る自分としては、『日本一になるべきチームだ』と思っていたので、それをしっかり証明できたのは良かったです」

――FC東京アカデミーのサポーターは熱いですよね。

「準々決勝の横浜FCユース戦は群馬でやりましたが、あの時も多くのサポーターの方が来てくれました。確か当日かその前日にトップチームの試合があったのに、遠くまで来てくれて。どの試合も東京の応援が圧倒的に多かったので、そういう意味では本当に心強かったですし、『FC東京って温かいファン・サポーターが多いんだな』とは毎試合感じていました」

――決勝戦のハーフタイムには、佐藤一樹監督が泣いていたんですよね。

「前半で2点をリードしていて、何かを話している時に、嬉しかったのか、あと少しというところもあってなのか、泣いていたと思います。それを見た選手も『僕らが頑張らないと』という雰囲気にもなりましたし、後半が始まる前の円陣で僕がみんなに話をして、『自分たちのことをあれほど思ってくれる監督がいるんだから、オレたちも頑張ろう』という気持ちで戦えましたね。一樹さんみたいな監督は一緒にやっていても楽しいですし、『監督のために』という気持ちになれるので、『一樹さんが監督で良かった』という想いはあります」

――本人は頑なに「泣いていなかった」と言っていましたが(笑)、泣いていたんですよね。

「泣いていましたね(笑)。涙はこぼれていなかったですが、ちょっとウルッと来ていて、声も詰まっていたので、あれは完全に泣いていましたよ(笑)」

――試合後は蓮川選手も胴上げされていました。

「自分はキャプテンをやっていましたが、本当に特別なことは何もやっていなくて、言わなくてもみんながやってくれていました。プレーの面でも横にマコ(岡崎慎)がいて、中盤には(鈴木)喜丈や(伊藤)純也がいたり、前には半谷(陽介)と凄い選手たちがいたので、自分がプレーで目立つというよりは、うまくチームが動くように声を出したりしていましたが、その中でもみんながああやって胴上げしてくれたのは凄く印象に残っていますし、嬉しかったです」

――なかなか人生で日本一のカップを掲げる経験はできないと思いますが、あれはいかがでしたか?

「メンバーに入っていない高校1年生の時も優勝しましたが、ちゃんと試合に出て日本一になったのは初めてだったので、『本当に嬉しいな』という気持ちが強かったです」

――ピッチ外での思い出はありますか?

「みんなで行動して、泊まっていたので、凄く楽しかったです。決勝まで行けばそれだけ一体感も生まれていきますし、1週間以上もずっとみんなで生活して、一緒にゴハンを食べていたので、そういう期間が長ければ長いほど、クラブユースが終わった後の信頼関係や、チームとしてのまとまりも深くなっていきますよね。そういう意味ではああいう長い期間の大会は、その先の一体感に繋がっていくんじゃないかなと思っています」

――あのチームは中学3年生の久保選手もいて、高校1年生の平川怜選手もいて、なかなか強烈な後輩たちだったとは思いますが、彼らと先輩の融合という意味で、キャプテンとして考えていたことはありましたか?

「本当にみんな仲が良かったですし、自分がどうまとめようとか特別に考えず、後輩も生意気な選手が多かったので(笑)、お互いに気を遣うところはなかったですね。高校3年生のみんなも本当に優しかったので、改めて良いチームでしたし、それがサッカーにも良い形で出ていたと思います。建英に実力があることもみんなわかっていたので、もちろん先輩たちが彼にサッカー外のところで注意することもありましたし、建英もちゃんとオンとオフをしっかり分けられる選手で、お互いに特別扱いせずに上手くやっていたかなと思います」

――その後はJユースカップでも日本一になりましたが、あの1年間で経験したことは今の自分にどう生きていますか?

「あの時はリーグ戦も含めてほとんど負けていなかったので、勝ち癖が付いていたというか、勝つことで成長できること、チームとして強くなって、まとまっていくことを経験できましたね。勝つことの大切さや、勝ち続けることの意義というか、勝利が自分の先に繋がるということは凄く学べたので、高校3年生の1年間を通して、勝ちへのこだわりは強くなりました」

――改めてU-18で過ごした3年間はいかがでしたか?

「高校1、2年生の頃はなかなか試合に関われないことが多くて、U-15深川の時もそうでしたが、毎回3年生になって、1,2年生の時に積み重ねてきたものが、ピッチで出ることを信じて頑張っていたので、そういう意味では最初の2年間で重ねた努力や、絶対にあきらめない心や、やり続けたことを、3年生になった時にちゃんと結果で出すことができました。どんな状況でもやり続けるとか、あきらめないことは3年間を通じて学んだことですし、大学でも1,2年の時は試合に関われないことが多くても、高校での3年間の経験を忘れずにやり続けた結果が、東京に戻ってこられた理由だと感じています。(2歳上の)兄も高校3年生の一時期は試合に出られない時期があって、そういう姿も見ていたからこそ、上手くいかない時に何ができるかというのは、高校の3年間で学べたことなので、それが今の自分に繋がっているのかなと思います」

――改めてFC東京にプロとして戻ってきて、半年が経過していますが、今の状況はいかがですか?

「ずっと試合に出続けてはいないですし、なかなかリーグ戦も自分が出た試合に勝てなくて、少し悔しい前半戦でしたが、出場した試合は自分でも良い手応えを掴んではいるので、それを継続していくことが大事だと思います。センターバックをやっていく上では、やっぱり無失点でチームを勝たせられる選手、結果を出せる選手になることが大事なので、これからのプロサッカー人生で結果にこだわって、自分が出た試合は絶対にチームを勝たせるということを目標にやっていきたいと思います」

――もうU-18のチームメイトで、一線でのサッカーからは退いている仲間もいると思います。その中で、ご自身がFC東京でプレーする意味をどう捉えていますか?

「大学に行ってから、東京に戻ってこられたのは僕だけなんです。同期だけにかかわらず、東京に戻りたくても戻れなかった選手もいますし、プロサッカー選手になりたくてもなれなかった選手もたくさんいると思うので、周りの人のためにやるわけではないですが、もちろん応援してくれる家族や、小学生の頃から今まで自分を支えてくれたみなさんのためにも、自分がちゃんと試合に出て、東京を勝たせられる選手になりたいと思っています。今はサッカーをやっている選手も、やっていない選手もいると思いますが、自分の活躍がいろいろな意味で同期の刺激になればと考えているので、それはやり続けていきたいですね」

DF蓮川壮大【FC東京】 
1998年6月27日生まれ(23歳)
レジスタFCからFC東京U-15深川へ入団。昇格したFC東京U-18では、3年時にキャプテンを務め、同期の内田宅哉、波多野豪、岡崎慎、鈴木喜丈や後輩の久保建英らとともにクラブユース選手権で日本一を獲得する。明治大を経て、今年からFC東京のトップチームへ“帰還”。J1リーグ戦はここまで5試合に出場。

(取材・文 土屋雅史)
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