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“先輩”の東京五輪初戦白星も刺激に、U-15日本代表候補がU-16山梨県選抜に7-1快勝

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1本目27分、U-15日本代表候補はFW徳田誉(鹿島つくばJrユース)が右足シュートをねじ込んで勝ち越し

[7.23 練習試合 U-15日本代表候補 7-1 U-16山梨県選抜]

 23年U-17ワールドカップペルー大会を目指すU-15日本代表候補が静岡合宿最終日の23日、U-16山梨県選抜と練習試合(45分×3本)を行い、7-1で快勝した。

 前日22日の東京五輪初戦で日本が南アフリカに1-0で勝利。U-15日本代表候補は、その試合前にU-24世代の選手を継続して見ている内山篤団長から、どのような選手が生き残り、五輪に出場しているかの話を受けていたという。

 廣山望監督は「(内山団長の話に加えて)緊張感のある中で(U-24代表の)選手たちがどのような立ち振る舞いをして、どう戦って、どう勝ったかということを目の当たりにしたという意味では、凄く大きなものを共有できたと思います」と振り返る。

 MF小竹知恩(プログレッソ佐野F.C.U-15)は、「前半結構惜しい場面が続いて後半に久保建英選手のシュート。ああいうところでしっかり決め切れる選手に自分もなっていかないといけない、自分もなりたいと刺激になりました」。また、指揮官が「(U-24)代表選手からもらった勇気や、やる気は大きい。自分たち(U-15代表候補)は“一番末の弟”だという認識を持てたと思いますし、公式戦ではないにしろ、そこに行きたいという気持ちを強く持って(練習試合の)ピッチに入ったのかなという気はします」と説明したように、刺激を受けた選手たちが前向きな姿勢で戦い、快勝を収めた。

 序盤は山梨県選抜に押し込まれる時間が増えていたが15分、右SB坂本勘汰(北海道コンサドーレ旭川U-15)が相手プレスを剥がして縦パス。これをFW徳田誉(鹿島つくばJrユース)が身体を張って繋ぐと、サポートしたMF石山青空(新潟U-18)が右のスペースへ展開する。パスを受けたMF市村健(柏A.A.TOR’82)は味方からパスの要求を受ける中、強引なカットインから左足を振り抜く。これがゴール右隅を破り、ファインゴールとなった。

 だが、山梨県選抜は19分、左サイドで技術力を発揮していたMF木村建貴(甲府U-16)が自ら獲得したPKを右足で決めて同点。さらにFW高野夏輝(山梨学院高)の折り返しをMF鈴木斗憂(甲府U-18)が狙う。だが、U-15代表候補は27分、中盤の底からMF中山温樹(清水Jrユース)が縦パス。山梨県選抜DFが対応してブロックしていたものの、徳田が背後から身体を投げ出すように右足を伸ばし、シュートを放つ。泥臭い一撃がゴールを破り、再び勝ち越した。

 U-15代表候補は2日前のU-16静岡県選抜戦で0-3敗戦。だが、全体の距離感、サポートの関係性の部分を修正して臨んだこの日は、距離感の良い攻守でチャンスの数を増やした。30分には左サイドを抜け出したMF佐藤龍之介(FC東京U-15むさし)が決定的な左足シュート。これは山梨県選抜GK高橋黎光(甲府U-18)のファインセーブに阻まれたものの、このプレーで得た右CKから3点目を奪う。市村が左足で蹴り込んだボールを中央の石山が頭で叩き込み、1本目を終えた。

 U-15代表候補は4人を入れ替えて臨んだ2本目、立ち上がりからMF瀬山航生(浦和ユース)がシュートを連発する。8分には市村のロングパスを前線で受けた徳田が間髪入れずに左足ミドル。相手GKの意表を突く一撃で4-1とした。

 CB本多康太郎(湘南U-15)の力強い潰しやMF立花圭吾(FC東京U-15むさし)、MF玉木亜門(鹿島Jrユース)を起点としたパスワークも見られたU-15代表候補は10分、左サイドで佐藤龍と市村がワンツー。そして中央の徳田がギャップを突く形で右前方へラストパスを通す。これを瀬山が右足で決めた。

 U-15代表候補は18分に7人をチェンジ。ミーティングで廣山監督から「爪痕を残して欲しい」というメッセージを受けていたこともあってか、交代出場選手たちも貪欲に前へ出ていた。FW名和田我空(神村学園中)が角度のない位置から放った右足シュートはクロスバーを叩いたものの、その後も緩むことなく試合を継続。山梨県選抜も交代出場のCB三藤龍恩(甲府U-18)が気迫のタックルを見せるなど戦う姿勢を見せ続けていた。

 U-15代表候補はさらに4人を入れ替えて迎えた3本目開始50秒、名和田からのパスを左サイドで受けた小竹がカットインから右足を振り抜く。コントロールされた一撃は、ポストを叩きながらもゴールイン。U-15代表候補は30分にも名和田の左CKをMF田所莉旺(川崎F U-15)が押し込む。山梨県選抜のMF保坂知希(アメージングアカデミー)やMF濱野哉太(甲府U-15)らに攻め返されるシーンも増えていたものの、2本目に続いて3本目も無失点で終えたU-15代表候補が7-1で勝利した。

 “先輩”たちから刺激を受けた選手たちが2日前の試合の教訓も活かして白星。28年ロサンゼルス五輪時に22歳の彼らは、五輪での活躍も大きな目標だ。そこへ生き残るためには実力はもちろん、日常の意識、メンタリティーの部分も成長しなければならない。廣山監督は練習、ゲームから相手を上回るために隙を突いたり、勝負の匂いを嗅ぎ分けて手繰り寄せたりする力を身につけることを期待。この合宿では、小粥智浩コンディショニングコーチから「もっと出力を上げる習慣を付けて下さい」という要求もあったというが、06年以降生まれの才能たちは一人でも多くが紙一重の戦いで白星を引き寄せられるように成長を遂げる。

 U-15代表候補として3度目の活動となった今回、徐々に自分たちのやるべきことが浸透。初招集組がアピールするなど、チームの競争力も高まっている。廣山監督は「次のスタート地点が高ければ目標も高くなる」。合宿期間中、チームメートやスタッフ、そしてU-24代表からも刺激を受けた各選手は所属チームに戻り、日常を変化させ、成長を続けて自分たちの世代のレベルを引き上げる。
 
(取材・文 吉田太郎)

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