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[プリンスリーグ関東]双方に再三の決定機。前橋育英と昌平の強豪対決は見応え十分のスコアレスドロー

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お互いに攻め合った好ゲームはスコアレスドローに

[7.24 高円宮杯プリンスリーグ関東第5節 前橋育英 0-0 昌平 前橋育英高崎G]

「今までやったチームの中で一番“めんどくさい”というか、結構対策もしていたんですけど、中盤のところで剥がされたりしましたし、守備の時間が長くて、ちょっと耐えるゲームではあったと思います」(前橋育英高・柳生将太)「後半になってチームで守備がうまく行かなくなって、流れを持ってこれなくなってしまったので、この暑い中でも、もっと守備が連動できればなと思いました」(昌平高・本間温士)。両チームのディフェンスの選手が似たような感想を口にしているあたりに、攻撃的な姿勢の強く出た90分間が透けて見える。24日、高円宮杯 JFA U-18 サッカープリンスリーグ関東第5節、前橋育英高(群馬)と昌平高(埼玉)の高体連強豪対決は、お互いに決定機を作り合いながらもゴールは生まれず、0-0で勝ち点1ずつを分け合っている。

 最初の20分は静かな展開。お互いに前へとボールは運べるものの、なかなかフィニッシュまでは至らなかった中で、先にチャンスを作ったのは昌平。前半26分。前線に入ったFW小田晄平(1年)、MF荒井悠汰(2年)、MF平原隆暉(3年)が関わり、3列目から飛び出したMF佐藤海空斗(2年)が放ったシュートは、前橋育英のGK渡部堅蔵(3年)にキャッチされるも、この一撃で両者の攻撃性にアクセルが踏み込まれる。

 32分も昌平。「スピードで縦を一発でぶち抜いて、敵を置き去りにするプレーが好きですね」と言い切る右SBの本間温士(3年)が、加速しながら中央のレーンへグングン侵入。こぼれを拾った小田のシュートは、前橋育英のCB桑子流空(3年)がブロック。34分は前橋育英。左サイドからSB岩立祥汰(3年)が好クロスを上げ切り、ファーでMF渡邊亮平(3年)が合わせたヘディングは、「準備が良かったので、自然と反応できたかなと思います」という昌平のGK西村遥己(3年)が鋭い反応でファインセーブ。先制点は許さない。

 40分は昌平。中央をMF篠田翼(2年)がドリブルで運びながら、右へスルーパス。小田が枠へ収めたシュートは、渡部もファインセーブで応酬。「ウチももちろんボールを持つことを大事にしたいんですけど、やっぱり前に進むというか、強引さというよりも、行けるような状況をどうやって個でも打開できるかというところもフォーカスしていったら、また広がるかな、と。そっち側で自分たちの上手さを表現した時に、相手にとって嫌な状況を作れるかなと思っていたんです」という藤島崇之監督の言葉通り、『前に進む』アタックを披露した昌平がやや多く手数を繰り出した前半は、0-0で折り返す。

 後半はホームチームに立ち上がりから勢いが。4分にはFW高足善(2年)のパスから、10番を背負うMF笠柳翼(3年)がシュートまで持ち込むも、本間が懸命にブロック。6分にもMF根津元輝(2年)のパスを起点にFW守屋練太郎(3年)が右へ振り分け、中央に潜った右SB岡本一真(3年)の左足シュートは、DFに当たってクロスバーにヒット。惜しいシーンを作り出す。

 前橋育英は後半9分に投入された右のMF小池直矢(2年)、左の笠柳とサイドハーフの突破力に加え、彼らをサポートする岡本、岩立のオーバーラップが、さらに攻撃へ厚みをプラス。「昌平は同サイドに人数がいるから、守備でも一気にハントしに来るので、そこをトントンと外す、サイドを変える、レーンを変える、第2エリアに行くというのはずっとやっていた」と山田耕介監督も話したように、幅を使ったアタックで強める攻勢。

 30分は前橋育英に決定機。タイガー軍団の14番を託されたMF徳永涼(2年)が小池とのワンツーから、右スミへシュートを打ち込むも、西村がファインセーブでかき出し、「あとは最後だけでしたね。GKにやられました」と悔しい表情。40分は昌平に決定機。CB八木大翔(3年)とともに最終ラインで奮闘したCB津久井佳祐(2年)のパスカットから、篠田翼がドリブルで運びながら左へ送るも、途中出場のFW井出蓮(3年)のシュートは枠の上へ外れていく。

 アディショナルタイムまでやり合う両者。45+3分は前橋育英。左サイドでここも岩立のパスから、笠柳がカットインしながらシュートを放つと、「ディフェンダーが寄せていて、全く見えなかったんですけど、フィーリングみたいなところで」西村が指先でわずかにコースを変えた軌道は左ポスト直撃。45+5分は昌平。MF井野文太(3年)が30メートル近く単騎で運び、並走していたキャプテンの左SB篠田大輝(3年)が渾身のシュートを打ち込むも、渡部が果敢にビッグセーブ。結果的にゴールは生まれなかったが、お互いに攻守で持ち味を発揮した好ゲームは、双方に勝ち点1が振り分けられた。

 インターハイでは埼玉県予選準決勝で正智深谷高に0-1で敗れ、この夏の全国出場は叶わなかった昌平。だが、藤島監督はポジティブな意味で、その負けをモチベーションにするようなつもりはないという。

「負けた悔しさはあるかもしれないですけど、去年はインターハイがなくて、選手権1本というところがあった中で、今年はその悔しさを次にぶつけられる状況はありますからね。僕がいつも言っているのは『悔しい気持ちは長続きしないから』と。負けた悔しさを次にぶつけるよりも、『絶対自分は上手くなりたい』とか、『もっともっとチームとして良くなりたい』とか、そういう前向きな気持ちの方が絶対に良くなりますし、普段のトレーニングから、自分の良さを出して勝ちに行くことを考える方が絶対にいいと思うので、そういうモチベーションを作らせてやろうかなと思っています」。

 攻守に人材はとにかく豊富。「夏はインターハイがないので鍛えて、きちんと選択肢を持てるように、プレービジョンを持てるようにやっていきたいと思います」と指揮官が口にした、『選択肢』と『プレービジョン』のさらなる成長を経た昌平の“夏以降”は非常に楽しみだ。

 この日のドローでリーグ戦の連勝こそ5でストップしたものの、暫定ながら首位に立っている前橋育英。「ずっと連勝も続いていて、今日も引き分けだったんですけど、負けではなかったので、チーム的にも良い方向に進んできていますし、チームも良い雰囲気で練習に取り組めているので、そこは継続していきたいですね」とはキャプテンの桑子。インターハイ予選も含めれば、5月以降は公式戦負けなしで福井に乗り込むことになる。

 ただ、チーム内でのポジション争いは常に熾烈。年代別代表クラスがズラリと揃うボランチの中で、定位置を掴んでいる徳永涼も「自分が育英を選んだ時には、『絶対に2年から出る』という気持ちを持っていたので、熾烈なポジション争いはわかっていましたけど、試合に出たいという想いは一番強いと思います」と話せば、CBとボランチで起用されている柳生も「それぞれの選手にいろいろな特徴がありますけど、その中でも自分のストロングを出して行けば、試合に出られると思います」ときっぱり。この向上心のぶつかり合いも、前橋育英の大きな武器であることは間違いない。

「育英に入ってきた一番の目標でもある日本一を、絶対に獲りたいなと。そのためにはみんなの力が必要なので、1つの大きな目標に向かって、全員で練習から厳しく突き詰めていきたいと思います」と語るのは桑子。“内”と“外”のライバルを見据える上州のタイガー軍団が、夏の全国制覇を真剣に狙う。

(取材・文 土屋雅史)
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