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[MOM3522]昌平GK西村遥己(3年)_世代別代表で得た刺激。守護神は常に自然体でゴールの前に立つ

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昌平高の守護神を託されているGK西村遥己

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[7.24 高円宮杯プリンスリーグ関東第5節 前橋育英 0-0 昌平 前橋育英高崎G]

 3度に渡って訪れた決定的なピンチにも、慌てず、騒がず、目の前に迫ったボールを確実に弾き出していく。「自分が止めている時はあまりいろいろ考えていなくて、自然と身体が動くようにというのを意識しているので、あまり記憶にないことが多くて、セーブが終わってから『なんでこんなに動けているんだろう?』と気付くことが多いですね」。昌平高の守護神、GK西村遥己(3年=フィグラーレ狭山FC出身)は自然体で守るべきゴールの前に立ち続けている。

 前橋育英高と対峙したゲームは、前半からお互いの攻撃陣が勢いを持って、決定的なシーンを作り合う。まずは34分。昌平から見て右サイドからクロスが上がる。ファーに飛び込んできた相手のヘディングに、西村は右手一本で抜群の反応。ボールを懸命にかき出してみせる。

「サイドバックには『絞ってほしい』と、『ファーは捨ててでもどんどんニアにスライドしてきてほしい』と言っているので、ファーに振られたボールは『自分が止めなきゃ』というのはあって、準備が良かったので、自然と反応できたかなと思います」。

 お互い無得点で迎えた後半30分。中央をワンツーで崩され、枠内ギリギリに鋭いシュートが飛んで来る。「『ここで絶対失点したくないな』と思って、折り返された瞬間に『手前の選手が打つな』と思ったので、『しっかり止まってボールに反応しよう』と良い構えができていましたし、ボールにリラックスした状態で向かえたかなと思います」。この軌道も右手で弾き出し、失点は許さない。

 アディショナルタイムの45+3分。世代別代表の合宿でともに時間を過ごし、「試合前にも『今日はバチバチだな』みたいな話をしていた」という前橋育英のMF笠柳翼(3年)がカットインから、枠内へ強烈なシュートを打ち込んでくる。

「ディフェンダーが寄せていて、全く見えなかったんですけど、フィーリングみたいなところがあって、触れたのは指先だったので、『入ったかもしれない』と思ったんですけど、ポストに当たってラッキーでした」。わずかに指先でコースを変えたボールは、ゴールポストにヒット。結果的に3度のファインセーブで、前橋育英の攻撃を無失点に抑え、勝ち点1の獲得に大きく貢献した。

 前述したように、今年5月にはU-18日本代表候補合宿に参加。レベルの高い環境に身を置いたことで、大きな刺激を受けた。「内田(篤人)さんの話も印象に残っていて、『代表で会った仲間に負けたくないという意識で各自トレーニングをしてほしい』という話だったので、自分も『その通りだな』と思って、ライバルと捉えるレベルがワンランク上がったというか、シュート練習でチームメイトにも、より精度を求めたりするようになりました」。

「GKのバーンズ(・アントン)とも(佐藤)瑠星とも仲良くなりましたし、だいぶ3人で話したりしました。自分もプロに行きたいと思っていますし、世代を代表できる選手になれるように、アイツらに負けないように努力したいですね」。

 チームメイトにも強力なライバルが控えている。同級生のGK松葉遥風(3年)は、西村とともに国体の埼玉県選抜経験者。1学年下のGK上林真斗(2年)も世代別代表の招集歴がある。「3人だったら誰が出ても同じぐらいのパフォーマンスができるという考えはあるので、その中で自分が出ている分、ゼロで抑えないといけないですし、そういう責任を持ってプレーできていると思います」。日頃から切磋琢磨し合う仲間がいることも、代表と同じぐらい成長できる環境であることは間違いない。

「自分は失点をしないゴールキーパーを目指していて、もちろん現代サッカーではビルドアップも求められているので、キックもちゃんと練習していますし、最近良くなってきたパントキックからもチャンスを作りたいですし、相手が深いところで構えていたら、サイドバックに出す1個のパスで流れが変わったりするので、そういうことができるGKを目指しています」。

 目指すは憧れ続けてきた元日本代表の川口能活のように、逃げずにボールへ向かっていくメンタルと、ビルドアップで違いを見せられる技術のハイブリッド。昌平が誇る最後の砦。西村のさらなるグレードアップが、チームで掲げる“日本一”を手繰り寄せるためには必要不可欠だ。

(取材・文 土屋雅史)
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