beacon

常に100パーセントの男。前橋育英DF柳生将太はみなぎる闘志を携えて戦い続ける

このエントリーをはてなブックマークに追加

前橋育英高が誇る“まもりびと”、DF柳生将太

[7.24 高円宮杯プリンスリーグ関東第5節 前橋育英 0-0 昌平 前橋育英高崎G]

 誰が相手でも、どこのポジションを任されても、自分にできることは変わらない。そのことを認識しているからこそ、起用された理由を100パーセントで体現できるのが、この男の最大の強みだと言えそうだ。「守備のところでは球際の強さや、闘志を見せられるという自分のストロングがあるので、その役割を発揮できれば、どんな上手いヤツが相手でも通用すると思います」。前橋育英高(群馬)きってのファイター。DF柳生将太(3年=FC東京U-15深川出身)の存在感が、名門の中でも高まりつつある。

 アタッカー陣に多彩なタレントを擁する、昌平高(埼玉)と対峙したこの日のゲーム。「中盤のところで潰すということと、逆サイドに変えさせないというのは一番考えていて、練習でもやってきました」という柳生は、センターバックでスタメン出場。キャプテンのDF桑子流空(3年)とともに最終ラインを引き締める。

「今までやったチームの中で一番“めんどくさい”というか、結構対策もしていたんですけど、中盤のところで剥がされたりしましたし、守備の時間が長くて、ちょっと耐えるゲームではあったと思います」という本音も覗かせたが、それでも最後の局面では身体を張って、決定的なピンチも確実に凌いでいく。

 試合の結果はスコアレスドロー。相手のアタックを無失点に抑えたものの、さらなる向上の余地も90分の中に見出している。「もうちょっと自分が後ろから声を出して、潰しに行かせる部分と、自分のところにあえて出させて、自分が取るみたいなところも、ここから増やしていきたいと思います」。誠実な口調に、真面目な性格が滲む。

 センターバックのレギュラーは、現状で桑子、柳生、負傷中のDF徳永崇人(3年)の3人が候補。「今日の2人に徳永が絡んでくるので、そうすると柳生をアンカーというのも何試合かやっていて。いろいろな形はできるかなと思いますけどね」と山田耕介監督も言及したように、柳生のボランチ起用もチームの大事なオプション。実際にインターハイ群馬県予選決勝では中盤の底で睨みを利かせ、100分間に渡って主に守備面で奮闘。PK戦でも3人目のキッカーとして登場すると、きっちりゴールに叩き込む冷静さも披露し、全国切符獲得に大きく貢献した。

 本人もポジション争いは歓迎の様子。「ボランチをやるとしてもあの2人が守ってくれるという安心感があって、その1個前のところで自分が潰すという役割があるので、お互い良いライバルとして信用できています」。良い競争が自分を高めてくれることも理解した上で、日々の練習に全力で向き合っている。

 中学時代はFC東京U-15深川でプレー。3年時はサイドバックのレギュラーとして、年末の高円宮杯JFA全日本U-15サッカー選手権大会で日本一を経験したが、自身のU-18昇格は叶わず、オファーの届いた前橋育英への進学を決めた。

 現在もU-18に在籍している選手たちには、当然負けたくない気持ちも十分に持っている中で、とりわけ同じセンターバックを主戦場にしている“ライバル”への想いは強い。「石井玲於奈は一緒にやっていたので、アイツには負けたくないですね。メチャメチャ意識しています」。戦う舞台は違っても、かつての仲間の活躍も刺激に、さらなる成長を自分に課している。

 昔から憧れの選手は決まっている。「セルヒオ・ラモスが一番好きですね。あの選手は凄いです。自分でも結構意識しています」。プレーを見れば、そのチョイスも納得。世界が認める闘将を仰ぎ見つつ、球際の強さと闘志の発露に磨きを掛けていく“まもりびと”。日本一を明確に掲げる上州のタイガー軍団で、100パーセントの力を常に発揮する柳生が主役になる日は、おそらく必ず来るはずだ。

(取材・文 土屋雅史)
▼関連リンク
●高円宮杯プリンスリーグ2021特集

TOP