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イジられキャラの守護神。鳥栖U-18GK大石崇太はピッチ内外で自身の役割をまっとうする

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一昨日刈り込んだ気合の頭でピッチに立つサガン鳥栖U-18のGK大石崇太

[7.25 日本クラブユース選手権U-18大会グループステージ 鳥栖U-18 1-0 FC東京U-18 コーエィ前橋フットボールセンターA]

 チームの輪を見ていれば、イジられキャラであることはすぐにわかる。だが、そんな男がひとたび活躍すれば、一気にグループがノッてしまうこともまた疑いようのない事実だろう。「自分は陰で支えるような感じのタイプですね。ウチのチームは中村尚輝がムードメーカーなので、自分はようイジられてます(笑)」。サガン鳥栖U-18の元気印。GK大石崇太(3年=FCK MARRY GOLD AMAKUSA U15出身)は、自分の役割をまっとうできる“強さ”を秘めている。

「最近までちょっとコンディションが上がらずに、セカンドチームでプレーしていて、ベンチにいた長瀬太陽がずっと試合に出ていたんですけど、今日は足を引っ張らないように、思い切ったプレーをしようと心に決めていました」。キックオフ直前。キャプテンのDF安藤寿岐(3年)が、「オマエが1番を背負ってるんだぞ!大会で一番良いキーパーなんだぞ!」と気合を注入。安藤の頼もしいキャプテンシーと、大石のキャラクターが同時に透けて見える。

 シーズン開幕からケガの影響もあって離脱していた期間が長く、6月にようやく戦線復帰。高円宮杯プレミアリーグWESTの2試合に出場したものの、直近のリーグ戦はメンバー外。同い年のチームメイト、GK長瀬太陽(3年)との併用が続いていた中で、この試合は大石がゴールマウスを託される。

 ゲーム前から、あるプレッシャーに襲われていたという。「今までのクラブユース選手権で、鳥栖のキーパーは板橋洋青くんも、倉原將くんも活躍していたので、『自分がそれを崩しちゃいけないな』と思ってプレッシャーを感じていました」。準優勝した一昨年度大会の守護神・板橋洋青(現・サガン鳥栖)に、日本一を勝ち獲った昨年度大会のGK倉原將(現・びわこ成蹊スポーツ大)という“先輩”を見てきただけに、そのハードルの高さを突き付けられていた。

 だが、試合が始まれば目の前のボールに意識を集中させる。とりわけやや劣勢だった後半には何度もピンチを救う場面が。2分にはショートカウンターから、サイドを崩されてのクロスに相手が飛び込んできたが、果敢に飛び出したことでコントロールミスを誘う。さらに、10分には決定的なピンチ。相手FWと1対1になったものの、「ずっと自分はシュートストップの前に止まるということができていなくて、ちょっとそこを意識して飛び出したので、上手く反応できて止められて、自分としては良かったかなと思います」と振り返るファインセーブで回避。チームの危機を救ってみせる。

 ディフェンスラインと堅陣を築き上げ、終わってみればきっちりクリーンシートを達成。1-0の勝利に貢献する。「“あのプレッシャー”が良いプレッシャーになって、シュートも止められましたし、ゼロに抑えられたので良かったです」。満面の笑みで手応えを語る姿も微笑ましい。

 1つのポジションを争う長瀬とは、2年半に渡って切磋琢磨し続けてきた。「太陽の方が全然努力ができる選手で、自分はそこを尊敬しています。自分は全然努力できていないので(笑)、前までは申し訳なさがあったんですけど、今は試合に出た時は『太陽の分までやろう』という気持ちでプレーしているので、良いライバルではありますね」。

 2人の間柄を問うと、「鳥栖のキーパーはみんなファミリーみたいなものなので、兄弟というか、双子みたいな感じですね。一緒にオフの日は2人で温泉に行ったりします」と意外な事実も明らかに。日常のコミュニケーションもバッチリ。お互いに尊重し合う関係性も、チームの一体感へ好影響を与えているに違いない。

 頂点に立った昨年度の“クラセン”もベンチで経験していただけに、チームを取り巻く雰囲気の大切さも十分にわかっている。「去年の大会は自分もメンバーに入っていて、その時の雰囲気はわかっていますし、今回も雰囲気を維持しながら最終的な結果を残せればいいので、結果にこだわって勝ち進みます」。

 自分の役割を果たし続ける男。これからも大石の存在はピッチ内でも、ピッチ外でも、常に重要なピースとして機能していくはずだ。

(取材・文 土屋雅史)
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