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[MOM3526]長崎U-18MF鍋島暖歩(3年)_ようやく生まれた今季初ゴールは、チームに勝利をもたらす最高の一撃

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決勝PKを沈めたMF鍋島暖歩は歓喜のダッシュ!

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[7.26 日本クラブユース選手権U-18大会グループステージ 長崎U-18 1-0 秋田U-18 ロ
ード宮城総合運動場陸上競技場]

 自ら獲得したPKのスポットに立つ。長らくゴールの女神にそっぽを向かれ続けてきたが、この瞬間は不思議と落ち着いていた。「PKは基本的に自分で取ったら、自分で蹴ろうとは思っていました。普段は10番の中島(聖翔)が蹴る感じですけど、前半で少し足を痛めていたので、今日は自分が蹴ろうと」。渾身のキックがゴールネットを揺らすと、気付けばV・ファーレン長崎U-18のMF鍋島暖歩(3年=セントラルFC宮崎出身)は、チームメイトが待つベンチへと走り出していた。

 なぜか得点が入らない。「昨年もプリンスでは開幕からずっとゴールを獲って、凄くチームに対して勢いを与えてくれていた選手だったんですけど、今年はまだ公式戦での得点がなかったんですよね」と原田武男監督。4月にプリンスリーグ九州が開幕し、クラブユース選手権の予選もあった中で、鍋島のシュートはゴールに嫌われ続ける。

「プリンス開幕からずっと、ずっと、ゴールから遠ざかっていましたけど、自分でも諦めずに続けていこうという気持ちでやっていました」。今大会の開幕戦となった前日のジェフユナイテッド千葉U-18戦でも、前半に決定的なチャンスを掴むも、シュートはクロスバーに阻まれ、結果的に試合も0-1で敗戦。鍋島の心中は察して余りある。

 グループステージ突破に向けて、負けられないブラウブリッツ秋田U-18との一戦。「昨日も自分にチャンスはありましたし、チームも決め切る所を決めていれば勝利に繋がっていたゲーム内容だったので、『今日は絶対決めてやろう』という気持ちで挑みました」という鍋島だったが、前半12分に迎えたチャンスは相手GKに阻まれてしまう。

 後半5分。右サイドのDF遠藤凜太郎(2年)からクロスが上がってくる。「アイツは左足でもクロスを上げられる共通理解が頭の中にあったので、『クロスに入っていこう』と思って飛び込んでいったら、相手に押されてPKをもらったという形でした。運も味方してくれたかなと思います」。エリア内で鍋島が転倒すると、笛を吹いた主審はペナルティスポットを指さす。

 自ら名乗り出たPKキッカー。「PKは結構自信があるので、そんなに硬くならずにリラックスして蹴れたと思います」。これまでの3か月近い日々で突き付けられてきた嫌な記憶を振り払い、短い助走からきっちりとゴールネットにボールを収めてみせる。「みんなからもゴールのことは言われていたので(笑)、喜んでもらえて素直に嬉しかったですね。長く獲れていなかったので、みんなもスッキリしたんじゃないかなと思います」。走り出した先で待っていたチームメイトから祝福され、鍋島は安堵の笑顔を浮かべた。

「今日は彼にとって久々のゴールで、チームとしてもそこを望んでいたので、その結果がPKであっても、ゴールを獲るのが彼だったことで、チームも良い方向に進むのかなと思いますね」と原田監督。この大事な一戦で記録した鍋島の今シーズン初ゴールは、そのまま決勝点に。「自分もスッキリしたなという想いはありますし、ホッとした感じがあります」という11番が、ようやく主役の座を鮮やかに射止めてみせた。

 プロサッカー選手を目指し、宮崎から単身で長崎へ。「トップチームとの距離感も、他のクラブより近いんじゃないかなと。練習参加も結構行かせてもらっていますし、そういう面では自分たちが目指している所が身近に感じられるクラブかなと思います」と語ったように、鍋島もトップチームのキャンプにも参加したが、ある“先輩”からは大きな刺激を受けた。

「玉田(圭司)さんは本当にボールを奪いに行っても簡単にいなされたり、ボールタッチが繊細で、ボールと遊んでいるような感覚だったので、凄いなと思いましたね」。実に23歳年上。「親ぐらいの年齢ですよね(笑)」と笑顔で語ったワールドカップ経験者のレフティとともにした時間も糧に、ここからの大会も、残されたアカデミーでの半年も、ポジティブに過ごしていく。

「ここからもう勢いに乗って、このクラブユースでも結果という形でチームに貢献できるようになりたいですし、そこからプリンスリーグも優勝して、プレミアに昇格したいという想いがあります。その中で自分としてもまずは結果にこだわって、この半年はプレーしていきたいなと。将来はトップチームに昇格して、Jリーグで活躍できる選手になりたいと思います」。

 再びゴールの女神が微笑み始めている鍋島のフィニッシュワークからは、目を離さない方が良さそうだ。

(取材・文 土屋雅史)
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