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ジュニアから貫くV・ファーレン愛。長崎U-18MF安部大晴は「今を大事にして」さらなる成長を誓う

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既にJリーグデビューも果たしている、長崎アカデミー生え抜きのMF安部大晴

[7.26 日本クラブユース選手権U-18大会グループステージ 長崎U-18 1-0 秋田U-18 ロ
ード宮城総合運動場陸上競技場]

 アカデミー生え抜きの自分が、このクラブで活躍することの意味は、もちろん十分過ぎるほどに理解している。「ずっと下部組織にジュニアからいるのは自分だけなので、そこはちゃんとクラブに育ててもらったという意味でも、頑張らないといけないなという想いはありますし、1,2年後にはトップチームでも主力でスタメンを獲って、活躍していきたいなと思います」。クラブ史上最年少の16歳でJリーグデビューを飾ったレフティ。V・ファーレン長崎U-18のキーマン、MF安部大晴(2年=V・ファーレン長崎U-15出身)の“クラブ愛”は間違いなく本物だ。

 初戦のジェフユナイテッド千葉U-18戦は0-1の惜敗。チームとしても絶対に勝利の欲しい2戦目。ブラウブリッツ秋田U-18と対峙したゲームでも、ボランチの位置に入った安部はボールを引き出しながら、攻撃のリズムを刻んでいく。

「自分は攻撃的なタイプで、コウリュウがバランスを見てくれるので、関係性はいいと思います。ボールを取られたとしても、すぐ隣にいるから取り返してくれますし、常にカバーをしてくれて、やりやすいですね」と評するドイスボランチの相方、MF姫野晃竜(3年)との補完性も抜群。この2人の効果的なプレーが、チームの攻守の歯車を嚙み合わせる。

 後半早々に先制したものの、徐々に相手の強度に押されるシーンも増え、守備に回る時間も長くなったが、「後半はボールを保持するのも大事ですけど、まずは失点しないようにということをみんなと共通理解を持った上で、チャンスがあれば相手のハーフコートに入って、ボール保持というイメージでした」ときっぱり。戦況を見極めながら、時々での最適解を導き出す。粘り強く1-0で勝ち切ったチームの中で、安部の存在感は確かに光っていた。

 チームの指揮官を務める原田武男監督は、それでも要求レベルを高い位置に設定している。「今はU-18の一員として、しっかり役割を果たしてくれているんじゃないかなと思います。ただ、正直僕はまだ彼に対しては物足りなさを感じていますし、トップの試合には出ていますけど、周りに助けられている所もあって、もっとできると思っているので、違いをはっきり出してほしいなと。その違いを見せていくことで、周りが安部に対して納得したり、頼っていく所が出てくるはすですよね」。

 本人も足元を見つめることの重要性を口にする。「やっぱりJリーグデビューしたこともあって、周囲からもそういう目で見られるんですけど、それを意識してしまうと過信してしまったり、プレーが悪くなったりするので、常にチャレンジャーの意識で臨めるように、気持ちの整理はしています」。周囲に原田のような目線を持ってくれる指導者がいることも、安部にとって幸運であることは言うまでもない。

 現在は基本的にトップチームの練習へ参加している中で、ボランチの選手には学ぶところが多いという。「タイプが似ている人で言うと、加藤大さんは走れるんですけど、無駄走りはなくて、ボールを受けるために顔を出す所もうまいですし、ちゃんといてほしい所にいてくれたり、チームのために走ることができている人なので、そこは見習いたいなと思います。あとは、カイオ(・セザール)にキープされたらもう取れないですね(笑)。練習でもカイオとマッチアップしたりするんですけど、強く行っても倒れないので、その強度は意識しています」。今の好調を支えている2人を参考に、自身の向上心も磨き続けている。

 自分にできることと、ここからの課題も明確に捉えている。「ボールを受けてからの配球というか、どんどんボールを受けて、出して、というのはできているのかなと思いますし、身体がまだできていなくて小さいので、『相手に触れないように』というのは意識してやっています。ただ、守備の面ではもっと奪える力を付けていきたいなと。昨日の五輪代表の試合だったら遠藤航さんは、ボール奪取のところがやっぱり凄かったので、攻守どっちもバランスよくやらないといけないなとは思います」。

 長崎生まれの長崎育ち。小学生時代からいつも傍にあった、このエンブレムを付けてピッチに立つことで、さらなる成長を誓う。「目標は世界で活躍することなので、最終的に世界でやるためにも、今は目先のことに集中したいというか、今を大事にしてやっていかないといけないなと思います」。地に足のついた発言も頼もしい。

 小柄な身体に託されているクラブの未来。ここから安部が描いていく成長曲線と、V・ファーレンが描くであろうそれには、どちらにも多くの人の、多くの夢が乗せられている。

(取材・文 土屋雅史)
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