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京都U-18は終盤に「チーム全員の力でのゴール」で堂々とグループステージ突破!

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京都サンガF.C.U-18はMF黒澤蒼太(25番)の同点弾に歓喜

[7.28 日本クラブユース選手権U-18大会グループステージ 大宮U18 1-1 京都U-18 前橋工業高校G]

「引き分け以上で決勝トーナメントに上がれるということだったんですけど、『そういうことを考えるのはやめよう』と監督からもコーチからも話があって、引き分け狙いというのも違うし、勝ちに行って、1位で堂々と上がりたいと思っていたので、とにかく追い付きたいという気持ちが、あの同点ゴールに繋がったかなと思います」。キャプテンのMF遠山悠希(3年)が、チームの想いを明かす。

第45回日本クラブユース選手権(U-18)大会は28日、グループステージ第3日の15試合を行った。大宮アルディージャU18(関東3)と京都サンガF.C.U-18(関西2)が対峙した一戦は、前半34分にMF高橋輝(2年)のゴールで大宮U18が先制するも、後半31分に京都U-18は途中出場のMF黒澤蒼太(2年)が同点弾。試合は1-1で終了し、京都U-18はラウンド16へ進出。大宮U18は無念のグループステージ敗退となった。

 C組はグループステージ2日目を終えた時点で、全チームに決勝トーナメント進出の可能性があった。だが、3日目開催当日にツエーゲン金沢U-18が出場辞退を表明。当該チームに関するすべての勝敗は無効になるという発表があり、それぞれの立ち位置が変わる。この日の試合がなくなったジュビロ磐田U-18は1勝1敗で勝ち点3、得失点差マイナス1。京都U-18は1勝で勝ち点3、得失点差プラス2。大宮U18は1敗で勝ち点0、得失点差マイナス1。京都U-18は2点差負けでも突破が決定。大宮U18は勝利すれば突破が決まることになった。

「僕も聞いたのは試合の30分前だったので、選手たちには伝えませんでした」とは京都U-18の志垣良監督。大宮U18も勝利が必要だということは、試合前から大きく変わらない。お互いが“ディスゲーム”に集中する中で、「立ち上がりは結構チーム全体の流れが悪かったですね」と遠山も認めた通り、先に攻勢に出たのは大宮U18。10番を背負うFW山崎倫(3年)とMF相澤亮太(3年)の仕掛けをアクセントに、ドイスボランチのMF堀田尚輝(3年)とMF阿部来誠(2年)も巧みな配球を。オレンジの勢いがピッチを侵食していく。

 すると、先に歓喜を享受したのはやはり大宮U18。前半終了間際の34分。山崎が左へ振り分けたボールを、阿部は巧みなキックフェイントでマーカーを外しながらクロス。ファーに飛び込んだ高橋がヘディングで合わせたボールは、ゴールネットへ弾み込む。双方にとって最初の決定機をモノにした大宮U18が1点をリードして、最初の35分間は終了した。

「前半は自分たちのペースに持ってくることがなかなかできなくて、『もう1回気を引き締めて、後半もう1回ちゃんとやっていこう』という話をしました」とDF大坪謙也(3年)も話した京都U-18は、後半に入ってギアを上げる。10分には遠山の右CKに、飛び込んだ大坪はわずかに触れなかったものの、惜しいシーンを。前線のFW勝島新之助(3年)とMF小山真生(2年)、MF平賀大空(2年)にもボールが入り出し、チャンスの芽は見えてくる。

 やや押し込まれる展開の大宮U18も、決定的なシーンはきっちり創出。17分に阿部が蹴り込んだ左CKに、DF小澤晴樹(2年)が完璧に合わせたヘディングは、京都U-18のGK岡田修樹(3年)がファインセーブで応酬。19分にも左サイドを梅澤が単騎で運び、そのままカットインから枠へ収めたシュートは、ここも岡田が懸命にキャッチ。追加点は許さない。

 25分に京都ベンチが動く。アタッカーのMF中野紘太郎(3年)と黒澤を投入すると、この采配が的中。31分。左サイドへスムーズに展開すると、左SB飯田陸斗(1年)はマイナス気味に折り返す。「最初はニアに飛び込もうと思ったんですけど、1人フォワードの選手が潰れてくれて、マイナスが空いていたので、そこで待っていたら良いボールが来て、あとは決めるだけというか、ちゃんと浮かないように抑えるだけでした」と振り返る黒澤のシュートが、ゴールネットを豪快に揺らす。

「自分たちはチーム全員が繋がって、チーム全員の力でのゴールという形が多いと思うので、自分たちもそういうところは意識していますし。そういうゴールが決まることで、チームとしての団結力や絆、『負けないぞ』という気持ちがさらに強まって試合に出ていくと思うので、それが形になって良かったなと思います」(遠山)。ファイナルスコアは1-1。勝ち切れなかったとはいえ、修正した後半の終盤で同点まで流れを持っていった京都U-18が、グループ首位通過でラウンド16へと勝ち上がることとなった。

 同点に追い付いた直後の後半34分。志垣監督は交代カードを切る。MF藤江歩夢(3年)と一緒にピッチへ送り出されたのは、DF柴田将伍(2年)。「あの名古屋戦の悔しい想いは2度と繰り返さないようにしようと決めて、準備してきました」という2年生DFにとっては、“あの名古屋戦”以来の公式戦のピッチだ。

 7月3日。高円宮杯プレミアリーグWEST第9節。ホームに名古屋グランパスU-18を迎えた一戦。2-2で迎えた後半39分に交代で登場した柴田は、その1分後に自らのファウルでPKを献上。それを決められ、2-3で敗戦。試合終了直後。ピッチに突っ伏して悔しがる姿が印象的だった。

「名古屋戦以降、途中出場の機会が減ってしまって、その中で自分はどうやったら活躍できるかとか、自分の特徴をどうやったら生かせるかとか、そういうのがずっと心の中にあって、自分の特徴はスピードやったり、フィジカルやったり、戦う姿勢というところやったので、そういうところを今日のピッチで最大限出せるように、試合前からずっとイメージしていました」(柴田)。

 あの日と同じタイスコアという、大事な局面での起用。「この年代なので、やっぱりミスから学ぶことって多いと思いますし、頭には絶対に彼も名古屋戦が残っていると思いますし、それを繰り返さないことが大事かなという。起用はたまたまですよ」と志垣監督は語ったものの、柴田が意気に感じないはずはない。

 後半アディショナルタイムには、積極的なドリブルでCKを獲得し、時間を上手く消費させるプレーも。「自分みたいなプレースタイルは、相手が疲れている後半の終盤で、より特徴を生かせると思っているので、今日の結果に少しでも貢献できたのは良かったと思います」。勝ち切れなかった悔しさは滲ませつつ、“あの名古屋戦”とは違う結果をピッチで味わった柴田には、少しだけ充足感が漂ってるように見えた。

 サッカーはミスがつきもののスポーツ。そのミスを成長の糧に転化させようとする指揮官と、成長の糧にしてやろうと気持ちを立て直せる選手が、サンガにはいる。この年代において、こういう成長の過程は、やはり勝敗と同じぐらい大切なこと。なかなか勝利を挙げられなかったチームが、5戦無敗と好調を続けている理由は、そういうところにも潜んでいるのかもしれない。

(取材・文 土屋雅史)
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