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川崎F U-18は鮮やかな2ゴールで前回王者を破り、見事にグループステージ突破!

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FW五十嵐太陽(10番)のヘディングで川崎フロンターレU-18が先制!

[7.28 日本クラブユース選手権U-18大会グループステージ 鳥栖U-18 0-2 川崎F U-18 アースケア敷島サッカー・ラグビー場]

 開幕戦から無失点の2連勝を飾っている前回王者のサガン鳥栖U-18(九州1)だったが、2位の川崎フロンターレU-18(関東5)と3位のFC東京U-18(関東9)が勝ち点3と得失点差で並ぶ状態で、かつ最終戦の相手が2位の川崎F U-18とあって、負けると一転して決勝トーナメント進出がかなり厳しくなるという状況だった。

 引き分けでもいい。そういうメンタリティーが働くのを警戒してか、試合前に鳥栖U-18の田中智宗監督は「勝ったらどうとか考えるな。まずは相手に集中をしろ。川崎はトップチームを見てもわかるように力のあるチームだ」と東京五輪メンバーに下部組織出身選手を5人も輩出していることも引き合いに出しながら、選手たちの気持ちを引き締めた。

 だが、いざ試合が始まると、「もう勝つしかないというメンタリティーで臨めた」と長橋康弘監督が語ったように、立ち上がりから鋭い出足で前に出てきた川崎F U-18に押し込まれるシーンが続いた。

 前半9分に川崎F U-18は右CKを得ると、右サイドハーフのMF秋葉拡人(3年)のキックをニアでFW田中幹大(3年)がヘッドですらし、ファーに飛び込んだFW五十嵐太陽(3年)がフリーでヘディングシュートを叩き込み、先制に成功した。

 これで勢いづいた川崎F U-18は、前線の田中と五十嵐の2トップが何度も動き出しを仕掛けて、中盤からのパスを引き出すと、守備面でも「後ろから繋がれたら厄介なので、なるべくロングボールを蹴らせるように強く寄せたり、コースを切ったりした」(五十嵐)と、頭脳的かつ強度の高いスプリントを駆使して、前線からのプレスを仕掛けた。

 川崎F U-18の攻守における推進力あるプレーもあって、鳥栖U-18は序盤かららしくないパスミスを連発。得意のサイドチェンジや最終ラインからの縦パスを川崎U-18にインターセプトされて、カウンターを受ける悪循環に陥った。

 後半、鳥栖U-18は「カットインしてクロスやシュートなどがうまく出せていなかった」とDF中野伸哉(3年)が語ったように、左サイドハーフのMF福井太智(2年)と左SBの中野の連携がスムーズに行かないと見るや、後半から中野を右サイドバック、右サイドバックのDF安藤寿岐(3年)を左に置き換えた。

 だが、それでも状況は変わらず。逆に後半3分に右サイドを突破したDF高畠捷(3年)のクロスを、ニアで田中がヘッドでゴール左隅に流し込んで、川崎F U-18が追加点を挙げた。

 この時点でグループAのもう1試合、FC東京U-18vsカターレ富山U-18の一戦が、1―0でFC東京リードだったため、鳥栖U-18は同点に追いつくだけではなく、1点を返せば状況は変化する展開だった。

 しかし、その1点が遠かった。7分にFW小西春輝(3年)に代えてMF中村尚輝(3年)を投入するなど、鳥栖U-18も攻撃にテコ入れをするが、キャプテンのGK青山海(3年)、CB高井幸大(2年)らが束ねる川崎F U-18の堅守は崩れなかった。

 試合はそのまま2-0でタイムアップ。FC東京U-18が2-1で富山U-18を下したため、この瞬間に川崎F U-18が首位で決勝トーナメント進出を決め、FC東京U-18が得失点差で1点上回って2位でフィニッシュ。首位だった鳥栖U-18は3位に転落し、グループリーグ敗退が決まった。

 まさに天国と地獄のコントラストがピッチ上に描かれた。鳥栖U-18も決して慢心していたわけではない。近年、ユース年代で著しい結果を残しているからこそ、どのクラブも『打倒・鳥栖』を掲げて、高いモチベーションを持って臨んでくる。冒頭で触れた通り、2勝をしていながらも次への道が開かないという難しい状況も重なって、彼らは見えない重圧に苦しめられたのも事実だった。「この悔しさは絶対にプレミアにつなげたい」と中野が語ったように、結果が出てしまった以上、受け入れて前に進むしかない。この経験は彼らにとって今後の成長にプラスに働くことを願ってやまない。

 一方で川崎F U-18は「鳥栖が相手というのもあって燃えていた」と五十嵐が語ったように、最初から最後まで気迫みなぎるプレーを見せ、勝利に値する出来だった。この勝利を決勝トーナメントの躍進につなげるべく、彼らは明日の決戦に備える。

 8時45分キックオフと言えど、強烈な猛暑の中での彼らの激闘に心から拍手を送りたい。

(取材・文 安藤隆人)
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