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「その思いは痛いほど分かる」…“2人”の思いを背負ってピッチに立つGK谷晃生

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右からGK大迫敬介(広島)、GK谷晃生(湘南)、GK鈴木彩艶(浦和)

 1人しかピッチに立てない特殊なポジションだ。そして、東京五輪本大会で、その1人に指名されたのがU-24日本代表GK谷晃生(湘南)だった。しかし、1人でピッチに立っているわけではない。ともに切磋琢磨してきた仲間の思いを背負って、ゴールマウスを守っている。

 東京五輪本大会メンバーに招集されたのは谷、GK大迫敬介(広島)、そしてバックアップメンバーから“昇格”したGK鈴木彩艶(浦和)の3選手。ともにJ1リーグで出場機会をつかみ、スタメン争いはし烈を極めた。そして、第1GKとして東京五輪本大会に臨むことになったのが、谷だった。

 大会を追うごとに成長してきた。グループリーグ3試合では第2節メキシコ戦の直接FKによる1失点に抑え、決勝トーナメント進出に貢献。そして、PK戦までもつれ込んだ準々決勝ニュージーランド戦では、相手のPKをストップし、チームを準決勝へと導いた。その成長ぶりにキャプテンのDF吉田麻也(サンプドリア)も「晃生が大会を通じて成長していると僕も思う。コンディションもパフォーマンスも上がってきている。よく(PKを)2つ止めてくれたなと思う」と賛辞を贈ったほどだ。

 自身の努力が実を結んだのは間違いないだろう。そして、「お互いに刺激しあいながら、高めあいながらやってきた。その中でお互いがお互いをリスペクトしているし、2人のいいところを学んで自分のものにしたい」という大迫と鈴木の存在も大きかった。

 ここまで谷が全試合フル出場する一方で、大迫はベンチから、鈴木はスタンドから戦況を見守ってきた。ピッチに立てない悔しさは当然あるだろうし、谷も「サコ(大迫)と彩艶が一番悔しい思いをしている。僕も試合に出られない時期があったので、その思いは痛いほど分かる」と語るとともに、2人への感謝を示している。

「本当に、自分のために、自分が気持ちよく試合に臨めるように、練習からいろいろなサポートをしてくれている。試合前やハーフタイム、試合中にも、いろいろと声を掛けてくれて、本当に自分の支えになっている。その思いを何とかピッチ上で、自分が表現しないといけない」

 明日行われる3位決定戦メキシコ戦では、おそらく谷がゴールマウスを守ることになるだろう。しかし、1人でピッチに向かうのではない。“3人”の力を合わせてゴールを守り抜き、日本に53年ぶりの銅メダルをもたらしたい。

(取材・文 折戸岳彦)
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