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静岡学園の10番MF古川陽介、「日本で一番巧い選手」へ挑戦の夏

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静岡学園高の10番MF古川陽介は、インターハイで「日本で一番巧い選手」へ挑戦

「日本で一番巧い選手」へ、挑戦の夏だ。静岡学園高(静岡)の10番MF古川陽介(3年=京都サンガF.C.U-15出身)は、21年インターハイ最注目のドリブラー。同校OBのMF大島僚太や東京五輪日本代表MF旗手怜央(ともに川崎F)を育てた川口修監督が、「ドリブルは日本(の高校生)で一番巧い。(静岡学園でも)歴代トップ3に入るくらいのドリブラー。(相手のマークを)外す力というのは一番良いくらい。シュート決まり始めたら、日本代表に入れる。仕掛けたら取られないから。ドリブルで外国人を抜いちゃうと思う」と認めるMFはインターハイでその力を証明する。

 川口監督は古川のドリブルについて、「逆取ってから速い。あれ(DFを置き去りにする動き)がどこのチームとやってもできる」と説明する。身長は175cmほどで、抜きん出たスピードやパワーを持っている訳ではない。それでも、細かなボールタッチで相手DFの足を止め、切り返しから一瞬の加速でDFを振り切る。そのドリブルはプリンスリーグ東海やインターハイ予選で止まらなかった。

 本人も高い場所を見据えている。「日本で一番巧いというのは前提として、世界でも通用するようなドリブルにしたい。日本人で、世界でドリブルで通用するする選手とか少ないじゃないですか。そこでも2、3人抜いて決められたりしたら驚くと思うので、驚かせられるプレーを見せたいですね」と古川。高校生相手だけでなく、世界相手にPA付近で勝負できる選手になるためにこの夏も鍛錬を重ねている。

 今やJクラブも注目する古川だが、静岡学園のユニフォームを着用できない可能性があったのだという。中学3年時、父の勧めもあって練習会に参加したが、「僕の態度が悪かったみたいで……」。確かに巧い。だが、川口監督は当時の彼のプレー、態度から静岡学園でサッカーがしたいという情熱を感じなかった。

「プレーはそこそこ良かった。でも呼んで、『ここでやりたいの?』と聞いたら下とか、外向きながら『ハイー』と。これ、厳しいかなと。その後、(所属する)京都に電話して、『来てもらったんだけど、本気の姿勢が見えなかったので。本人と話してみて下さい』と言ったんだよ」(川口監督)。

 飄々とした空気感は今も変わらないが、現在と決定的に違っていた部分がある。「自分のハングリー精神や、向上心があんまなかったと思います」と古川。仕掛ける回数も少なく、淡々とやっていた。京都への連絡後すぐに、川口監督の下へ「もう一度、チャンスを下さい」という返事があり、本人は静岡学園に進むことになったが、当時はまだまだメンタル面が不安定だった。

 京都U-15では、「(他の選手に)負けていない」という気持ちもあったが、評価を勝ち取ることはできず、ほとんど公式戦を経験していない。それでも、古川は「(高校進学時に)色々頭下げてもらって、(京都には)感謝しています」と口にする。迷惑をかけた分、姿勢を変えて静岡学園で頑張ろうと入学したものの、なかなか結果を出すことができなかった。

 それでも、「(1年生チームを指導する部長の齊藤)興龍さんが『特長があるのが良いぞ、特長ある選手が目立てる』と言ってくれていて、『ドリブル磨くしか無い』と思っていて。能力も高くないし、守備もあんまできる方ではない。ドリブルで違いを見せることしかない。(齊藤部長も)コーンドリとか力抜いていたら怒ってくれた」という古川は、自分を信じてドリブルを磨き続ける。

 2年時にAチーム入りしたが、夏は降格すれすれ。怪我もあり、走れず、ミスも多かった。精神的にも落ちていたというが、「でも、どうせ(Bチームに)落ちるんやったら、(消極的にやるよりも)そっちの方がええやろと思い切ってやって」Aチームに残ると、偶然出場したU-16代表候補との練習試合でゴール。チャンスを掴んで出場機会を増やした。

 そして、古川は選手権予選で敗れて涙する先輩の姿から、「来年絶対に引っ張っていかなあかん」とまた気持ちを高めて最後の1年に向かってきた。インターハイ前最後の公式戦となったプリンスリーグ東海・常葉大橘高戦で圧巻の後半アディショナルタイムV弾を決めるなどチームを勝たせる選手になっているが、課題のシュート、クロスの精度はまだまだ。インターハイでは、ドリブルで目立つことはもちろん、課題となってきた部分でも結果を出して勝利に結びつけたい考えだ。

「だいぶフラフラしていました」という3年前から周囲の支えもあって変化し、「日本で一番巧い」「世界でも通用するドリブルを」とハングリー精神、向上心を持って日々に臨むエース。インターハイを飛躍への新たなきっかけの大会にする。

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(取材・文 吉田太郎)
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