[8.16 インターハイ2回戦 神村学園高 5-1 福井商高 三国運動公園陸上競技場]

　注目のストライカー、FW福田師王(2年)がハットトリックを達成した陰で、その2つのゴールをアシストし、自らも1点を挙げていたこの男にも、十分に3ゴールを叩き出すだけのチャンスはあった。「最後の質のところは集中してやらないととはいつも思っています。点を獲ったら全体の雰囲気も良くなりますし、自分のプレーもより上がるし、そういうことも大事ですから」。神村学園高が誇る左サイドのスピードスター。MF篠原駿太(3年=太陽スポーツクラブU-15出身)の突破力、無双状態に。

　とにかく、速い。「小さい頃から走ることが好きで、ずっと長距離走の練習をしていたら速くなりました。今は長距離は苦手ですけど(笑)」。一瞬でアクセルを踏み込む加速も、やや距離のあるダッシュも、とにかく速い。

　しかも初戦に続いて、この日の福井商高(福井)戦でもゴールを奪っている。前半16分。MF畠中健心(3年)の左CKから、「シュートを打てる距離だったので、利き足じゃないんですけど、思い切り強く打ちました。キーパーの位置とか見ていなかったです」と笑顔で振り返ったゴールは、右足での貴重な先制弾。ボールこそ握りながら、フィニッシュの少なかったチームにとって、大きな勇気を与える1点になったことは言うまでもない。

　この日は福田との“ホットライン”も冴えていた。「中を見たらもう福田が必ず走っているので、そこはもう常に見ています」という信頼関係の元に、縦へと突破しながら低いボールのクロスを“後輩”へ何度も供給。この形だけでも福田はハットトリック、篠原は3アシストを記録できそうなだけのクオリティを披露。福井商の守備網を華麗に切り裂いた。

　サイドプレーヤーにとって、中央の選手の“入り方”は超重要事項。「福田のニアがいつも警戒されて潰されるんですけど、そうしたら大迫(塁)もいるので、中の状況を見ながら感覚で上げていますし、強くパスを出さないとキーパーに取られるので、強く蹴ることは意識しています。中を見てフリーだったらどんどん付けますし、それで相手が中を閉めてきたら自分が突破できるので、相手と駆け引きしながら常にできるのはいいところだと思います」。神村学園にとっては、この左サイドで攻撃に幅を持たせられることも、大きなストロングになっている。

　この2回戦に関して、必要だったのは自身の2ゴール目。前半には飛び出したGKの位置を見極めながらループシュートを狙うも、ボールは左のゴールポストを直撃。後半にも味方のシュートがクロスバーに当たったこぼれに反応するも、放ったシュートはDFとクロスバーにヒットし、次の1点は奪えなかった。「自分も決定力は課題だと思っています」。これが加われば、まさに“鬼に金棒”。さらに上のステージでプレーする機会も自ずと巡ってくるはずだ。

「プロの練習会だったり、いろいろなことを経験させてもらっている部分があって、それで自信が付いて、『自分でやろう』という気持ちになりました。神村はサイドからが攻撃のスタートですし、自分が攻撃をしないと始まらないと思っているので」。

　各所にタレントの揃う神村学園でも、違いを生み出せるアタッカー。スペシャルなスピードを持つ篠原の存在は、チーム躍進の一翼を軽やかに担っていく。

(取材・文　土屋雅史)

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