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この完敗を大きな転機とするために。流経大柏は再び前を向いて日常を積み重ねる

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流通経済大柏高は冬の全国でのリベンジを誓う(写真協力=『高校サッカー年鑑』)

[8.16 インターハイ2回戦 流通経済大柏高 0-3 大津高 三国運動公園人工芝グラウンド]

 率直に言って、完敗だった。

「1個1個アンラッキーな所も含めて負けたというよりは、自分たちももっと良いサッカーをできたし、そこを相手にうまく封じられた形で、もっともっと上手い相手に対して、自分たちももっと上手くならなきゃなと思えた試合でした」(渋谷諒太)「この大会は無失点、シュートゼロというのを目標にしていたんですけど、自分がどういう声掛けで発信できるかというのがまだまだ足りていなくて、自分の能力の低さが分かったかなと思います」(田口空我)。

 0-3というスコアで、大津高(熊本)とのプレミア対決に敗れた流通経済大柏高(千葉)。この悔しい70分間が大きな転機だったとあとから振り返れるように、彼らはまた前を向いて、日常を積み重ねていくことになる。

 試合はいきなりの失点から始まった。開始1分経たないうちに、セットプレーからオウンゴールという形で先制を許すと、以降もいつものアグレッシブさをなかなか発揮し切れない。「相手が9番をターゲットにするのはある程度わかっていましたけど、それでウチの中盤の選手たちが『守備から入らなければ』となって、どうしても引っ繰り返されてボールを握れなかったので、前半は苦しんじゃったかなと思います」と榎本雅大監督。大津の最前線に配された、190センチを超える大型FW小林俊瑛(2年)へのロングボールと、そのセカンドも含めた対応で後手に回った感は否めない。

「プレミアEASTで前に当ててくるチームは青森山田ぐらいでしたし、青森山田のフォワードもあまり身長が高くないので、こういう190センチレベルの身長の相手でも、自分が競り勝って、前に跳ね返さないといけなかったなと思います」と田口は自身の責任を口にしたが、大津は決して放り込むだけのチームではない。全体のアクションでも、リアクションでも、流経大柏は劣勢を強いられた。

 それでも後半に持ち直した点は、このチームのポテンシャルを示している。「やっぱりどうしても“点取りゲーム”にならないように、ゲームをちゃんと作らないと、土台がないと点が来ないのはわかっているから」と榎本監督も話したように、テンポの良いパス回しからフィニッシュを迎えるシーンもあったが、やはり前半に喫した2点のビハインドが重くのしかかる。最後はセットプレーから3点目を奪われ、0-3でタイムアップを迎えることとなった。

「青森山田以上の衝撃だなという感じがしますね。良い勉強になりました。大津が単純に上でした。大人と子供みたいでしたよね」。榎本監督は潔く完敗を認めている。だが、続けた言葉もこの指揮官らしい。「『今のままじゃダメだよ』ということです。でも、アイツらもそれは感じていると思うし、そういうことを感じない連中じゃないから。こういうことを跳ね返して成長していくというのが大事で、今回のインターハイは2試合で終わっちゃったけど、もの凄く良い基準ができましたね」。

「いつもだったら取れている所が綺麗に取れなくて、取れたとしてもちょっと足を伸ばして頑張ったりして、また1枚2枚出てきて、そういうところを自分たちはできなくて、相手はできていたのかなと。守備も攻撃も相手は良かったので、本当に完敗かなという感じです」と、こちらも結果を真摯に受け止めた渋谷も、敗戦の中に自分たちが積み上げてきたモノへの信頼も口にする。

「相手は長身のフォワードを“上”で生かしてきましたけど、やっぱり自分たちはそういう特徴がない中で、“下”で勝負できるのは絶対に強みだと思うので、やってきたことは間違っていないと思いますし、11人全員でサッカーするというのは決まっていたので、冬に向けてもっともっとチームとして戦えるようにやっていけたらなと思います」。

 おそらくこれで腹は決まった。日本一への欲求が、より高まったことも間違いない。流経大柏は冬のリベンジを期して、日常を真摯に、丁寧に、1つずつ積み重ねていく。

(取材・文 土屋雅史)
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