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高度な駆け引きで流れが二転三転した好ゲーム。PK戦の末、岡山学芸館が初の準々決勝へ

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初のベスト8進出を喜ぶ岡山学芸館高イレブン

[8.18 インターハイ3回戦 飯塚高 0-0(PK2-4)岡山学芸館高 日東シンコースタジアム丸岡サッカー場]

 初のベスト8進出を狙う岡山学芸館高(岡山)と、初出場でベスト8を進出を狙う飯塚高(福岡)。共に新興勢力として成長著しいチーム同士の戦いは、お互いがストロングポイントを消し合う、膠着状態の前半から始まった。

 岡山学芸館はFW山岡亮太木村匡吾(2年)と檀野世那(3年)のダブルボランチの3枚が状況に応じてポジションを変え、4-4-2システムをベースに4-4-1-1、3-4-2-1など可変しながら攻撃を組み立てた。

 一方で飯塚もベースは4-4-2システムだが、2トップを起点に、右の中川知哉(3年)と左の吉田龍介(3年)の両サイドバックが高い位置を取り、中盤のボックスが流動的に動いて相手の間隙を突いていくサッカーを展開。前半はお互いの出方を探り合うような展開となり、そのまま35分間が終了した。

 スコアレスで迎えた後半は、前半と一変して流れが目まぐるしく変わる激しい攻防戦となった。後半立ち上がりに攻め手を強めたのは岡山学芸館。2トップが高い位置からプレスを仕掛け、2列目のラインも積極的に前に出た。

 だが、飯塚も立ち上がりのピンチを防ぐと、徐々に左のMF池田悠夢(2年)、右のMF池田光希(3年)の突破力を生かして、DFラインの裏のスペースを攻略し始める。5分にはスルーパスに反応したFW高尾流星(3年)が抜け出し、決定的なシュートを放つが、これは岡山学芸館のGK寺島紳太朗(3年)が完全に読み切って右手一本でスーパーセーブ。7分には右サイドを突破した池田光が、ファーサイドでフリーだった池田悠を目掛けてライナー性のクロスを送り込むが、これもGK寺島のパンチングで阻まれた。10分にも左からの折り返しをFW村越琉威(3年)がシュートを放つが、これはバーの上。

 すると11分、今度は岡山学芸館がイニシアチブを奪われていたサイドにテコ入れをする。1トップのFW寺脇琉生(3年)に代えてMF小野大輝(3年)を、右サイドハーフの田中壱晟(3年)に代えてFW今井拓人(2年)を投入。左サイドハーフだった山田蒼(2年)を右に、今井を左サイドハーフに置いた。

「飯塚の守備が硬くてなかなか崩せなかったし、高い位置でボールを持たれて押し込まれていたので、もう一度流れを取り戻そうと思った」という高原良明監督の狙いが的中し、今度は岡山学芸館のサイドが活性化。山田のボールキープ力と今井の縦への突破力を駆使して、高い位置で起点を作ると、中央の山岡と木村に効果的なボールが入るようになり、ペースは再び岡山学芸館の元へ。

 18分、サイドからのクサビを受けた山岡がペナルティーエリア内で1人交わしてシュート。これは飯塚GK別所利樹(3年)が横っ飛びでファインセーブ。さらに1トップに入った小野の落としを受けた檀野がミドルシュートを放つが、これはGK別所の正面を突いた。

 ピンチを凌いだ飯塚も25分、左を突破した村越がゴールを狙うが、放ったシュートはサイドネット。そして、後半アディショナルタイムには岡山学芸館が猛攻。縦に鋭いショートカウンターを何度も繰り出す。ラストプレーは山岡のフリックから小野が抜け出し、そのまま持ち込んで強烈なシュート。これをGK別所が弾いてからタイムアップ。

 共にチャンスを作りながらも決めきれないまま時間は経過し、勝負は0-0のままPK戦へ。PK戦では2人外した飯塚に対し、岡山学芸館が1人外した以外は全員が決めて勝負あり。岡山学芸館がベスト16の壁を破って、悲願のベスト8初進出を手にした。

 スコアこそ動かなかったが、各局面で高度な駆け引きが展開され、流れが二転三転する展開は見ていて非常に面白かった。「グループで戦うということがきちんとできた」と岡山学芸館・高原監督がチームの成長を口にすると、敗れた飯塚のキャプテン・中川も「相手が可変してきて、対応は難しかったけど、頭をフル回転しながら戦えた」と経験という大きな財産を手にしていた。共に得るものが大きかった一戦。PK戦で勝敗は決したが、両チームに心から拍手を送りたい好ゲームであった。

(取材・文 安藤隆人)
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