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[MOM3558]岡山学芸館GK寺島紳太朗(3年)_初の8強へ導いた“努力のビッグセーバー”

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70分間、そしてPK戦でも好守を見せた岡山学芸館GK寺島紳太朗

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[8.18 インターハイ3回戦 飯塚高 0-0(PK2-4)岡山学芸館高 日東シンコースタジアム丸岡サッカー場]

 PK戦に突入すると、ベンチから「紳太朗がいるから大丈夫だ」という声が飛んだ。岡山学芸館(3年)のGK寺島紳太朗(3年=FC.Avenidasol U15出身)がPKに絶大な自信を持っていることは誰もが知っていた。

 今から2年前の茨城国体。彼は岡山県選抜の一員として出場し、サブGKであったが、PK職人という側面を持っていた。初戦の神奈川県選抜戦でいきなり出番がやってきた。後半アディショナルタイム2分に投入されると、2人のキックをストップし、優勝候補を破るという金星の立役者となった。

 そして、迎えた今大会。プリンスリーグ中国開幕戦以降は、同じ3年生のGK難波晴貴(3年)にレギュラーの座を奪われ、ずっとベンチを温めていたが、大会直前にレギュラーを奪い返して、今大会はPK要員ではなく正GKとして臨むこととなった。

 1回戦の比叡山高(滋賀)戦。1-1からPK戦にもつれ込むと、ここでも2本のキックをストップして勝利に貢献。2回戦ではプリンスリーグ関東に所属する強豪・矢板中央高(栃木)の攻撃をシャットアウトして、チームを1-0の勝利に導いた。

 そして、初のベスト8進出をかけた飯塚高(福岡)戦。彼は70分間の中でもチームを助けるビッグセーブを披露した。27分、左サイドを突破した飯塚MF池田悠夢(2年)の折り返しに対し、姿勢を崩すことなく滑らかなサイドステップで、ニアに待ち構えていたFW高尾流星(3年)のシュートコースに入ると、高尾のシュートを鮮やかな横っ飛びでセービング。

 さらに40分には、左サイドでスルーパスに反応した飯塚FW高尾が完全に抜け出して、寺島と1対1に。ここで寺島は無闇に飛び込まず、相手のステップを見ながら距離を詰めて、逆サイドネットを狙ったシュートを完全に読み切ってから精一杯伸ばした右手一本でスーパーセーブ。42分には右サイドを突破した飯塚MF池田光希(3年)が、ファーサイドでフリーだったMF池田悠夢を目掛けてライナー性のクロスを送り込むが、これも迷わず前に出て右手一本でパンチング。通っていたら決定機だっただけに、彼の判断力がチームの窮地を救った。

 高い集中力を維持したまま70分間が終了し、勝負はPK戦へ。彼のこれまでの活躍ぶりがあったからこそ、冒頭の声が仲間から飛んだ。そして、寺島はその期待に見事に応えた。飯塚1人目のキックを完全に読み切って、右手一本でセーブ。このキックはグラウンダーで左コーナーを狙った質の高いキックだっただけに、彼の反応の速さと手足の長さがゴールを破らせなかった。その後、両チーム1人ずつ外したが、寺島の1本目のセーブが効力を発揮し、PK戦4-2で勝利。悲願のベスト8初出場を果たした。

「PK戦は絶対に止める自信があった」と試合後、自信に満ちた表情を浮かべた寺島の良さはPKだけではなく、セービング、ハイボールの処理ともにハイレベルでチームに安定感をもたらしていた。

「ずっと難波が出場をしていて悔しかった。でもあいつは反応が良くて1対1のシュートストップがうまいし、足元も相手に寄せられてもしっかりとサイドハーフなとに繋げられる。僕に足りない部分なので学んできましたし、逆に僕の武器であるサイズと手足の長さを生かした守備範囲の広さを磨いてきました」と語ったように、ライバルと自分自身に真摯に向き合って自己研鑽を続けてきた。だからこそ、周りの信頼を掴み、プラスアルファでPKの強さもより魅力的なものとして引き立った。

「ベスト8という結果で満足せずに上を狙いたい。次も僕ら守備陣がゼロで抑えれば、必ず前が点を取ってくれる。そのために明日も全力を尽くしたいです」。日々成長を続ける頼もしい守護神・寺田紳太朗。岡山学芸館の快進撃を支える努力のビッグセーバーにこれからも目が離せない。

(取材・文 安藤隆人)
●【特設】高校総体2021

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