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大阪桐蔭は互角の戦いを繰り広げるも「決め切る」強さを発揮した静岡学園がしたたかにベスト8へ!

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静岡学園高は2-0で大阪桐蔭高を撃破!(写真協力=『高校サッカー年鑑』)

[8.18 インターハイ3回戦 静岡学園高 2-0 大阪桐蔭高 テクノポート福井総合公園スタジアム]

 スコアほどの実力差はなかったと言っていい。実際にシュート数では敗れた大阪桐蔭高(大阪)の方が上回っている。ただ、キャプテンのDF小林柾輝(3年)が語った言葉が、この試合を如実に表していた。「チームでの崩しは自分たちもできていたんですけど、やっぱり最後の『決め切る』というところで相手との差が生まれてしまいました。強豪というのはそこでしっかり決め切って、上位に上がっていってということをしてくると思うので、そこで自分たちの甘いところが出たと思います」。

 決め切る力は、やはり強者の証。18日、インターハイは3回戦が開催。静岡学園高(静岡)と大阪桐蔭が激突した好カードは、前半3分にDF小泉龍之介(3年)、35+2分にMF玄理吾(3年)と、ゲームのポイントになる時間帯で1点ずつを奪った静岡学園が、ベスト8へと勝ち上がった。

 先制点が生まれたのは開始わずか3分。「今まで出られていなくて悔しい想いがあったので、しっかり良いプレーをたくさん出せたらいいなと思っていました」と話した今大会初スタメンの右サイドバックが輝く。

 右からのCK。左SBの野村海翔(3年)が丁寧に蹴り込んだボールがこぼれると、いち早く反応した小泉は「飛び出したキーパーが触れなくて自分のところに転がってきたので、『キーパーが出ているなら上は行けるかな』と思って」ループシュートを選択。高く上がったボールは綺麗な弧を描いて、ゴールネットへ弾み込む。

「『ゴールは狙っていきたいな』と思っていたので獲れて良かったですし。みんなが集まってきてくれたので嬉しかったです」と笑顔を見せた小泉の華麗なループシュートで、静岡学園が1点のアドバンテージを得た。

 以降は大阪桐蔭のアタックに迫力が出てくる。17分には右サイドを再三仕掛けていたMF柳秀聖(2年)がクロスを上げ切り、3列目から飛び出したMF室勇志(3年)のヘディングは枠を捉えるも、ここは静岡学園のGK生嶋健太郎(3年)がファインセーブ。34分にも今度は左からサイドバックのDF朝山大輝(3年)がクロスを送り、ファーで柳が叩いたヘディングはわずかに枠の上へ。「しっかりチームでボールを奪う戦術と、奪ってからちゃんとボールを操ることを意識しながら挑ませました」と永野悦次郎監督も話したように、ちゃんとボールを操りながら、大阪桐蔭が相手ゴールに迫る。

 だが、前半アディショナルタイムの35+2分に生まれたゴラッソは、またも静岡学園。右サイドハーフでスタメン起用されたMF高橋隆大(2年)のクロスはいったんクリアされたものの、ボールの落下地点に入った玄は「相手のクリアが中途半端になって、落ちてくるのがわかったので、力まずにミートだけ意識して、利き足と逆の左足で当てようと」ダイレクトボレーを選択。ボールは完璧な軌道を辿って、文字通りゴールネットへ突き刺さる。

「2点目は玄のスーパーシュートで、ああいうところの技術をしっかり出せるということは本当に素晴らしいですね」と川口修監督も絶賛の強烈な一撃。シュート2本で2点を奪った静岡学園が小さくないアドバンテージを得て、ハーフタイムを迎えた。

 後半に入っても、大阪桐蔭は決してリズムの悪くない時間が続く。3分に左寄り、ゴールまで約25メートルの位置で得たFKのチャンス。スポットに立った小林は「FKなんか普段は蹴ったことがなかったんですけどね」と話したものの、無回転気味の素晴らしいキックを枠内へ。ここも生嶋がファインセーブで凌いだが、「蹴ってみたら、まあまあいい感じで行きました」というキャプテンがチームに勇気をもたらす。

 静岡学園も8分には、高橋が右サイドを1人で切り裂いてシュートまで持ち込むも、大阪桐蔭のGK薮中優希(3年)がファインセーブで回避すると、1分後には再び大阪桐蔭のチャンス、FW溝口響(3年)が左へ流し、朝山のクロスに自ら走り込んだ溝口のヘディングは、生嶋が辛うじて触ってクロスバーにヒット。「やっぱり1つ1つのやらなきゃいけないこと、守備のところでもチャレンジするところ、カバーリングするところ、そこは非常にルーズでした」とは川口監督。得点を奪いそうな雰囲気は大阪桐蔭も漂わせる。

 ただ、静岡学園は12分、この日はベンチスタートだったMF古川陽介(3年)とFW川谷凪(3年)をピッチに送り込み、16分にはボランチにMF菊池柊哉(3年)も投入すると、攻撃で取り戻した勢いが守備にも好影響を与え、ゲームの流れを掌握していく

 35+4分には大阪桐蔭のカウンター。単騎でグングン運んだ溝口がシュートを放とうとしたものの、素早い寄せに打ち切れず、こぼれ球を生嶋にキャッチされると、程なくして聞こえたタイムアップのホイッスル。ゲームのカギを握る時間帯を、ゴールという形できっちり押さえた静岡学園が2-0で勝利。準々決勝へと駒を進めることとなった。

 試合後。永野監督も開口一番「もったいなかったですね。十分決められるところを決められたら勝てたかなと」と話したように、大阪桐蔭にも勝機がなかったわけではない。「非常に上手い相手だったんですけど、自分たちのチーム全員サッカーというところをしっかりやっていければ、それほど差が生まれることはなくて、相手の攻撃にもしっかりカバーリングをやっていけば、問題ないとは言い切れないですけど、やれるかなと。負けているので何とも言えないですけど、内容も悪くはなかったと思います」とキャプテンの小林も語っている。

 静岡学園の中盤のキーマン、玄も「前半もそうだったんですけど、後半は相手の勢いに飲まれたというか、ウチのサッカーができなくて、ビルドアップのところでミスも多くて、そういう正確性の部分は改善したいと思います」と反省を口に。ゲームとしては拮抗した展開だった。

 それゆえに、静岡学園の勝負強さが際立つ。「こういう連戦で疲労との戦いなので、非常に課題のある試合ですけれども、勝ち上がったというところで、もう1試合できることはプラスに考えたいと思います」と川口監督。スタメンを入れ替えながら、きっちりと試合を2-0でまとめるあたりにも、公式戦無敗を続ける今年のチームが纏っている自信も窺える。

 準々決勝の相手は、プレミアリーグWESTでも上位に付け、今大会も優勝候補の流通経済大柏高(千葉)を3-0で破った大津高(熊本)に決まった。「相手はプレミアのチームでレベルも高いと思いますけど、自分たちは技術の高さでは絶対に負けていないと思うので、静学らしさとか、自分たちのスタイルをとことん出して、全力で勝ちたいなと思います」(玄)。相手にとって不足なし。静岡学園は自分たちのスタイルを貫き、真っ向勝負で難敵へとチャレンジする。

(取材・文 土屋雅史)
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